劇場公開日 2023年12月22日

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「なかなかのプロットに唸らされる」ハンガー・ゲーム0 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5なかなかのプロットに唸らされる

2023年12月23日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

本作は、ヒットシリーズ「ハンガー・ゲーム」の前日譚。シリーズ過去4作は全て未鑑賞なのですが、今さら鑑賞している時間もないので、レビューサイトで本作のあらすじだけ読んで公開初日に突撃してきました。

ストーリーは、12地区から各2名の代表を選んで殺し合わせる「ハンガー・ゲーム」が催されるキャピタルで、アカデミーの主席となって貧困からの脱出をめざすコリオレーナスは、第12地区代表で歌しか取り柄のない少女ルーシーの教育係に任命され、圧倒的不利な状況の中、彼女を勝利に導くために策を巡らせるが、彼自身の心にも少しずつ変化が現れてくるというもの。

シリーズ前日譚ということで、予備知識なしでもいけるかと思いましたが少々甘かったです。本作は、ハンガー・ゲームの第10回大会が舞台となっており、世界観が完成された中で物語が展開します。そのため、そもそもハンガー・ゲームの発端や開催意図がよくわからず、キャピタルと12地区との関係や、アカデミーの役割、コリオレーナスの立ち位置や人物相関などを把握するのにもやや時間がかかりました。

それでも、地区代表がキャピタルに集められる頃には、作品背景がなんとなく理解でき、徐々に作品世界に浸ることができました。そしていよいよゲームスタートとなり、やるかやられるかの殺し合いに緊張感が走ります。さながら自分も闘技場に放り込まれたような恐怖や興奮を覚えると同時に、これをショーとして楽しむキャピタル市民に人間の醜さを感じます。

そんな中、コリオレーナスの策が功を奏し、さまざまなご都合主義的偶然も作用して、ルーシーが生き残ります。ここでやっと緊張がほぐれ、二人の間に芽生えた絆は恋へと発展してハッピーエンド…かと思ったらまさかのチャプター3!え?まだ続くの? 本作は3章立てになっているのですが、ここからラストにかけて作品の印象がガラリと変わり、まんまとしてやられた感じのブロットに唸らされます。なるほど、いちばん描きたかったのはここでしたか!

ただ、ここでコリオレーナスがどんどん変容していくのですが、ちょっと説得力に欠ける印象です。親友のセジャナスや共に戦ったルーシーとの確執が、なんだか唐突に感じます。過去作を鑑賞していたらまた違った印象だったかもしれませんし、自分の理解力が足りなかっただけかもしれませんが、いずれにせよこの第3章が本作の肝であるならば、もう少し丁寧に描いてほしかったです。そこがとにかく残念で、第2章までのフリを十分に生かしきれなくて、もったいなく感じます。

主演はトム・ブライスで、コリオレーナスの変容を好演しています。共演のレイチェル・ゼグラーは、その歌声とキュートな魅力で存在感を発揮しています。脇を固めるのは、ピーター・ディンクレイジ、ハンター・シェイファー、ジョシュ・アンドレス・リベラ、ビオラ・デイビスら。

おじゃる