市子のレビュー・感想・評価
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あの子なんか気になる…
最初はちょっと気味悪い少女だと思って観ていたが、だんだんと惹かれ、中盤からは彼氏と同様に本当の彼女はどんな人物なのか真剣に探しながら鑑賞していた。
唐突につぶやかれる意味深な言葉や大きくて黒い眼差しによって、彼女は今何を思って何を感じているのか、過去に何があったのか知りたくなってしまう。
ラスト以降に彼氏は市子を見つけることができたのか?また見つけたとき市子はどのような行動を取るのか?考えただけでぞくぞくする。
この作品を2023年内に観なかったことを後悔している。
確実に年間ベスト10に入っていた。
生きて欲しいと思ってしまう
たとえ人を殺していたとしても市子には市子として生きて欲しいと思ってしまった。
杉咲花が個人的にはとても良かった。
今までも素敵だと思っていたが、より魅力を感じた。
始まりの関西弁とプロポーズでの涙にきゅんとした。
物語が進むに連れて家庭に問題のある過去がわかってきた。
欠落した感情と彼女の儚さと取り乱さない姿に惹かれる。ミステリアスだけど可愛らしい。
関西弁で言う彼女のありがとうは痺れた。
雨の中、雨に打たれに行く彼女。
花火を、みんながが上を見るから良いと言う彼女。
ケーキ屋で働くクリスマス仕様の彼女には思わず可愛いと言ってしまいそうになる。
神社でゆっくり焼きそばを食べるのもいい。
こうなってくるとただの杉咲花ファンになってしまう。
でもそれが市子。市子を好きになってしまうのは仕方がないし、殺人を犯してるなんて誰も思わないだろう。男性陣が俺が守ると言いたくなるのもわかる。
必死という感じでもない、すこんと生きることができている。全てを知った長谷川はどうなるのかな。
物語はベビーな内容だけど、疲れなかった。
最後までどうなっていくのか気になって面白かった。
知ろうとすればするほど離れてしまう心
とても悲しい映画でした。
途中まで関西弁のサイコパスってこんな感じなのかな、というような気分で見ていましたが、中盤から彼女の持つ特性が分かった後は本当に物悲しく、最後は泣きそうになりました。
中盤、市子が北と再会したシーンで、殺人幇助のことは触れずに何でもないように放っておいてくれ、自分には夢があるというシーンで彼女の特性について分かって来ます。
市子にとって北含め大抵の男は利用出来るかどうか程度の価値しかないのでしょう。
これは決して市子に感情が無いわけではなく、感情のしきい値が異常に高く、滅多なことでは心の琴線が動かないせいだと思います。
また、普通に生きるためには"過去の自分"を切り捨てる必要があるため、北は過去の自分を繋げてしまうピースになってしまうことも、邪険に扱っている理由だと思います。
北は
「市子を救ってやれるのは自分しかいない」
と言っていましたが、市子にとってはむしろ逆で、最後に車ごと入水させて殺してしまっていることから分かる通り、今の自分を過去の自分に縛る重しでしかなかった、というところが悲しいところです。
その点、長谷川は市子にとって過去を聞かれないで付き合い続けられる点で救ってくれる人物になり得たと思います。
しかし、生駒山で月子の遺体が見つかってしまったことから逃走を選んだ時点で、長谷川も自分の過去を探る人物になってしまい、彼は市子にとっての救世主では無くなってしまったと思います。
市子は普通の人生を送ることが目的となっていますが、周りの人間は市子のことを知ろうとすればするほど、彼女から遠ざけられてしまうという矛盾があり、それがこの映画が観客に突き付ける業となっていると思います。
この業に想いを馳せた時に感じる悲哀が、この映画の魅力だと感じました。
儚げで大人しそうな美女
突然失踪した恋人の市子を探す男性の行動を軸にストーリーが進む。最初は多くを説明せず、ストーリーが進むに連れて、市子の人物像や過去、事件の全貌が徐々に明らかにされる造りになっているため、最後まで緊張感を持って観ることができる。
妹、義理の父親、自身に執着する高校の同級生、自分と見た目が似ている自殺志願者の女性と、市子は作中で4人を殺害している。この事実だけで判断すると、市子は自分の都合で人を殺した連続殺人犯となる。
しかし、幼少期より苛酷な生活を強いられた上に、存在自体が国に認知されないといった状況でも、人並みの幸せな人生をを諦めずに懸命にもがく市子を責めることは難しいのではないだろうか。
終盤の市子が鼻歌を歌いながら歩くシーンでは、儚げで大人しそうな市子から、何がなんでも生きて幸せになろうとする強い意思を感じられる。
強く生きる、ということ
舞台劇が原作。気になってはいたのですが、11月からロングラン、とのことで年明け1作品目で鑑賞。
面白いです。プロポーズの2日後に失踪したヒロイン、市子を逃げられた彼氏と、市子をある事件の参考人として追う刑事が、探す話。二人が市子を探す過程で浮かび上がる彼女の過去が話のメインになります。
市子には戸籍がなく、難病で自宅から出れない妹の月子の戸籍を使って生きてきた。彼氏からプロポーズされ、いざ結婚となるとそれが発覚するので逃げた、という設定。
この設定は凄く面白い。市子を、可哀想な境遇に生まれた女の子、と描かずに、そんな境遇にも強く生き抜く女、と描くのも好感が持てます。ヒロインの杉咲花も、地味だけど意外とモテる、って感じが上手く出ていますね。
自らの不遇に馴染めず月子で生きることに抵抗を感じている小学生時代、月子と義父を葬り月子を乗っ取り生きると決めた高校時代、月子から市子へと乗換を果たし過去と決別する時代、とそれぞれで市子の感情の違いを出すのが、この映画の見せ所かな。
全くストーリーは違いますが、自分のなかでは「白夜行」と「嫌われ松子の一生」が浮かびました。この2作品に比べてしまうと、1・2枚落ちると思いますが、まあ楽しめる作品ではあります。
『PEARL』との親和性
興味はあったが、どうしても後回しになってしまい、公開終了間際に映画館に駆け込み鑑賞。結論、見てよかった最高の映画でした。杉咲花さんは言うまでもなく、脇を固める俳優陣の演技も最高。個人的に出てる映画に外れなし!の宇野祥平さんも眼福の演技を見せてくれていました。
作品の中で重要なテーマとなっている「無戸籍児」「貧困」「ヤングケアラー」などの問題を、声高に叫ぶことなく我々に突き付けてくる。そこに、「介護疲れによる殺人」「女性搾取」「自殺ほう助」といった目をそむけたくなる問題も絡んでくる。今あげた問題は、それぞれ一つだけでも解決の糸口すら見えないような社会問題であり、それらの問題について自分は何ができるのかと考えると気が遠くなるくらい己の無力さを痛感してしまう。これらの問題を、違和感なく「市子」というキャラクターに落とし込んでいる作劇に、そのキャラクターを完璧に表現しきった杉咲花さんに最大限の賛辞を贈りたい。
ここからは賛否が分かれるかと思うが、私はこの映画、さらには市子というキャラクターと、同年に公開されたタイ・ウエスト監督、ミア・ゴス主演の『PEARL』との親和性を感じた。市子が作中で犯す「犯罪」はもちろん彼女の環境がそうさせた面が多分にある。生まれた瞬間から「無戸籍」という「罪」を背負った市子が、そのことを「罪」と規定する世界、つまり我々を憲法、法律で守っている「日本国」で生きるために他者の命を奪うことは、至極まっとうな真理のようにも思える。しかし、作中、呼吸器を外されたことで死にゆく妹の視点として抜かれた市子の顔、その彼女の目の奥にある深淵は、そういった外的な要因を一切省いたとしても残るであろう彼女の「闇」を映しているように見えた。ミア・ゴスさんが演じたパールと、杉咲花さん演じる市子の「無表情の異常な怖さ」は、同じ「闇」を持っているもの同士のように私には思えたのだ。彼女の犯した「罪」は社会のシステムがそうさせたのか、それとも彼女たち自身の持つファム・ファタール的側面がそうさせたのか、繰り返し見て考え続けたい作品である。もちろんファム・ファタールというキャラクター像自体が「男を惑わす女性」という、男性側の視点で切り取った差別的女性像であるから、そういった彼女の面もまた男性優位な社会視点へのカウンターであるといえることは補足しておきたい。
作中で、他の人の意見を聞きたいと思った部分は二点ある。一つは市子のプロポーズの答えは「イエス」だったのかということ。「一緒になりませんか?」という長谷川のプロポーズに「うれしい」と答えた市子。流れからいって「イエス」だと解釈したいし、彼女の涙は本当のうれし涙だと思う。しかし「うれしい」=「イエス」ではない。婚姻届を提出するということは文字通り「籍を入れる」ということである。そのために戸籍謄本が必要であることは市子もわかっていたであろう。彼女は「市子」としての人生を歩み始め、彼女自身のありのままを好いた長谷川にプロポーズをされた。これは自分自身として生きることを許されなかった市子が最も欲した「自己の肯定」だと思う。しかしその愛した人からある意味突き付けられた結婚届によって、彼女は再び社会によって自己を否定されてしまう。その悲しみの涙と解釈すると、彼女の涙が重く心に突き刺さる。
二つ目は、長谷川はあの後市子を探し続けるのかということ。これに関してはまだ答えを出せていない。これを読んでくれた方のご意見をぜひ伺いたい。
魔性の女
浴衣とかメガネ君が口を割らないワケとかチャラい彼氏とか、だいたい気になった伏線はきっちり回収されているように、構造が非常によくできている。
市子は、一見世捨て人のように見えるが実は(人狼風にいうなら)生存意欲は高いほうで、同性はドン引きされ、異性には懐かれる傾向があるのでキキちゃんは非常に貴重な存在。
姿を晦まさなければ何も起きなかったのでは・・・とも考えたが、普通の幸せ以上の目的があって着実に執念深く達成していくのを紐解いていくというある意味ヒトコワ。
というのがだいたいの自分の解釈ですが、作品中に明言されているわけではないのでネタバレじゃなくてもいいかなとは思ったが、まあ一応ネタバレにしときます。
こういう見る側の解釈に委ねる部分が多い作品は見終わったあとに引きずるのが良いです。
家庭崩壊で名前まで偽って学生を続けるメンタルの強さ。
市子の家庭はほぼ崩壊していて、筋ジストロフィーの妹、月子の世話をしながら母親の内縁の夫、小泉との関係にも悩んでいる。
月子には戸籍があるものの、市子には戸籍がない。無戸籍である。
月子になりすまして学生時代をおくるものの、高校生までの関係を断ち切って市子と名乗り始める。
話を進め方に工夫を感じる。
時系列でもなく、市子に関わる人物の目線で順に描くというのは面白い。
最後に男女が車ごと海に突っ込んで男女が亡くなったが、市子ではない気がする。
それを明確にしなかったことで、鑑賞後にいろいろ周りで話ができる余韻まで残している。
鼻歌
同じ鼻歌なのにラストシーンは
何とも不気味というか、恐ろしいと言うか…
自殺願望の彼女と北くんを
市子が海に沈めてしまったのか。
彼女の戸籍を奪って別人として生きていくのか。
戸籍があれば、妹が健康であれば、
たらればだけど色々考えてしまった。
杉咲花さん、いい女優さんですよね。
引き込まれました。
重いテーマなのに
個人的には観に行ってよかった作品でした。
内容は社会問題を扱っていてとても重いです。生まれた時から巻き込まれていた無戸籍の問題。ヤングケアラーにならざるをえない家庭環境。どちらも市子の意思とは関係ない問題です。でも母親も追い詰められてやったこと。わかっているから家族のために、市子は必死に取り繕って生きるしかなかったのでしょう。
でももがけばもがくほど、綻び辻褄があわなくなっていく。どんどん苦しい状況に追い詰められていく。全編にわたって息苦しさが流れています。
それにも関わらずこの映画には、抱えきれない問題を押し付けられて心がずっしり重くなる感じがあまりありません。(社会派の映画を見ると時々感じます)
理由をいくつか推察すると、ひとつは映画と鑑賞者の距離感にあると思います。映画はサスペンスとドキュメンタリーの中間くらいの視点で進んでいきます。なので鑑賞者は、第三者の目撃者、もしくは近くても市子もしくは市子の恋人の友人。でも演出・音響・演技には妙なリアリティーがあり遠すぎもしない。絶妙な距離に観客を置いています。
ふたつめに善悪の議論がないところ。市子も市子の周りの人もしばしば非常識、非人道的な行動を取ります。でも映画の中で良い悪いを語ることはありません。事実がやや淡々と流れていきます。鑑賞者はいろんな感情に揺さぶられますが、映画側からの明確な主張は無いようにみえます。
最後に、市子自身に視点をむけると妙な爽快感があるのです。もちろん悲惨な現実にもがき、平穏な日々をおくれないことを悲しんでいます。でもとてもしぶとく強かに見えます。映画の最初と最後で、真夏の日差しの中を市子が鼻唄を歌いながら歩くシーンがあります。絶望的なシーンですが、市子はどこか楽しげで、なにかから解放されたように見えます。
ながくなりましたが、重いテーマでありながら押しつけがましくなく、適度な距離感で観客にいろんなことを考えさせる映画です。
乗れなかった、理由は、、
最近、評判の高い作品を勝手にワクワクで観に行き、勝手に若干失望してるケースが多いですが、今日もそうでした。
先ず、300日問題、ここ最も深掘りして欲しかった。ここが核なのに結構あっさり進行してしまって残念。で、この部分についての市子の心理描写、苦悩をもっと描くべきだったのでは?と。ここ明らかになった後はもう観ていて、そりゃそうなるよね、の連続で驚きは全くありませんでした。それと、なんか妹を殺害する状況を、仕方ないよね。みたいに見せてるのもちょっと浅さも感じてしまいました。また、あんな表情が乏しい影がある子に一緒にケーキ屋やろう!決まり!って言うかな?初めて会った他人から焼きそばもらって、同じ箸で食ったり、ビール回して飲まないっでしょ。なんか、無戸籍設定を成立させるためのムリクリのような気がして、乗れませんでした。長谷川も小泉と同じ道を一直線のような気がして、、、、
私の心が汚いから話に乗れなかったのか残念です。せめて市子の心理描写がもう少しあれば、杉崎さんの演技もあり凄い作品になったような気がするなぁ。
鼻歌
川辺市子とは何者なのか?
失踪した市子の身辺を聞き込みをしていく。
そこには、そのように生きてきた市子の証が
浮かび上がってくる。
徐々に重くなっていく終盤。
無い戸籍に心揺さぶられる。そんな人生だったとは。
市子の生きる社会に問いかける社会問題。
引き返せない現実が切なすぎる。
杉咲花さんの静かな演技が素晴らしい。
ケーキやガリガリ君の食べ方も。
あの笑顔と話し方が魔性の女を
感じる。そこに引き込まれてくよね。
上手だなぁ。
『普通に生きたいだけ』…そうだよね。
最後の鼻歌しながらの歩きは
色々な感情が渦巻いてしまった。
そこらへんに転がってる悲劇
「ある男」を彷彿とさせる内容ではある。
元が戯曲なだけにセンセーショナルな内容であり、舞台映えはしそうである。ヤングケアラーとかシングルマザーとか生活弱者とか、その劇団のカラーを知り、それ目当てでくる客層には好評なんだろうなぁと思う。
ただ、映像にするにあたりも少し交通整理は必要ではないのかと思う。劇作家であり演出も手掛けたのなら抜け出せない迷宮かもしれないが。
誰が主役かいまいちピンとこない。
タイトルである市子の事が語られはするが、過去が暴かれるだけで、彼女自身の変化にまでは至らない。新たな戸籍を手にするようではあるが、身元不明の遺体を特定する方法は多々あるし…結局、彼女は元の暗闇に戻っただけだ。
彼女の周囲の人々は結構な確率で不幸に見舞われていて…じゃあ、その元凶はなんなんだってなると、障害を持つ妹に行き着く。そこから派生して、その障害者の家庭へのケアが不足してる社会批判も含まれるとかってなるとそんな事もないように思う。
残酷な現実は、普通に、幾らでも転がってるんだという一例に過ぎないのだ。
彼女を追う彼も最後までは描かれないし…。
同情を誘いたいわけでも、感動を届けたい訳でもないはずで、どうにも不完全燃焼な作品だった。
観客はどう思うのだろう?
市子じゃなくて良かったと安堵するのだろうか?
更なる市子を誕生させないようにしようと思うのだろうか?
それとも対岸の火事ではなく、現代の日本で普通に起こる悲劇であると認識を改めるのだろうか?
LIVEではない事で伝えきれないモノは多いと思われる。
ただ、杉咲さんの儚さは絶品だった。
あくの強い関西弁なのだけど、彼女の口から発せられると、とても柔らかく聞こえ好きだった。
ストーカー怖い((((;゜Д゜)))
市子(杉咲花)の過去を遡ればのぼるほど
見えてくる闇深さ。
単純な殺人事件とは違う、重厚なミステリーを思わせます。
3年間同棲し、結婚を考えた相手にも関らず
その相手の素性を何も知らないというのはいまどきなのでしょうか。
昭和のおばちゃんには、そこがしっくりこなくて
現実味を感じられません。
中盤からどんどん複雑怪奇になって、
時系列もコロコロ変わっていくので
テンポもあまりよくないため、おいてけぼりを喰らうし😫
ストーカー気質の元同級生 北(森永悠希)を
利用?しつつ第二の人生を歩もうとした姿は
弱者を利用する捕食者のようでした。
市子の本音がほぼ語られないため
何を感じて何を思っていたのかわからない。
もったいない気がします。
市子だった。
プロポーズした次の日に失踪した彼女。今まで何も知らなかった過去とともに追い求める彼。
彼女は何故幸せな生活を捨て消えたのか。。。
プロポーズのシーンが冒頭から始まり涙を流し喜ぶ姿。そして何もかも明かされた終盤にも同じ場面が流れた時、その笑顔と涙・歓喜と諦めに似た虚空が乗っかって一気に引き込まれた。
杉咲花は凄かった。空を掴むような、存在があって無く、自分が自分である事への諦めと主張。背景にある社会的問題を抜きにして「市子」だった。
そして相手の若葉竜也。『街の上で』で主演だった時も思ったが、どこにでもいるような、何も無いような、ただ存在してるような、でもなんか引っかかる、突き刺さる。どこかで見たことあるんだよなぁって感じではあるが演技はしっかり覚えてる。そんないい役者さんで好きなのです。
凄く面白かったです。
すべては杉咲花のために
演技力で魅せる映画。とにかく出演者の細かな表情の変化で、セリフが少なくても感情が伝わる。演技を堪能する作品。
出生300日問題やヤングケアラー、毒親など取り上げたテーマと妹になりすますという発想は絶妙。それだけにもっとおもしろい映画にできたのに…と思ってしまう。
分かりやすいエンタメ路線に乗せる必要はないのだけれど、もうすこしテンポアップしてほしかったのと、市子自身の本音や何をどう考えているのか深掘りがあればと感じた。
見方によっては、その出自と家庭環境が故に生まれた連続殺人鬼なだけにも見えてしまう。
親しくなった人を容赦なく切り捨てて別の人間として常にやり直していく人生。
子供の頃には確かにあった幸せな家族時代。そんな幸せが婚姻届と共に目の前まであったのに、またゼロからやり直す。
そうしてしまう背景がもちろんあるのだけれど、何かこう同情しきれないというか、市子自身の感情が見えにくいだけに「そこまでする?」と違和感を覚えてしまう部分があった。
市子という存在の不確かさをミステリアスに描くよりも、その悲哀をより切実に描いてほしかった。
そのあたりを俳優陣の演技力に依存してしまった気がする。一方で、演技力だけで見せてしまえるのも同時にすごい。特に杉咲花の魅力が全開。間違いなく代表作と言える。役者としての才能はこの1本を観れば分かる。どんな言葉よりも、宣伝よりも伝わる。彼女のためにあるような映画だった。
市子の人生、救えたはず
過去に戻れるならと考えても仕方ないけど、
一番の過ちは母親の流された選択としか言い様がない。
あの場面でまともな福祉の方に繋がっていたら市子の過酷な人生はなかったに違いない。
嘘を守るための新たな犯罪を犯す事もなかった。
ニュースになる家族間での犯罪行為の大半は、他者に相談する事はない。
人様に知られるぐらいなら内々でなんとかしようとして、益々事態はひどくなり最悪な決断を犯してしまう。
他者を入れる事で風穴が開く。
当事者ではどうにもならないのだから。
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