寺本幸代監督「ドラえもん」で垣間見させる“繊細”と“剛毅”
2011年3月5日 14:38

[映画.com ニュース] 20年以上前に刊行された原作の漫画の装丁は、どこか不吉な暗い緑色。そして、物語の中に登場するおびただしい数のロボットによる鉄人兵団の存在には、ドキドキワクワクを越えて、子ども心に戦慄を覚えた。「ドラえもん」映画シリーズの中でも異色を放ち、シリーズきっての名作と称される「のび太と鉄人兵団」が、「新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち」としてスクリーンによみがえった。メガホンをとったのは「のび太の新魔界大冒険」に続き、本作が2作目の劇場監督作となる寺本幸代。小学生のころにオリジナル版を見たという寺本監督が込めた思いに迫った。
ファンの人気の高いオリジナル版を、新たに生まれ変わらせるということに「確かにプレッシャーは感じました」と明かす寺本監督。それでも、「オリジナル版が素晴らしいからこそ、それと同じものを作っては失礼。新しい部分を出さなくてはいけないと考えました。本当にいろんな要素の詰まった作品ですが、その中で特に、しずかとリルル、のび太とピッポの気持ちの触れ合いの部分を突っ込んで描けたらと思いました」とこだわりを明かす。
「ドラえもん」映画史上初の女性監督――そんな枕詞でもって紹介されることが多い寺本監督。初メガホンとなった「のび太の新魔界大冒険」では、随所に見られる描写が「女性ならではの感性」と称賛を浴びた。だが、本人はそんな評価に困惑気味。「『女性らしい』という声をいただいたんですが、会社ではいつも『男らしい』と言われていまして……。そういう評価に戸惑いましたね。ただ、私はやはり、先ほど挙げたリルルとしずかの関係に代表されるような、キャラクターの感情の描写が好きなんです。心情や人と人の関係を丁寧に描くという部分で、『女性らしい』という評価がいただけたのかなと思っています」。
だが、そればかりではない。アクションシーンの描写における迫力は、女性の手によるものとは思えない激しさを持っている。のび太が拾ったロボット“ザンダクロス”により、巨大なビルが一瞬にして廃墟と化すシーンが象徴的だ。「壊すなら派手にいきたいと思いまして(笑)。美術監督さんたちと一緒に都内をロケハンしたんですが、あのシーンで崩壊するビルは、赤坂見附にある赤坂プリンスホテルをモデルにしています。3月に閉館される前に勝手に壊してしまい怒られてしまいそうですが……」
小学生のころから「ドラえもん」を読み、劇場版も映画館で見ていたという。声優陣やデザインが一新されたときからテレビシリーズの製作に携わってきたが、現在の“新しい”ドラえもんを、こんな言葉で表現する。「私の中で何より大切にしていることは、ドラえもんを単なるのび太の世話係ではなく、兄弟として描くということ。ドラえもんは、工場でつくられたときにネジが1本抜けているんですね。きっと、その時点でロボットからある意味、人間に近い存在になったんだと思います。だから、ケンカしたり一緒に遊んだり、のび太と一緒に生活していく存在であればいいなと思ってます」
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