ドキュメンタリー「VHSテープを巻き戻せ!」監督が語る、ビデオ文化のロマンと歴史
2014年7月25日 15:50

[映画.com ニュース] 映画やドラマを家庭で鑑賞する文化や、個人でも可能な低予算の映像制作など、現在のメディア消費文化の礎を築いたVHS(ビデオテープ)。しかし現在、DVDの台頭でVHSは衰退の一途をたどっている。そんなVHSの秘密と歴史に迫ったドキュメンタリー映画「VHSテープを巻き戻せ!」のジョシュ・ジョンソン監督に話を聞いた。
1982年生まれのジョンソン監督は、幼少期に家庭にビデオデッキがあった“ビデオ世代”。「たった一つの電子機器だけど、ビデオに影響を受けた世代とその後の世代では、価値観や思想が大きく異なるんだ」と断言する。「VHSの登場によって、コンテンツを所有するという概念が生まれた。メジャーな映画に比べて見る観客は限られるけれど、VHSが最初に個人でコンテンツを所有できたメディア。だから人はVHSに郷愁を感じるのだと思う」と分析した。
ロイド・カウフマン、アトム・エゴヤン、ジェイソン・アイズナーら世界的フィルムメーカーへのインタビューのほか、VHS開発国である日本でも押井守監督らに取材を敢行しており、「映画館で映画を鑑賞することが多かった当時、日本が独自の“Vシネマ”というマーケットを成立させていたことはとても興味深かったんだ」。また、「子どもの頃は日本製だとは知らずに日本のアニメをたくさん見ていたよ。溝口健二監督や黒澤明監督はもちろん、さまざまな日本のカルトやアングラ映画にも影響を受けた」と、改めてVHSがもたらした映画文化への貢献を印象づけた。
(C)Imperial Poly Farm Productions昨今では、劇場やレンタルビデオのほか、インターネットを活用したダウンロードやストリーミングによる視聴もシェアを伸ばしており、映画鑑賞のスタイルはますます多様化していくことが予想される。そこから新たなテクノロジーやメディアの誕生も期待できるが、コンテンツ自体の“劣化”を招くという懸念もある。「ネットフリックスの調査によると、観客は映画をかいつまんで見ることが多く、しばらく見て面白くなければそこで鑑賞をやめてしまうらしい。観客と映画の関係性が変わってきているんだ。友人のフィルムメーカーは、プロデューサーから『観客に飽きられないように、アクションやお色気、全てのベストシーンを冒頭に入れろ』と命じられ激怒していたよ」と極端な意見もあり、「観客の見たい作品への欲求や努力は失われてきている。努力をした上で見ると感慨深いものだし、きちっと最後まで見ることも映画との約束だと思う」と持論を述べた。
しかし、時代の流れと発展には逆らえないことも事実。VHSはDVDなどのメディアに比べ劣化も激しく、消滅していくことは避けられない。「複雑な心境だね。物理メディアの存在感や大切さを伝えたかったけれど、時代の移り変わりは必然。いずれVHSがなくなることは確定している。だからこそ、しっかりとビデオコンテンツも保存していくことが大事だと思う」と共存の道を探っていく。
VHSには劇場鑑賞に耐えられないB級作品も数多くあるが、「評価されている作品ばかりを見ていたら、なぜそれが面白いのかを考える観客の能力はどんどん失われていくと思う。だからこそ幅広いジャンルが必要なんだ。かの有名なスタンリー・キューブリック監督は、B級を含め近所の映画館で上映する全ての映画を見ていたらしいよ。『面白い映画よりもつまらない映画からの方が学びがあるから』ってね」。
「VHSテープを巻き戻せ!」は7月26日より公開。
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