長原成樹、自らを描く「犬の首輪とコロッケと」に込めた熱き思い
2012年1月26日 18:10
[映画.com ニュース] お笑い芸人・役者として活躍する長原成樹の初監督作「犬の首輪とコロッケと」が、1月28日に公開される。大阪・生野区で不良少年として過ごした荒々しい日々を、親と子の固い絆(きずな)や男同志の友情、不器用な恋愛模様とともに描く、自身の自伝小説を元にした物語だ。原作の出版から約4 年を経て公開を迎える今作について、長原が思いを語った。
「本が出た数カ月後に、所属事務所の社長から電話があったんですよ。『読んだ、おもろい、映画にしよ』って」と映画化のきっかけを明かす長原。当初は、作品の要となる父親役として出演することも検討していたという。しかし悩んだ末、自らは監督に徹することを決意。後輩芸人であり、役者としてもキャリアのある山口智充に父親役を託すことにした。
「お父ちゃん役は誰かと考えた時、すぐに浮かんだんです。僕の父は昭和9、10年ごろに韓国の済州島から日本に来ていて、日本語が下手であまり口数が多くないんですよ。だから背中でも“お父ちゃん”を表現できる人をと考えて。体格も似ているし、やっぱりぐっさん(山口)かなと思いました」。電話で直接依頼を受けた山口は、即快諾。劇中では見事に、寡黙で懐の大きな父親の姿を演じている。
長原が現場で最も厳しく指導したというのが、主人公セイキを演じた鎌苅健太だ。「僕のことめちゃくちゃ恐かったと思いますよ。何度も怒鳴っていましたから。結局最後まで1回もほめませんでした」。長原自身を演じるというプレッシャーと戦い続けた鎌苅は、怒鳴られ続けながらも、根を上げることなく必死で最後までついて来たという。その姿には、とにかく感謝のひと言だと長原は目を細め振り返る。
本作には、人間が抱く様々な愛の形が詰まっている。その中でとりわけ強く胸に残るのが、父と子の絆だ。少年院から出所してくるセイキを、無言で迎える父のたたずまいを映すシーンは、底知れぬ愛の大きさを静かに色濃く描き出す。「僕、このシーンが1番好きなんです。実際あの時、お父ちゃんの顔を見た瞬間、心の底から『ごめん。もう2度と悪いことはしない』と誓ったんですよ」。そして最後に、「セイキはいろんな壁にぶつかって、へこむこともある。でも最終的には前を向いている。何があっても前向きなんです。そういう姿を伝えることができたらいいなと思っています」と力強く語った。
「犬の首輪とコロッケと」は1月28日から公開。