原爆の過酷な傷跡を日系3世監督が描く「ヒロシマ ナガサキ」
2007年6月27日 12:00
[映画.com ニュース] 91年にアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した、日系3世のスティーブン・オカザキ監督が、構想25年を経て完成、広島・長崎の原爆の真実を描くドキュメンタリー「ヒロシマ ナガサキ」(7月28日公開)を引っ提げて来日。6月25日、東京・有楽町の日本外国特派員協会にて記者会見が行われた。
「ヒロシマ ナガサキ」は、14人の被爆した日本人の証言と、広島・長崎への爆撃に実際関与した4人のアメリカ人の証言を軸に構成され、日米双方の視点から原爆がもたらした過酷な実態をとらえた作品。映画では、長年政府から補償金の援助を受けることができない被爆者たちが、いまだに多くの社会的偏見を被っているという知られざる事実に触れている。その問題についてオカザキ監督は次のようなエピソードを披露した。「長崎の爆心地付近の住民で唯一生き残った当時8歳の少女の存在を知り、彼女を取材しようと連絡を取ったが、本人から『家族は私が被爆者だという事実を知らない。もし外に知られたら家族の就職や結婚の妨げになる。もう連絡しないで』と手紙で返答が来た。現在被爆者が受けている援助についても、彼らが長年政府と闘った上でようやく得たもの。被爆者が高齢化し、亡くなってきている今も闘いは続いている」
現在、日本の全人口の75%が原爆が投下された1945年以降に生まれている。映画の冒頭では、街頭インタビューで“8月6日は何の日か?”という質問に答えられない若者たちが映し出されており、監督は「10人に聞いて全員答えられなかったことに驚いた。これも何らかのメッセージだと感じる」と話し、日本の観客に向けて「これまでも被爆者の告白や原爆を扱った物語はあったが、原爆の衝撃的な力を包括的に描く作品は少ないので、この作品が日本で上映されるのはとても有意義だと感じる」とメッセージを送った。
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