3・11の1年後を紡いだ「JAPAN IN A DAY」 2人の監督が語る“とある1日”
2012年11月2日 19:00
[映画.com ニュース] 世界中から集められた2012年3月11日の映像をつないで作られたソーシャルネットワーク・ムービー「JAPAN IN A DAY ジャパン イン ア デイ」が、11月3日から公開となる。第25回東京国際映画祭の特別オープニング作品として上映された際に来日したフィリップ・マーティン監督、日本から参加の成田岳監督に話を聞いた。
東日本大震災から1年後の2012年3月11日の映像をつのり、日本を中心とした世界12カ国から寄せられた約8000件、300時間におよぶ映像を編集。結婚や出産、子どもたちが無邪気に過ごすありふれた1日を通し、3・11に思いを馳せる人々の姿を紡いだ。
リドリー・スコットが手がけた、革新的ソーシャルネットワーク・ムービー「LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語」に感銘を受けたフジテレビの早川敬之プロデューサーが、スコットに企画を提案し同作が実現。成田監督は、「僕にとっては東京、国際映画祭という大きな舞台でお披露目できることは感慨深かった。それに、映像を投稿してくれた方々と一緒にグリーンカーペットを歩けたのはとても良かった」。マーティン監督も、「スクリーンでは何時間も見ていたけれど、初めて彼らと会えてうれしかった。編集中にTIFFでの上映が決まり、締め切りに向けて大変なことにはなったけど、なんと素晴らしいことだと思ったよ」とほほ笑んだ。
新たなフォーマットでの映画作りは、2人の映像作家にどんな影響を与えたのだろう。成田監督は、「『LIFE IN A DAY』をいち観客として見た時、いったいどうやって作っているんだろうと思った。それを自分がやれるとなってすごく不安にもなったけど、ワクワク感もあった」。マーティン監督も、「刺激的な挑戦で素晴らしい体験だった。映画作りの新しい可能性を感じたし、ひとりでやっていると視点が狭まっていくもの。ストーリーテリングの方法は人によって違う。大人なら目を向けなかったかもしれないものに子どもは夢中になったりするし、そういうことで世界が広がっていく」と新たな発見もあったようだ。
しかしながら、撮影者もジャンルも異なる膨大な量の映像を編集して1本の映画にまとめあげることは、想像を超えた大変な作業だったという。マーティン監督は、「映画監督として奇妙な経験だったよ。映画監督って通常は独特な視点を買われて起用されることが多いけれど、この作品は観客とユニークな関係をもった、観客によって作られた映画とも言える。他の人がある料理のためにそろえた材料で、違う料理を作るようなものだよ」と独特な言い回しで語る。そして、「せっかくたくさんの人々が寄せてくれたたくさんの視点があるのだから、幸せなことや悲しいこと、さまざまな色やトーンをミックスした。彼らの声をうまく取り入れながら自分の視点も大事にしつつ、観客を旅に連れ出すような気持ちだったんだ」。成田監督は、「どの映像にもカメラと被写体の間に親密さがある。どんなドキュメンタリー監督でもあそこまで無防備な親密さは出せないもの。映像の行間や余白に自分を投影できるから、見ている人も個人的な体験に感じられると思う」と利点を分析。また、「時間をかけてゆっくり煮詰めていった。素晴らしい素材がたくさんあって、映画全体のために素材を落としていかないといけないというのが一番つらかった」と思い入れもひとしおだった。
3月11日と聞くと、緊迫した重い1日を想像する人も多いかもしれない。しかし本作で描かれているのは、あくまで日本の“とある1日”だった。「3月11日とは震災の日であり意図的に選んだわけだけど、あくまでタイトルは『JAPAN IN A DAY』。悲しみに包まれているだけの日だったのかというと、日々暮らしている中で起きていることはそれだけじゃない。1年後の1日として映画にきちんと残したいという思いはあったけれど、そういった日常との対比で、悲しみが一面的でないものになると思った」(成田監督)。「過去にさかのぼるような物語でなく、今何が起こっているかを描きたかった。ランチに何を食べるか、どこの公園で遊ぶか、結婚式にどんな服を着るか、どう人生の問題に向き合うか。こういったありふれたことが、その日人々の心にあったもの。毎日の経験を大切な人生の一瞬として、何を大事に思い、伝えたいと思ったかをシンプルに反映させたかったんだ」(マーティン監督)。
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