高所恐怖症の監督が撮り上げた「フローズン」

2010年8月6日 17:38


撮影中のグリーン監督(右)
撮影中のグリーン監督(右)

[映画.com ニュース] 「もし、スキー場のリフトに取り残されてしまったら」という恐怖をリアルに映像化したスリラー「フローズン」が8月7日から公開となる。日暮れ前に最後の滑りを楽しもうと3人の若者たちはリフトに乗り込むが、山頂に向かう途中で突然リフトが停止してしまう。大声で叫んでも助けは来ない。週末営業のみのスキー場のため、次にリフトが動くのは1週間後。そして気温はマイナス20度という最悪の状況のなか、地上15メートルの空中に取り残された3人の決死のサバイバルが描かれる。新鋭アダム・グリーン監督は、テレビの天気予報の背景として流れていた誰もいないスキー場の映像を見て、ストーリーを思いついたそうだ。

「僕が育ったボストンの近くのスキー場は現代のリゾートのように設備が整っていなかった。安っぽくて、動いているリフトも少なくて、平日は商売にならないから、週末だけ営業しているようなところが多かったんだ。朝7時にその天気予報を眺めているとき、急にリフトが止まって怖い思いをした子ども時代の悪夢が脳裏をかすめてね。そこで『これは映画になる』と思いついたわけさ。すぐに自分の会社のスタッフに話したところ、何も聞かずに賛成してくれた。『チェアリフトに3人だけ。そんなに難しくないだろう』ってね」

ところが、撮影は想像以上に難儀した。リアリズムを追求するため、CGやブルーバックの合成撮影を拒否し、すべて本物のロケーションで撮ることにこだわったからだ。

「特に大変だったのは動いているリフトのシーン。撮影前は俳優たちと同じリフトにカメラを乗せて撮ればいいと思っていたが、重量制限のため、それが出来なくなった。だから、僕らはリフトのケーブルに直接、急造のカゴのようなものをぶら下げて、そこに入って撮ることになったのさ(笑)。僕らがいたのは地上15メートルのところで、突風は吹くし、真夜中だし、おまけに3000メートル級の山の上だ。そのとき『僕は高所恐怖症だからこの脚本を書いたのに、何だってこんなところにいるんだ!?』って思ったよ(笑)。ありがたいことに撮影中、誰もケガはしなかったけれど、キャストとスタッフには何度も危険な目に遭わせてしまったね」

06年、世界各地の映画祭で話題になったホラー「HATCHET/ハチェット」で長編劇映画デビューを果たし、本作が長編2作目となるグリーン監督。映画監督を志すきっかけになったのはスピルバーグの「E.T.」だったという。

「すべては『E.T.』から始まったんだ。人生であれほど泣いたことはないよ。まだ8歳だったけれど、僕は映画が自分の感情を完全に支配できることに気づいたんだ。もちろん、映画の中で起こっていることは現実ではないということも分かっていた。おそらく、瞬間的に映画というものに魅せられてしまったんだろうね。だから、今こうやって映画を作るチャンスに恵まれ、ささやかながらも成功し、この業界でキャリアを積める自分がどれほど幸運か、感謝しない日はないよ。これは大変なビジネスだ。登るより落ちることのほうが多い。それに作品が正当に評価されて作られ、支援されることはほとんどない。忘れ去られ、チャンスも与えられないことが多いんだ。だけど僕らがここにいるのは、ほかに行くところがないからなんだ」

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