3000足の靴を所有したフィリピン女帝の半生。「イメルダ」監督に聞く
2009年9月11日 12:00
[映画.com ニュース] 1965年からのおよそ20年間、フィリピン大統領夫人として政界にも影響を与えたイメルダ・マルコスに密着したドキュメンタリー「イメルダ」(9月12日公開)。内気な少女時代から絶対的な権力を掴むまでの道のり、演説中の暗殺未遂事件など、これまで明らかにされていなかった女帝の半生が本人によって語られる本作の監督、ラモーナ・ディアスに話を聞いた。
監督は、フィリピン第11代大統領コラソン・アキノを通じて女性の役割やアイデンティティーを模索したデビュー作「Spirits Rising」(96)の撮影中に、イメルダ夫人に出会った。「10分でもいいからインタビューできればと思っていたら、イメルダは4時間ずっと1人で喋り通しだったの。あなたの映画を作りたいと言ったら、二つ返事でイエスと言ってくれた。好き嫌いは分かれるけど、彼女がとても興味深い人物だということは間違いなかったの」
3000足の靴を所有したと言われるイメルダは、権力を乱用し国家財産を私物化した罪でいまだ150件を超える裁判にかけられている。「彼女の最大の失敗は、彼女を止めてくれる取り巻きを周りに置かなかったことだと思う。だから暴走したの。彼女は芸術家に対する援助など非常にいいアイデアも持っていたけれど、すぐ違うことに関心を奪われて何事もやり遂げる前に投げ出してしまう。だけど彼女がフィリピンという国を世界中に知らしめたことも事実よ。彼女をただ責めることは簡単だけど、彼女は国や民衆によって創り出された存在でもあるの。歴史というものは新聞の見出しよりも複雑なものよね」
イメルダは完成した映画を見るとフィリピンでの上映中止を訴えたが、裁判所によりその訴えは却下されたそう。「アメリカで上映されたときにイメルダに対する論調が厳しかったから、彼女は客観的になって自分の姿を見たのだと思う。フィリピンではイメルダは歴史から抹消されて忘れ去られていたけど、映画が上映されると大ヒットした。今では映画スターのようにチヤホヤされているわ(笑)。彼女はいつか自分自身で自分の映画を作ると言っていたけれど、それがいつになるかは謎ね」