Maelstrom マエルストロム

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Maelstrom マエルストロム

解説・あらすじ

2002年にニューヨークの美術大学を卒業した直後に交通事故で脊髄損傷という大怪我を負った映画作家・アーティストの山岡瑞子が、大混乱(マエルストロム)の中で自身を見つめ再生していく姿をつづったドキュメンタリー。

2002年6月、留学先のニューヨークで美術大学を卒業した山岡瑞子は、さらに1年間プラクティカル・トレーニングビザでアメリカに滞在する予定だった。しかしアパートの契約金を引き出すため銀行へ向かう途中で交通事故に遭い、目を覚ますと下半身不随となっていた。それまでの日常を突如として失い日本に帰国した彼女は、事故前の自分を取り戻すべく、変わってしまった日常を記録しはじめる。

2022年製作/79分/日本
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
劇場公開日:2023年12月2日

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映画レビュー

私は、私の気持ちしか自信を持って描けない

2025年4月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 タイトルのマエルストロムとは「大渦巻き」「大混乱」という意味だそうです。

 家族の軛を逃れてNYに留学した本作監督の山岡瑞子さんが、交通事故による脊髄損傷で車椅子生活を余儀なくされ、これまでの人生を振り返り、これからの生活の不安に苛まれる日々を綴ったセルフ・ドキュメンタリーです。障害をテーマにした映画は数多くありますが、本作はこれまでと少し手触りの異なる作品でした。

 まず、本作には言葉が溢れています。監督のナレーションが全編を覆っており、過去の写真やコラージュ的映像しか流れない場面もあります。映画という定石から言えば、「言葉ではなく映像で語れ」とも言われそうですが、恐らく何度も書いたり消したりを繰り返したに違いない一つ一つの言葉は鋭く重いのです。「自分は一体何者なのか?何が出来るのか?何をしたいのか?」「車椅子を手放せない毎日をどう生きて行けばよいのか?」と発せられる問いが見る者の胸に迫ります。

 こんな言い方は失礼ですが、この方はちょっと難しい人なのかなと思われました。でも、正直に自分と真正面から向かい合おうとしたら誰だって「難しい人」にならざるを得ないに違いありません。本作にはそうして自分自身と切り結ぶ監督の覚悟が溢れていました。上映後のトークで、監督ご自身が、

 「私は、私の気持ちしか自信を持って描けない」

と仰っていたのもそうした思いの表れだったのでしょう。自分自身を薄めて薄めて更にそれを誤魔化しつつ生きて来た僕には少し観るのが辛い映画でもありました。

 2023/12/6 鑑賞

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