「静かで深い」大いなる不在 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
静かで深い
誰にでも起こりうる忘却と記憶の話。ラブストーリーでもあり、父と息子の歴史でもあり、(平板でも棒読みでもなく)言葉が美しく紡がれた作品だった。
息子役の卓(森山未來)の職業が俳優であることが生きていた。プライド高く相手を追い詰めるようなことを言う父親(藤竜也)、認知症になって妄想の世界に居ながら息子が小さい時のことを覚えている父。直美の日記とそこに挟まれていた若き父のラブレター、あちこちに散乱し貼られていた父のメモは卓にとっては台本と思うしかなかった。若き父の恋、記憶が混乱し認知症に入り込んだ父。両方とも卓にとって全く知らない父。それを淡々と受け入れるのは尋常なことではない。残された資料に忠実に向かい合って考える。そのプロセスは台本と俳優の関係のようだ。
映像では、鏡(玄関、施設のエレベーター、洗面所)の使い方がうまいなあとか、人物を真ん中に置かないで右(または左)の端っこにしているシーンが多くてそれでその人物の気持ちとかどんな所に居るのか、でも大事なのは人間だけじゃなくて物もなんだよ、と言っているようだった。
卓は父を「陽二さん」と名前で呼ぶ。何十年も会ってなければそうとしか言えないだろう。施設で父は息子に謝り許してくれと頼む。ピュアで本当に可愛い幼い息子に父は暴力をふるった、自分が批判されているように思えたから。息子は大丈夫だよと答えるが父の思いを受けて許すよと言う。息子は初めて「おとうさん」と父を呼んだ。そして自分のズボンベルトを外してゆるゆるの父親のベルトと交換してあげた。その間、父親は両手を挙げてなされるがまま。可笑しく哀しく涙がたくさん出た。
物理学研究者で元大学教授、内気で皮肉屋、理屈で相手を負かすことに喜びを感じる嫌な奴、ラジオ無線を愛する男、陽二。冒頭シーンの陽二の姿のかっこよさの仕掛けは最後にわかった。水で髪を濡らしてオールバック。鏡に映ったその顔は、三船敏郎であり山崎努でありながら藤竜也以外の何者でもなかった。いい邦画を見ると心が潤う。
藤竜也、本当にいい役者ですね。日活時代は長く小林旭や渡哲也の脇を勤め主役が張れたのはもう30歳を過ぎてからでした。でも誰もが狙っていた芦川いづみさんをゲットしたのは彼です。もう80歳を過ぎてますが男の色気が漂ってますよね。
認知症の当事者は真剣なんですよね😌ホント、そのことを思う話でした。
そして直美さんにきっとあった深いおもい。
talismanはわかってくださるなぁと思っていました😭ありがとう〜
「ティナ」にコメントありがとうございます。
夏バテ気味ですか。
涼しいところで水分を取ってくださいね。
私は仕事に行けば、ずっと室内なので、どうにかやってます。
ふだんからボーっとしてますが、暑いとより呆けますけどね。
お互いに気をつけましょう!
ですよねー!洗面所のシーンはホント痺れました。あの歳でも男の色気があって凄い!たまに内容が入ってこない程うっとりさせられる魅力で特別藤竜也のファンでは無いですが今回はヤられました笑!
共感ありがとうございます。
深い作品でした。
藤竜也さんが本当に上手くて認知症の悲しさと怖さを感じました。
森山未來さんは怒り以来の作品でしたが自然な演技表情が素晴らしかったですね。
今晩は。夜分すいません。
”いい邦画を見ると心が潤う。” 仰る通りだと思います。
実は、拙レビュー(余りにも映画のインパクトが強かったためか、間違いだらけだったので、家で書き直しました。)には敢えて書かなかったのですが、父が初月辺りから認知症の気が出ており、非常に心配しているのでこの作品が沁みたのかもしれません。
父は今作の陽二に似てはいませんが、社会人としてトップに立ち、家族を立派に育ててくれた戦後日本の猛烈サラリーマンでした。
故に、今の父の言動、行動を見るのが切なくて。あ、返信は不要ですよ。
いつも、talismanさんの品性高く、優しきレビューはとても好きで拝読させて頂いていますしね。では。