ぼくは君たちを憎まないことにしたのレビュー・感想・評価
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悲しい事件と「物語」を求める人たち
テロや、日本だと自然災害などが起きた時に、こうした「物語」を人々は求めてしまいます。
「テロには屈しない」「日常を過ごすことでテロリストに勝つ」という態度は、感動的な物語であり、おそらくあの投稿によって救われた人も一定数いると思うんです。
でも、犠牲者や被害者、その周囲の人には日常が続いていくし、マスメディアや大衆が求めるような「物語」通りにはいかない。
悲しい酒を飲んで当たり散らしてしまうのが人間だと思います。
フランスという国の社会が抱える問題、移民や多文化共生、宗教的な対立、それらの背後にある政治や経済にまつわるあれこれを映画で描くのは難しい。
この映画はあくまで犠牲者と家族の物語としての観ないと、社会問題に関心のある人からすると不満の残る作品になってしまうでしょう。
ただ悲しい事件を報道に出てくる犠牲者の数字や、テレビ番組の「物語」としてとらえている人には、一人一人の「現実」が重くのしかかってくると思います。
フィクションを通して、現実をきちんと向き合うきっかけにしたいですね。
つまり、憎んでいるんでしょ。
なぜ?
どうして、そう思う事にしたか?
その理由が曖昧かつ不明確。
このテロがなぜ起きたか?を先ずは説明するところから始めないとね。
そして、2025年の現在に於いてもそれは続いている。個人的な憎しみで済む話ではない。
勇気を出して、パリ19区に7日程いたが、実に平和な街だった。でも、シリア、イラクでは未だに空爆は続行しているようだ。
「憎まない」と、言いながら空爆された日には。
パリやニューヨークが平和でありますように。
なぜテロが起きたか?を知ってもらいたいものだ。だから、あえて共感をする。
「アルジェの戦い」を見るべきだね。
タイトルなし(ネタバレ)
鏡・小引き出し・本棚や室内を動く影などが美しい。
妻の帰りを待ち、スペースを開けてベッドの片側でひとり眠る。21〜22分あたり、セリフも演技も抑制されていて良い。
「犯人を憎まない」との理想には共感できるが、現実での彼は悲しみに突き動かされて心も態度も定まらない。
最初から最後まで(一番悲しんでいるのは妻を失ったぼく)と疑わず、姉妹を・娘を・友人を亡くした周囲の人々から掛けられる思いやりを無碍にする幼さにはちょっとげんなり。
「息子もまた君たちを憎まない」にも引っかかった。それはメルヴィルが決める。(原書ではどう表現されているのだろう?)
最後のシーン、コテージ前の小屋が素敵。ピンクの花が絡んでいる。コテージ内のドアも可愛い(幅が狭く、節だらけの材で作ってある)
ラスト、手の内にある愛と奪われた愛を感じさせる演技で素敵。
憎まないけれど
このタイトルって、事件が起こってから現実を受け入れる前に決めた自分への戒めの言葉だったんですね。
確かに、なにかトラブルがあった直後って、意外と人間その事を受け入れられずに冷静だったりするんですよね。
その時に、自分の為だけでなく、子供のためにも憎まないようにしなければならない。と、その後に悲しさが波のように溢れ込んでくる前に決めた事はとても素晴らしい。
けど、やはり、少し時間が経ってくると、悲しみの大波の辛さに悶え苦しみます。
だから、この物語はハッピーエンドでもなく、バッドエンドでもなく、その後に悲しみが襲ってきて、それに耐えながら生きていく…という、なんともやるせない気持ちで終わるしかないのですね…。
そして、前に自分が決めた戒めを守り通す主人公は、やはり強い人間なのだろう。けど、やはり波に負けてしまうシーンも人間ぽくて好きだ。
この映画、考えてみたら幸せに終わることなんて、そうそう無い事に最後は気付かされました。
いい作品だった、と、個人的には思いますネ。
投稿をしてもしなくても、行き違いはある
趣旨はよくわかる。本作も実話に基づくということだけれども、ペシャワール会の伊藤和也氏や中村哲氏が殺害されたときの会の見解やそれぞれのご親族の思いにも通じると思った。
本作の展開では、当初は妻を溺愛し、なかなか立ち直れないようだったけれど、投稿がなければ、マスコミの注目からの保育園の母親たちや多くの支援者からの援助は得られなかっただろう。投稿をしなかったとしても、妻の親族との行き違いはありがちだろう。
子役が、自分で動き回り、主人公から突き放されたときの反応や好き嫌いの言葉を率直に発する演技を自然に行っているのが驚きであった。
ぼくは君を憎まないけどやっぱりグーパンチしたい
原作は未読のため、あくまで映画からのインプレのみです。
事前情報はパンフと公式程度での鑑賞。事件後に紆余曲折があってタイトルの境地に至るのかと想像していたら、葬儀も終わらぬうちにSNSにその心境を表明していた。でもって、ではその賛否双方の反響によって色々な騒動にまきこまれるのかと思ったらそれもなし。
主人公はライターのようで、おそらく奥さんの稼ぎが収入でおおきなウェイトを占めていたっぽいのだが、とくに妻の他界後も仕事をすることもなく息子と遊び、保育園に送り迎えし、でもママ友の食事のサポートの好意は足蹴(そのわりにまともにメシを作ってなかった気がする)にして、あとは奥さん恋しいでメソメソ酒浸って、妻の服をクンクン(犬かよ)。葬儀の段取りは家族まかせ(は、しょうがない)としても、墓地はモンマルトルがいいよお(値段高そう)とダダをこねる。
いくらテロ被害者とはいえ、身内にこんなのいたらどっかでグーパンチをだしそうです。
リアリティ感じたのは、妻がテロ現場のライブハウスまで乗っていったシトロエンを見つけるため、夜間にリモコンキーでアンサーバックを探すとこ。見つかったクルマは違反キップべったり、ってのはあるある感があった。(ああいうのって情況説明すると違反金免除されてたりするのかなあと思ってみてた)
息子(最初、娘かと思ってた)の子役は可愛くあの年齢でちゃんと演技できていたので子役に星1つと、序盤の、テロの発生を知ったあと、ライブにでかけている妻との連絡がつかない不安な情況の緊迫感はよかったのでトータル星2つ。
そう思っていかないと生きていけない、タイトルはきっとそんな思いなんだろう
最愛の人をバカども(テロリスト)に奪われたのに何故そんな仏のような心で赦すことができるのか?タイトルを見て最初はそう思ってました。
実際観てみたらやはりそんな投稿は主人公のただの綺麗事であったかのように思える。
内心は怒りと悲しみに震え葛藤する主人公の痛ましいシーンが続きます。
何度も何度も妻を想っては泣き、自殺をはかったり、まだ幼く言うことを聞かない子どもにも腹を立てる場面も。現実逃避して、棺桶やら何やらの決め事もほぼ義姉任せで義妹に怒られるシーンも。
こいつの教育は大丈夫なのか?と思ったところは国の価値観の違いなのか。
せっかくママ友が良かれと思って作ってくれた野菜のスープを子どもが嫌がったからそのまま料理を一緒にトイレに流してわぁーと喜んでいたがそれはちょっと…。
案の定、ママ友がスープは美味しかったかと聞いた時に子どもは悪気もなく「ううん!うんちっ、オェっ」と言ってました。
そんなことを一緒にするから言わんこっちゃない。ママ友達も協力して負担を減らそうとやってくれてるのに恩を仇で返してはダメだ。
パスタで遊ぶシーンもありますが食べ物で遊ぶのはちょっと。
やはり子どもには母親が必要であった。
2人の立場で考えるととても辛かった。
事故当日妻と出かけていた友人に対しても怒りと憤りのない悔しさに震えているかのように思えました。妻が真横にいながら自分だけは生き残り、腕で抱いて最期を看取ったと聞いた時も。
おそらくテロリストを憎んでなんていたら精神的にも自分の心に良くない。この先生きていけない。
だから前向きに捉えて明るく息子を幸せに育てていこうと決めたんだと思う。
実際人間というものは弱く脆い生き物だから。
本当は相当恨み憎んでいると思う。ずっとずっと涙を流しているのが証拠だ。
こういう映画を通して思うことは、今この瞬間にも戦争やテロ、犯罪などで被害に遭った同じ境遇の人たちがたくさんいるということ。アントワーヌは氷山の一角である。果たして被害者の人々は加害者に対する気持ちとどう向き合っているのか。
人からしたら赤の他人だがその人達も誰かの大切な人、という気持ちを忘れずにいないといけない。
国ガチャSSRの平和な日本に生まれてきてもっと有難いと思わないといけないな。(最近物騒ではあるが)
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