台湾の盲目のピアニスト ホアン・ユィシアン「演技とピアノ、表現をするという点では同じ」
2014年2月7日 14:44
[映画.com ニュース] ウォン・カーウァイ製作総指揮、視覚障害を持つ台湾のピアニスト、ホアン・ユィシアンが自分自身を演じた青春映画「光にふれる」(チャン・ロンジー監督)が、公開される。このほど来日したホアンに話を聞いた。
これまで演技経験がなかったそうだが、劇中の主人公ユィシアンの感情が手に取るようにわかる素晴らしい演技を見せている。「演技とピアノ、異なるもののように見えますが、表現をするという点では同じことだと思います。その二つが合わさったときに、より大きな効果か出るように感じました。とても不思議な取り合わせだと思いました」と俳優としての経験を述懐する。
演技でとりわけ難しかったのが、意外なことにピアノを弾くシーンだったという。「ピアノを弾くときは演奏に没頭できますが、映画の中で役柄としてピアノを弾くシーンでは、ピアノを弾くことと、人物の感情を表す表情を作らなくてはなりませんでした。そこが難しかったのです」。
本番一発勝負の演奏会に比べ、映画は撮り直しもできるが、気を抜くことはできなかった。「コンサートでは、誰しも多少のミスがあるものです。でもそれが完全に悪いこととはいえないのです。それが面白い結果になることもあるので、それは美しい間違いといえます。完全無欠のものは面白みに欠けますしね。演技をしながらピアノを弾くのはもっと難しいのです。僕にとって最も厳しいことが要求されました」。
物語はホアン自身の経験が元になっており、その頃の挫折が人生にとって一番忘れがたい出来事になっているそうだ。「実家を離れて、宿舎に一人で住むという環境になじめず、また同級生ともうまく打ち解けることができず、孤独を感じていました。そんな時に家族や友人が励ましてくれ、それから自分の考えを変えるようになりました。今まで内向的で受身でしたが、自分で前に出て積極的に他の人に関わっていこうと思うようになったのです。自分自身が変わっていったということが、多くの人と仲良くなれる結果として現れてきました」。
劇中ではホアンの笑顔がとても印象的だが、この日も終始にこやかに語ってくれた。「僕は普段も笑顔でいます。でも実は、この笑顔が監督を困らせたんです(笑)。映画のユイシャンがつらい場面でも、僕の顔は笑顔に見えるらしいのです。でも僕は普段の生活で、笑顔でいるということは人と付き合うときに一番いい方法だと思っています」。
「光にふれる」は2月8日から全国で公開。
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