「セラフィーヌの庭」M・プロボ監督、新作「ヴィオレット」でボーボワールが見出した実在の女流作家描く
2015年12月20日 07:30

[映画.com ニュース]実在した女性画家を描き、2009年セザール賞で最多7部門を受賞した「セラフィーヌの庭」のマルタン・プロボ監督の新作「ヴィオレット ある作家の肖像」が公開。今作では、1940年代にボーボワールが見出した女流作家ヴィオレット・ルデュックの半生を描く。「セラフィーヌ」に続き、再び歴史に埋もれていた実在の人物を映像化した理由をプロボ監督が語った。
私生児として生まれ、不遇の人生を送ってきたヴィオレットはボーボワールを信奉し、書くことに人生を捧げる。過酷な生いたちと性体験を赤裸々に綴った処女作が、カミュ、サルトル、ジュネらに絶賛されるものの、世間には受け入れられず苦悩する姿、そして南仏に安息の地を見出すまでをエマニュエル・ドゥボス主演で描く。
「セラフィーヌの庭」を撮影前に執筆した小説の編集者の話から、ヴィオレットの存在を知り、今作が誕生した。「私がセラフィーヌの脚本を進めている間、彼女のことを知っている人には会いませんでしたが、唯一編集者が彼女を知っており、さらに、ヴィオレットという作家がセラフィーヌについて素晴らしい文章を書いていることを教えてくれたのです。もともとふたりは強いきずなで結ばれており、映画も同時期に生まれたといってもよいというめぐり合わせがありました。このふたりは姉妹のように近い存在だと思います」

ヴィオレットの存在を「彼女は20世紀で始めて女性として文学作品で自己表現をした人」と評する。「その後に、マルグリット・デュラスらが出てきますが、ヴィオレットの存在があったおかげで女性が文学で自己表現することが可能になったと思います。ヴィオレット自身も言っていますが、決して彼女はインテリ、知識人ではありません。自分の感覚で書いていると言っています。当時の社会のタブーを打ち破って、自分の存在を認めさせていくのです」
「創作は人を解放し、進歩させてくれるもの」と語るプロボ監督。セラフィーヌとの共通性をこう語る。「セラフィーヌもヴィオレットもその時代のタブーを破り、当時は認められなかったことをやって時代を生き、作品を残しましたが、それは本当に珍しいこと。創作は混沌のなかから少しずつ光が見え、作品に結実していくものだと思うのです。それは映画でも小説でも同じだと思います」
最後に、歴史に埋もれていた実在の人物を映像化することについて、「現在、芸術は商品化され、人生をかけてコミットするものだということが忘れられつつあると思います。生み出す者にとって、芸術表現はそれをなくしては生きていけないという必要に迫られて創作します。また、見る側からすれば、作品を通して学んだり、芸術家とコミュニケーションをはかれるという恒久性があるのです。作品を生み出す過程が、いかに困難なものであったか、また、そのように生きた芸術家がいたことをを今の時代だからこそ忘れてはならないのです」と語った。
(C)TS PRODUCTIONS - 2013
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