「配信で観るなら悪くない」次元大介 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
配信で観るなら悪くない
実写版「ルパン三世」はおぼろげながらあまり感心しなかった印象が残っていたので、期待せず本作に臨んだ。が、意外に悪くないんじゃないかと思いながら観続けることができた。「ルパン三世」のアニメシリーズは子供の頃に観ていたので、次元大介はもっと寡黙なキャラクターであってほしかったが、40過ぎの玉山鉄二がアクションでも健闘していた。ハリウッド大作に比べたら予算規模の違いが画に出てしまうのは仕方ない。それでも、時計店奥の居住空間での狭さを逆手に取ったアクション演出は、「イコライザー」シリーズのような身近にある道具を武器にして戦う近年の格闘描写のトレンドをうまく取り入れて工夫していた。
人物のアップが多く、逆に映画らしい引きの構図で見せる画が少ないが、配信作品をスマホ画面で見る層が増えているのでこれも時代の流れか。劇場のスクリーンで観たら物足りないと感じそうだが、テレビやモバイルの画面なら分かりやすくていいのかもしれない。
オト役の真木ことかは、髪型もあって中性的なルックと、自然な演技が印象に残った。今後の活躍を期待したい。あと、次元がすき焼き鍋にビールを入れて「子供は食べるな」的なことを言うけれど、あの台詞はナンセンス。熱でアルコールが蒸発したら問題ないわけだし、もしあれがだめなら、店でも家庭でも加熱調理の過程でワインや料理酒を使った料理を未成年が食べられないことになってしまう。行き過ぎたコンプラの悪い見本になった。
次元大介のラスト、料理酒としてすき焼きにビールを入れてましたね。
次元の人となり、優しさが見えるシーンとして素晴らしかったと思います。
冒頭の時計店の矢口は、冷たくあしらい追い返す。オトは、すでに人間不信になっていた。
彼なりに、おれにまたすき焼きを作って欲しかったら。また、大人になって再会しようと二人に激励しているように見えました。
二人からは、死線を綱渡りする次元の方が先に逝くと思って、つい笑いが込み上げてきます。
彼女たちにとって、生きる希望が次元の作るすき焼きの約束なんですよね。
オトが大人になったら。この映画がハッピーエンドに。
観客として、生きて欲しいと思いましたし。役者としても、玉山鉄二と真木ことか、草笛光子さんらが観客をそう仕向けたのなら大成功ですから、嬉しいんじゃないかな。
最後のすき焼きビールは今までガキに興味なかった次元大介がオトを自分の子供のように思って「父親」として注意したんでしょ……
それを行き過ぎたコンプラの悪い見本と評価するのはさすがに単純すぎる