障害者の愛と性、家族の絆を描くインド映画「マルガリータで乾杯を!」監督&主演女優に聞く
2015年10月23日 07:00
[映画.com ニュース]10代の車いすのヒロインの成長をみずみずしい映像で綴ったインド映画「マルガリータで乾杯を!」が10月24日公開する。障害者の性や恋愛といった難しい題材も盛り込みつつ、前向きに人生を楽しむ少女と彼女を温かく見守り続ける母親を描き出す。ショナリ・ボース監督とカルキ・コーチリンが来日し、作品を語った。
生まれつき身体が不自由な少女ライラは、持ち前の明るさとチャレンジ精神で家族や友人たちに支えられながら大学に通い、そしてアメリカの大学へ編入のため母と一緒にニューヨークへと旅立つ。コーチリンが繊細な演技で主人公ライラを演じた。
脳性まひのため、ライラは言葉を上手く話すことができないが、コーチリンは豊かな表情の演技でライラの心情を表現する。「ハンディキャップを持つ人を描く映画は、ワイドショット(広角)で撮ることが多いと思うのですが、この映画は主人公のパーソナルな気持ちに触れるような作品なので、障害を撮るよりも接写を使うことで、観客が感情移入できるようにと考えました」(ボース監督)
インドで生まれ育ったフランス人のコーチリンは、インド映画界注目の若手女優のひとり。「私はインドで生まれ育ち、ヒンドゥーを話しますので、インドは一番落ち着く環境です。ムンバイで演劇を始めてそのまま映画の世界に入りました。私の中身はインド人だと思っています。デンゼル・ワシントンがアメリカで活躍しているように、私は白人ですがインドで活躍しています」(コーチリン)
ライラのモデルとなったボース監督のいとこと共に過ごす時間を持ち、ほかの仕事を一切受けずにおよそ6カ月間役作りに没頭した。「難しい役でした。障害を持つということと、感情的になることは分けられないことであって、車椅子に24時間乗っていたら、フラストレーションが溜りますし、動きも制限される。人からはじろじろ見られるし、気遣いも必要になってくる。だから、ライラはユーモアのセンスがあるのです。リハーサル期間中に車椅子で過ごして、体にハンデがある人がどういうことを感じているのかを知り、自然に出てきた感情や表現です」(コーチリン)
ライラのキャラクターはもちろん、娘を支える母親の姿など、女性の強さを感じる作品に仕上がった。「多くの作品の女性は、男性の主人公の添え物ような役が多いと思うのです。私は女性監督ですし、女性が主人公になった映画は少ないですからこのような作品になりました」(ボース監督)
ボース監督は米国で政治学を学び、UCLAに入学しなおし映画監督になった。インド映画界で女性監督としての立場を問うと「映画業界は男性社会だと思いますが、自分がこの業界でやってきて監督できたことはラッキーなことです。それは、自分が自分でオリジナルの脚本を書けたということ」と話す。そして、「脚本の質が高いものであれば、発言権は大きくなるし、役者もスタッフもみんなが言う事を聞いてくれます。そういう場合を除き、女性監督がヒット作を出したり、高く評価されるようなことは難しいです。ギャラも全く違うのです」と説明する。
かつてインド映画といえば、歌や踊りがメインのボリウッド映画を指したが、近年はドラマ性の高い作品が世界的に評価されている。「ボリウッドというと規模が大きい商業作品のイメージがあると思うのですが、最近はインディー系の映画も増えていますし、インドの地方で作られる映画にも良作があります。また、ここ3~4年は女性が主役の作品も多く出てきています。それは、インド全体で教育を受けた人が増えていること、世界の映画が入ってきているという理由から、観客がより多様な作品を求めていることです。商業映画とインディペンデント映画の境界線がかなり曖昧になってきていて、こういった様々な変化の中で活躍できるのはラッキーです」(コーチリン)
「マルガリータで乾杯を!」は10月24日からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。
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