トルコのゴミ問題を追ったドキュメンタリー ファティ・アキン監督に聞く
2013年8月16日 15:00
[映画.com ニュース] 「ソウル・キッチン」のファティ・アキン監督がトルコの小さな村の“ゴミ騒動”を追ったドキュメンタリー「トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動」が、8月17日公開する。
トルコ移民として現在ドイツで生活する、アキン監督の祖父母の故郷であるトルコ北東部の黒海沿岸に位置するトラブゾン地域の村チャンブルヌが舞台。緑豊かな美しい村に、ゴミ処理場建設計画が持ち上がる。ゴミを集めた地区からは悪臭が漂い、臭気対策に香水をまき、ビニールシートで土壌汚染を防ごうとするなど、政府の計画はずさんなものだった。環境汚染のために普通の生活を営むことすら難しくなっていく村人たちの姿を通し、中央の論理・利便が優先され、地方がそのしわ寄せを受ける社会構図をあぶり出す。アキン監督が村人とともに建設阻止運動に立ち上がり、5年をかけて撮影した。
昨年のカンヌ映画祭特別招待作品として出品された本作、トルコの恥部を世界にさらけ出したとも捉えられかねないが、製作にあたって反対を受けることはなかったという。「妨害のようなことはありませんでした。ただ撮影の許可を申請して、その許可を下ろすタイミングをギリギリにされた事はありました。その間に隠さなければいけないものを隠そうとしていたんじゃないかと思います。またトルコでは、とても良い評価をいただけました。見てくださった方は、すごく感動してくれて。あとは起きている事に対して怒って劇場を出る方が多かったですね」
「村で過ごす全ての瞬間が、一番楽しい瞬間でした」という、足掛け5年をかけたトラブゾンでの撮影で、現在監督が住むドイツ第二の都市ハンブルグとは全く異なった生活を経験した。「本当に自然体で暮らしていて、朝日が昇ると起きて夕日が沈むと寝て、魚も野菜も、季節のものを食べて、自然と共に1人1人が暮らしているように感じるんです。グローバリゼーションや産業化みたいなものに巻き込まれていない彼らの暮らしぶりを、撮影を通してすごく楽しみました」
6月に起きた反政府デモが世界的に注目を集めたが、今作のゴミ処理場建設反対運動と共通する部分が多いと語る。デモは「3つ目のボスポラス海峡を作る」「高速道路建築」「日本の東電を招致し原発建設」「世界で最大規模の空港建設」というインフラ整備を掲げた首相に対して民衆の抗議が始まった。「トラブゾンの村でも全く同じことが起きたわけです。ゴミをどこで処理するかという問題は以前からあり、それをトラブゾンに処理施設を作ってということで解決しようとしたわけです。村を犠牲にするという発想ですが、問題の解決にはつながりません。解決したいのであれば、そもそもの一つの問題を隠すようにしてほかの問題を生むようなことは起こしてはいけないのです」と持論を述べる。
今なおトラブゾンにゴミは投棄され続けているそうで、今後の決着は監督にもわからないという。「この映画をきっかけに改めて、選挙ムーブメントを含め何かにつながってほしい。人々の会話の中で取り上げられ、話すきっかけになればいいと思っています」と期待を語った。
「トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動」は渋谷シアター・イメージフォーラムで8月17日公開。
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