「前例のない規模で撮影した大迫力の花火のシーンは映画館で観るべき映像です。」長岡大花火 打ち上げ、開始でございます 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
前例のない規模で撮影した大迫力の花火のシーンは映画館で観るべき映像です。
「一生に一度は行きたい花火大会」と呼び声が高く、日本三大花火のひとつに数えられる新潟県の長岡花火の神髄を、成り立ちを含めてたっぷり楽しめるエンターテイメント・ドキュメンタリー。
2023年8月の花火大会の様子を20台以上のカメラで記録し、誰も見たことのない場所から撮影した映像も織り交ぜながら、豪華絢爛な大玉花火の連続を、映画館ならではの迫力の映像と音響で臨場感たっぷりに映し出します。
鑑賞にあたり、随分悩みましたが、やはりDVDではあの大迫力の臨場感は無理だと思い、思い切って見ることにしました。
長岡花火2023自体は、昨年のライブ放送で見ていたのですが、テレビと映画ではやはり大違いです。それにライブだとかなり間延びする点、本作では後半30分に編集して、密度濃く打ち上げシーンをたたみ掛けて見せるので、その分花火への感動が盛り上がりました。前例のない規模で撮影した大迫力の花火のシーンは映画館で観るべき映像です。
「えっ花火のシーンは、最後の30分だけ?」と疑問を持つ人もいると思います。けれども本作は単に花火の打ち上げを記録した作品ではなかったのです。
前半の1時間では、長岡花火の由来と開催されるに至った歴史的な背景を掘り下げています。
その歴史は、江戸時代まで遡って紹介しています。幕末の北越戊辰戦争で焼け野原となり、太平洋戦争禍の1945年8月1日の長岡空襲で再び焼け野原となり、多くの市民が犠牲となった深い悲しみの歴史、2004年に起きた中越地態での甚大な被害の歴史など…。そこには、戦争や災害にまつわる長い歴史と、市井の人々が込める慰霊と復興への思い、そして平和への深い祈りがあったのです。
そんなさまざまな苦難を経験してきた長岡の人々は、慰霊の念と復興への決意、そして平和への深い祈りを花火に込めてきました。
なかでも1486名の犠牲者を出した長岡空襲への慰霊の想いは強く、長岡花火の大元になる「長岡まつり」の前夜祭が空襲と同じ8月1日開催とされていて、今でも「二度とこのような悲惨な歴史を繰り返してはならない」という平和への願いを込めて、慰霊式典や灯籠流しが開催されます。さらに、空襲の時間となった22時30分には、鎮魂の3発の花火が打ち上げられることが本作でも紹介されました。
自然災害や争い事が絶えないなか、復興20年の節目に、不屈の「長岡魂」を世界に届けたいと本作のメッセージを強く感じさせる前半の1時間でした。
会場となる新潟県中南部に位置する長岡市の信濃川河川敷には、二日間で長岡市の人口の3倍以上、約100万人もの観客が全国から駆けつけます。その大会運営の裏側には、この日を目指して1年を花火作りに賭ける花火師、会場設営に汗を流すスタッフ、大観衆の安全安心を支える関係者など運営を支え奔走する人々、そして、長岡花火に様々な思いを寄せる市民たちの存在がありました。
映画では華やかな花火の裏にある歴史を振り返りながら、花火大会を支える花火師や運営に奔走する関係者、市民スタッフのインタビューを通して花火に息づく人々の真摯な祈りを見つめ、過去と現在を通じて長岡花火の全貌に迫ります。
ところで誰も観たことがない場所での撮影は凄いものでした。打ち上げ現場で花火が連続で打ち上がる凄まじい映像。現場で打ち上げに当たる花火師たちの緊迫した行動にもスポットが当てられて、時に打ち上げ台が火事になることもあり、花火師が消火活動まで行う姿が紹介されていました。
またセミファイナルとなる長生橋のナイアガラ花火と正三尺玉連発の打ち上げシーンでは、尺玉の打ち上がる様を真下から仰ぐような、絶対見られないアングルで捕らえていました。
やはり圧巻は、「復興祈願花火フェニックス」のシーンです。ほぼ横一線に約20ヶ所の打ち上げ場から一斉にあげられる花火は壮大!この凄い打ち上げシーンを20台を超えるカメラを駆使しして、時に引いて夜空を照らす全体像を描いたり、思い切りクローズアップしてフェニックスの放つ煌めきを印象時に捉えていました。
息を呑むこの打ち上げシーンには、花火に没入するあまり、自然と涙が溢れてきたのです。