英国炭鉱労働者のストと同性愛者たちの友情を描いた「パレードへようこそ」監督に聞く
2015年4月3日 06:00

[映画.com ニュース]英国インディペンデント映画賞作品賞など3冠に輝いた、イギリスの炭鉱労働者によるストライキと同性愛者たちとの友情を描いた映画「パレードへようこそ」が、4月4日に公開される。1984年に起こった実話を、カルチャー・クラブ、ザ・スミス、ブロンスキ・ビートなど懐かしのヒットナンバーに乗せ、涙と笑いを交えて映画化したマシュー・ウォーチャス監督が作品を語った。
炭鉱労働者のストライキが行われると知ったゲイの青年マークは、仲間たちと募金活動を始めるが、同性愛者であることを理由にその申し出は炭坑組合から無視されてしまう。唯一受け入れてくれたウェールズ奥地の炭坑町へ向かったマークらは、炭鉱労働者や町の人たちと深い友情で結ばれ、ストライキの資金集めのコンサートを企画する。ビル・ナイ、イメルダ・スタウトン、パディ・コンシダインら英国の名優が顔をそろえる。
84年のストライキ発生時は18歳で、ヨークシャー州の小さな集落で成長期を過ごしていたというウォーチャス監督。「欧州最大規模の石炭火力発電所に押されて、炭鉱労働者の存在価値が薄れてしまっていたんだ。カレッジ時代に、発電所の門の外に陣取ったストライキのピケ隊を見かけたことを覚えているよ。あの歴史的紛争は僕の少年時代に起きた陰鬱な大事件のひとつだった」と語り、当時の社会状況をこう振り返る。「核攻撃に備えたサイレン音のテストだとかIRAのテロだとか、エイズの流行だとか、なにかと大きな不安をあおられる時期だったよ。今の感覚だと、地下の劣悪な環境下で働く職を守るために闘う理由が理解できないかもしれないが、当時は他の選択肢がなかったんだ。あのストライキが経済的背景だけで起きたわけではなかったことを、今なら皆が理解している。あれはもっと広義のイデオロギー論争における重要な闘いでもあったんだ」

LGBTと炭坑労働者という、対極にあるような人々が連帯する物語だが、映画ではもちろん衝突も描かれる。「ともに政治的志向のある団体だけれど、心に迫ってくるのは彼らのヒューマニティだ。僕が編集作業中に理解したのは、両極にある人々が障害を乗り越えてユーモラスに関係を築いていくというのが古典的なロマンティックコメディと同じだということ。異なるのは、ふたりの個人ではなくふたつの団体あるいはコミュニティの関係を扱っていること、原動力がロマンティックな恋愛でなく慈悲の心であることだ。そのせいで多分、社会という概念がふと心に浮かんだのだと思う。社会と呼ばれるものはやはり存在すると思ったんだ」
撮影は実話の舞台となった町で行われた。「炭坑口は跡形もなくなりボタ山も消えていたが、古いローマ街道の視覚的インパクトが強烈で、どこかも分からないような場所に建てられたセットか、西部劇に出てくる町みたいだった。現場で起きた出来事に敬意を表すべきだという責任感をさらに強く感じたよ」と初めて町を訪れた際の印象を明かす。
そして、「『あのゲイの人たちのことは覚えているよ』と話しかけてきてくれた町の住民たちは、歴史の一部に参加できたことを誇りに思っていたんだ。住民全員が顔見知りの小さな町に行って、撮影のために1週間裏通りだけを使って欲しいと頼むのはそう簡単なことじゃない。でも、映画のストーリーを理解し、自分たちのコミュニティがどう描かれているか知るにつれて、彼らはどんどん関心を抱いてくれるようになり、撮影が終わるころには、寒い中一家総出で撮影見物を楽しんでくれていたんだ。僕らはすごく歓迎されていると感じられたし、撮影終了後には去るのが名残惜しいくらいになっていたよ」と住民の温かさに支えられた撮影を振り返った。
「パレードへようこそ」は4月4日からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
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