市子のレビュー・感想・評価
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乗れなかった、理由は、、
最近、評判の高い作品を勝手にワクワクで観に行き、勝手に若干失望してるケースが多いですが、今日もそうでした。
先ず、300日問題、ここ最も深掘りして欲しかった。ここが核なのに結構あっさり進行してしまって残念。で、この部分についての市子の心理描写、苦悩をもっと描くべきだったのでは?と。ここ明らかになった後はもう観ていて、そりゃそうなるよね、の連続で驚きは全くありませんでした。それと、なんか妹を殺害する状況を、仕方ないよね。みたいに見せてるのもちょっと浅さも感じてしまいました。また、あんな表情が乏しい影がある子に一緒にケーキ屋やろう!決まり!って言うかな?初めて会った他人から焼きそばもらって、同じ箸で食ったり、ビール回して飲まないっでしょ。なんか、無戸籍設定を成立させるためのムリクリのような気がして、乗れませんでした。長谷川も小泉と同じ道を一直線のような気がして、、、、
私の心が汚いから話に乗れなかったのか残念です。せめて市子の心理描写がもう少しあれば、杉崎さんの演技もあり凄い作品になったような気がするなぁ。
鼻歌
川辺市子とは何者なのか?
失踪した市子の身辺を聞き込みをしていく。
そこには、そのように生きてきた市子の証が
浮かび上がってくる。
徐々に重くなっていく終盤。
無い戸籍に心揺さぶられる。そんな人生だったとは。
市子の生きる社会に問いかける社会問題。
引き返せない現実が切なすぎる。
杉咲花さんの静かな演技が素晴らしい。
ケーキやガリガリ君の食べ方も。
あの笑顔と話し方が魔性の女を
感じる。そこに引き込まれてくよね。
上手だなぁ。
『普通に生きたいだけ』…そうだよね。
最後の鼻歌しながらの歩きは
色々な感情が渦巻いてしまった。
そこらへんに転がってる悲劇
「ある男」を彷彿とさせる内容ではある。
元が戯曲なだけにセンセーショナルな内容であり、舞台映えはしそうである。ヤングケアラーとかシングルマザーとか生活弱者とか、その劇団のカラーを知り、それ目当てでくる客層には好評なんだろうなぁと思う。
ただ、映像にするにあたりも少し交通整理は必要ではないのかと思う。劇作家であり演出も手掛けたのなら抜け出せない迷宮かもしれないが。
誰が主役かいまいちピンとこない。
タイトルである市子の事が語られはするが、過去が暴かれるだけで、彼女自身の変化にまでは至らない。新たな戸籍を手にするようではあるが、身元不明の遺体を特定する方法は多々あるし…結局、彼女は元の暗闇に戻っただけだ。
彼女の周囲の人々は結構な確率で不幸に見舞われていて…じゃあ、その元凶はなんなんだってなると、障害を持つ妹に行き着く。そこから派生して、その障害者の家庭へのケアが不足してる社会批判も含まれるとかってなるとそんな事もないように思う。
残酷な現実は、普通に、幾らでも転がってるんだという一例に過ぎないのだ。
彼女を追う彼も最後までは描かれないし…。
同情を誘いたいわけでも、感動を届けたい訳でもないはずで、どうにも不完全燃焼な作品だった。
観客はどう思うのだろう?
市子じゃなくて良かったと安堵するのだろうか?
更なる市子を誕生させないようにしようと思うのだろうか?
それとも対岸の火事ではなく、現代の日本で普通に起こる悲劇であると認識を改めるのだろうか?
LIVEではない事で伝えきれないモノは多いと思われる。
ただ、杉咲さんの儚さは絶品だった。
あくの強い関西弁なのだけど、彼女の口から発せられると、とても柔らかく聞こえ好きだった。
ストーカー怖い((((;゜Д゜)))
市子(杉咲花)の過去を遡ればのぼるほど
見えてくる闇深さ。
単純な殺人事件とは違う、重厚なミステリーを思わせます。
3年間同棲し、結婚を考えた相手にも関らず
その相手の素性を何も知らないというのはいまどきなのでしょうか。
昭和のおばちゃんには、そこがしっくりこなくて
現実味を感じられません。
中盤からどんどん複雑怪奇になって、
時系列もコロコロ変わっていくので
テンポもあまりよくないため、おいてけぼりを喰らうし😫
ストーカー気質の元同級生 北(森永悠希)を
利用?しつつ第二の人生を歩もうとした姿は
弱者を利用する捕食者のようでした。
市子の本音がほぼ語られないため
何を感じて何を思っていたのかわからない。
もったいない気がします。
市子だった。
プロポーズした次の日に失踪した彼女。今まで何も知らなかった過去とともに追い求める彼。
彼女は何故幸せな生活を捨て消えたのか。。。
プロポーズのシーンが冒頭から始まり涙を流し喜ぶ姿。そして何もかも明かされた終盤にも同じ場面が流れた時、その笑顔と涙・歓喜と諦めに似た虚空が乗っかって一気に引き込まれた。
杉咲花は凄かった。空を掴むような、存在があって無く、自分が自分である事への諦めと主張。背景にある社会的問題を抜きにして「市子」だった。
そして相手の若葉竜也。『街の上で』で主演だった時も思ったが、どこにでもいるような、何も無いような、ただ存在してるような、でもなんか引っかかる、突き刺さる。どこかで見たことあるんだよなぁって感じではあるが演技はしっかり覚えてる。そんないい役者さんで好きなのです。
凄く面白かったです。
すべては杉咲花のために
演技力で魅せる映画。とにかく出演者の細かな表情の変化で、セリフが少なくても感情が伝わる。演技を堪能する作品。
出生300日問題やヤングケアラー、毒親など取り上げたテーマと妹になりすますという発想は絶妙。それだけにもっとおもしろい映画にできたのに…と思ってしまう。
分かりやすいエンタメ路線に乗せる必要はないのだけれど、もうすこしテンポアップしてほしかったのと、市子自身の本音や何をどう考えているのか深掘りがあればと感じた。
見方によっては、その出自と家庭環境が故に生まれた連続殺人鬼なだけにも見えてしまう。
親しくなった人を容赦なく切り捨てて別の人間として常にやり直していく人生。
子供の頃には確かにあった幸せな家族時代。そんな幸せが婚姻届と共に目の前まであったのに、またゼロからやり直す。
そうしてしまう背景がもちろんあるのだけれど、何かこう同情しきれないというか、市子自身の感情が見えにくいだけに「そこまでする?」と違和感を覚えてしまう部分があった。
市子という存在の不確かさをミステリアスに描くよりも、その悲哀をより切実に描いてほしかった。
そのあたりを俳優陣の演技力に依存してしまった気がする。一方で、演技力だけで見せてしまえるのも同時にすごい。特に杉咲花の魅力が全開。間違いなく代表作と言える。役者としての才能はこの1本を観れば分かる。どんな言葉よりも、宣伝よりも伝わる。彼女のためにあるような映画だった。
市子の人生、救えたはず
過去に戻れるならと考えても仕方ないけど、
一番の過ちは母親の流された選択としか言い様がない。
あの場面でまともな福祉の方に繋がっていたら市子の過酷な人生はなかったに違いない。
嘘を守るための新たな犯罪を犯す事もなかった。
ニュースになる家族間での犯罪行為の大半は、他者に相談する事はない。
人様に知られるぐらいなら内々でなんとかしようとして、益々事態はひどくなり最悪な決断を犯してしまう。
他者を入れる事で風穴が開く。
当事者ではどうにもならないのだから。
しばらく立ち上がれない
未来に希望を見つけようとする人たちと、
今にしか生きられない市子の、どこまで行っても交わらない哀しさ。
真夏の暑い中、汗をかきながら、お母さんの鼻歌を口ずさみ、冬子になった市子は生きていく
?だった人必見
杉咲花ちゃんの朝ドラとか全く知らなくて初めて演技を見ましたがこんなに演技上手い女優さん居たんだ!ってビックリでしたよ(色々調べたら監督が直接指名で手紙まで書いてるんだけど納得)杉咲花の演技力が驚異的で泣きの演技のバリエーションだけで何パターン出来るのよ?(悲しい涙や嬉しい涙や感謝の涙などが全て完璧に演じられていてビックリ)って驚愕でした。
そこに関して更に言わせてもらうと喜怒哀楽の喜怒がほとんど無い演技の中で色んな感情を表現しているんですがそれが実に上手くて言葉以上に表情で語っている場面も多く演技が上手いとか凄いとかの次元を超えていて憑依タイプの役者なのがモロにわかるような演技してましたよ!
あと時系列がバラバラなので多少分かり辛いですが元々は舞台劇だったのを映画にしたらしいんですが舞台劇感が全く無くて入念に作り込まれたよく出来た素晴らしい作品だと思います(映画なのに舞台のように大袈裟に演技して声張って違和感だらけの会話をしてセリフで全部説明するふざけた映画もあるのでこういう作品を見ると本当に凄いって心の底から思えます)
あと杉咲花って28歳の設定でそのまま学生の頃の役も本人がやってるけど良い意味で年齢不詳感あって違和感無いし映画の設定でも年齢詐称してるってのが変にリアルで人選が素晴らしいなあって思いました(ここまで完璧に演じる事が出来る表現の神みたいな役者に自分の作品の主演してもらえるとか監督としてはその時点で勝ち戦なんですが演出や監督のやり方次第では役者の演技力を殺す可能性もあるのにそのポテンシャルを400パーセント引き出したのは監督と杉咲花の市子の人物像についての話し合いが上手くいってた証拠ですし実際に杉咲花は監督との話し合いの時に市子がどんな人生を歩んだのかって言う映画では無かった部分まで書いてある年表を渡されたってインタビューで言ってました)
あと更にインタビューの話になるんですが演じる時に市子になるのを意識して頑張ろうとするんだけど実際の市子がそんな事を思って生活してる訳じゃないからそこの演じ方って部分が難しいとか自分の想像などを超えてる領域の演技をしたシーンもあったとか言っていて演技に対する意識の高さが伺えました!
あとずーっとすっぴんで(すっぴんで暗い表情に見せるようなメイクなのかも)静かにしてるだけなのに男子が思わず虜になるような雰囲気も醸し出されていて監督次第では男を惑わす悪のビッチにもなりかねないキャラなのにめちゃくちゃ抑えた演技で魅了していくとか演技の鬼ですね!
しかし無戸籍や自殺したい人を助ける自殺ほう助などの問題もテーマにありつつそこが内容のメインじゃなくてあくまで市子の過去に何があったのかがメインの作りなんですよね〜
市子が妹の月子として生活する事で3歳年下の妹の年齢で生活していたという設定も実は市子と関わった人たちのシーンで同じくらいの年齢なのにめちゃくちゃ力が強かったとか言っていたりして整合性もちゃんと取れているのも2回目の鑑賞から気づくポイントだったりするのも凄いと思います。
あと若葉さんも抑えた演技ながら良い感じでしたし(プロポーズの後に市子が失踪して結局市子に最後まで会えないまま映画が終わってるのもビックリ!ここも長谷川が最後に市子に会って話をするシーンを普通は入れると思うので)この監督さんの静かでセリフで多く語らないし激しいシーンも特に無いのに市子の人物像がジワジワ明らかになる過程の描き方が上手いので飽きるシーンが一切無い作り方って凄いとおもいました。
ここが1番凄かった部分で最初と最後に同じシーンがあり(厳密に言うと同じでは無い)童話の虹を鼻歌で歌うシーンと結婚を申し込まれて泣くシーンがあるんですが、同じシーンなのに最初と最後で観ているこちらが全く違う感情で見る事になる構成になっていて(最初にプロポーズされて泣いてるのを見ても市子の真相を知らないから単純に嬉しくて泣いてるとしか思わない)最後に全ての真相を知ってから見ると結婚を申し込まれた時の涙の意味が全く違う見え方になるのは見事だしあの鼻歌の童話すら2度と楽しい気分や普通の感情で聴けなくなるように仕掛けられていて監督天才かよっておもいましたよ。(更に言うと2回目の鑑賞だと最初のプロポーズされて市子が泣くシーンの意味とか色々分かった上で見てるので最初から号泣間違い無しですよ!)
ラストの最初に出会って焼きそばを食べるシーンからの今までの幸せだった生活を見せつつ感謝の涙を流しながら2人で撮った写真見て終わるエンディングは控えめに言って超完璧なラストシーンだったと思います(アフターサンと市子のラストに関しては余韻を残す終わらせ方が上手過ぎて過去数年の作品でもここまで見事なオチって自分の見てる作品では無いです)
あと市子は連続殺人犯で警察に自首するつもりも無いしサイコパスな面もあるんですがその部分を一切映像で映さないし最後の自殺志願者の女子に戸籍を持って来させて自分のこれからの新しい名前を入手しつつストーカー男の所に行かせた後に電話で一緒に海に呼び出ししてまとめて2人死ぬ事になるんだけどここの部分が市子が北君に手をかけて心中と思わせる擬装なのか北君の自分にしか市子を守れ無いっていう強迫観念を利用して言葉巧みに市子がこのあと戸籍を入手して逃亡出来るよう助ける為に自殺志願の女と死ぬように仕向けて北君も自殺志願の女と一緒に死ぬように誘導した可能性が高い事にコメント下さった方の意見で恐らくそれだろうなあって事で腑に落ちましたがそのシーンが一切無いのは面白いと思いました!(絶対このシーン普通ならあると思いますが無くて正解だと思います、2人が死ぬ場面が無くてニュースの場面のみでの説明なのでここがわからない人も多いんですが確信犯ですね、そこを描くくらい親切作品にするつもりだったらそもそも時系列をバラバラにしないだろうし普通に連続殺人犯が逃亡生活するサイコサスペンスとして公開されてますから)
あと市子の見た目が今の状態で月子を介護していて殺すってシーンがあるんですが市子は小さい頃から月子って名乗っていたのなんで?って考えて矛盾するよなとか考えたらあの月子を殺す場面の月子がやたら幼なかったよあって所で気づいて、あの月子を殺すシーンは今の市子の脳内での再現シーンで実際市子が殺した場面はもう少し若いはずだと思うんですが 学生時代の場面も杉咲花が演じているので不自然では無いですね!
難しくは無いけどあえて説明を省いた考察ありきの内容なので評価が分かれるでしょう。
それとストーカー君が市子の家の中を覗いているシーンで中での会話が絶妙に聞こえなくて後半は比較的聞き取れるんだけどあのシーンでストーカー君と同じ状態を疑似体験させる演出も面白いと思いました!
しかし普通に人の戸籍を奪いつつ逃亡する連続殺人鬼が出てくるサイコサスペンスな内容のはずなのにそこの映像を省いて表面上は感動の人間ドラマっぽく演出する発想も自分的には超絶に最高でした。
長谷川が結婚してくれと言い出すまでが一緒にいるタイムリミットだって言うのが重大ポイントになっていて結婚を申し込まれて逃亡するまでは今まで出来なかった人並みの普通の生活が出来て幸せだった事を思い出しながらの市子のラストの涙には完全にノックアウトされました。
余韻と精神的ダメージが凄まじくてその後一切なにもする気にならなくて(ベタ褒めしてます笑)
クリスマスイブなのに真っ直ぐ家に帰って感想書いてるって次第です。
市子のような考察作品は評論家でも意見がハッキリ別れて説明不足でオチもモヤっとするし時系列もわかりずらいので だからなに? 自分が考え無いとダメなの? で?ってなりがちではありますね、だから高評価と低評価が極端になって普通の割合が低くなる傾向あるんですが正に市子はそのパターンで刺さる人にはヤバイくらい刺さるんだけどピンと来ない人にはゴミクズ作品で今年のワースト候補くらい嫌われますからね!更に言うと完全に善で可哀想な被害者では無いから主役に感情移入するタイプの人は面白いって言う訳無いので(感情移入した上で良かったとか言ったら単なる犯罪者の思考ですから)
あとこれ伏線の部分全部気づいてる人ってほとんど居ないと思うし分からないと面白く無いからかなりリスクのある作りだと思います!
市子の杉咲花の演技には衝撃を受けて今後の作品はドラマも含めて全作品無条件で絶対に観る誓いを立てるくらい影響された作品になりました(衝撃度でいうとセブン、オールドボーイ、ミスト、愛アムールくらいの衝撃受けました!!!結局自分はガツンと強烈なパンチを喰らうような作品が映画を見る上で1番求めるモノなので最上級の映画体験できましたよ。)
余談ですが市子の監督が落下の解剖学をべた褒めしていてこの監督なら落下の解剖学大好物だろうなあって言うのがめちゃくちゃ理解できます。
市子ってなんだ
杉咲花さんの素晴らしい芝居を見るだけで、鑑賞する価値があった。
市子は存在しない。そこから彼女を探すミステリーが始まるのだが、冒頭、婚姻届を若葉さんが、杉咲さんに渡すシーン終盤にリフレインされる訳だが、意味が変わって見える点、グッときました。
酷い生い立ちで戸籍もない、不幸を詰め込んだ映画で、それを解決する、結婚する方法ってなかったのかなぁ。やるせない最後。僕は苦手です。映画の作りは良かったです。
涙の理由
●追記(12月23日)(アプソさんのレビューを読み、返信したことを補足し)と、前後の入れ替えをしてわかりにくさを整理しました。(12月26日)
●追記(1月8日)反逆についての補足、修正済み
市子はあそこまで過酷な人生を経て
自分の幸せを諦めながらも生きることを選ぶ。
その強さはどこからくるのか。
それは幼少期からの自分の存在を認め救済するための精神的な行為で、大人になった自分にしかできないことを知っているからなのか。
市子の諦めは無言の享受ではなく、自分自身の過去への反逆の糧として確かに息づいていたのだと思う。
(反逆というと、あまりに乱暴な仕返しのようだし、市子の罪から考えてそこに結びついてしまうかもしれないのですが、私の思う市子の反逆とは、精神的なバランスをとるために本能的に自分を保つための思考のはたらきみたいなことをイメージした言葉です。市子の場合はどうにもできなかった幼少期のかなしみやつらさの記憶を大人になっていきながら違う感情で塗り替えることが生きていく意味だったのではないかと。楽しさと辛さの両方の記憶にあるケーキ屋さんの仕事の誘いに応じたのもそのひとつ。辛さで終わったものを塗り替える行為だったのではないだろうか
?)
あのままおだやかな時間が続くならどんなに良かっただろう。
しずかに寄り添う人の嘘のない笑顔と言葉への
素直な喜びがあるのに、変えられない出自と消えない過去が市子の頬に大粒のかなしみをつたわす
抱きしめられるほど砕け散る繊細なガラスは
眩しすぎる時間をまた逃がす
胸の奥を突き刺す切なさが
味噌汁のしあわせそうなにおいも
浴衣や祭りの華やぎも憧れのままにする
海辺で口ずさむあの日の母と同じ鼻うたが
ぽつりぽつりと乾いた道に転がり落ちていく
本当はみつけてほしい落とし物なのだ
明るいほど濃く写る影もいつか離れて行くように
彼女は
彼女を知らないところへ
遠ざかる
ーーーーーー
市子に息吹を与える杉咲さん。
その憑依で表す心情、背景から目が離せない。
犯罪は許されるものではないが
平和な日常に麻痺した心ほどこの重みに押されつけられ不思議な感覚でえぐられるものがあるかも知れない。
なかなかな重たさ
3年間一緒に暮らした恋人からプロポーズされた市子は突然姿を消してしまう。
そこから市子の過去がどんどん浮き彫りにされていくのだが、市子の幼少期からかなりヘビー。
家庭環境の悪さが育ちを悪くしてしまったのかと思ったが、そんな生易しいものではなかった。
市子として生きられなかったのには凄まじく不運な背景があり、胸が押し潰されそうになった。
そうか。長谷川にプロポーズされたのは 心から、本当に、嬉しかっただろう。それなのに、ちゃんと働くことも出来ず、病院にも行けない市子に、1枚の婚姻届。何とも辛く悲しかっただろう。
冒頭の市子の涙と最後の市子の涙は同じだが、市子のそれまでの壮絶な人生を知った後では、ものすごくその意味が重く揺さぶられた。
最後 ニュースで伝えられた海に落ちた車の男女はどういう事だったんだろう。
市子を守るために北が北見と心中したということにしたのだろうか。エンドロールで聞こえて来た関西弁は誰のものだったのかな?
最後いろいろと謎が残ったのだけれども、観る人に委ねる系なのだろうか。
子役も含めて個性派俳優が勢揃いという感じで、しっかり心に残った作品。
ある女
話題になっていたので、観に行こうと思いましたが満員御礼なくらい人がいたので、なんとかタイミングを見つけての鑑賞。
友人から聞いてた通り、「ある男」と似たようなテーマを扱っており、あちらもそこまでハマりませんでしたが説得性は「ある男」の方があり、比べるとこちらの方が映画として見劣るかなと思いました。
なんだか人尋ねの様子がドキュメンタリーの様に思えてしまい、映画的なメリハリが失われていたのも残念だなと思いました。演技も舞台と映画と異種のものが同じ空間にいて、それがうまく噛み合っていなかったのも違和感を感じる要因でした。
市子と関わってきた人物のほとんどが大変な未来を迎えており、現代的な問題を多く抱えているのはフィクションとはいえどやり過ぎだよなぁと思ってしまいました。
まだ普通に過ごしている北くんも市子のストーカー的なポジションも、好意を持っているくらいで抑えられなかったのかなと思いましたし、自殺願望の子は物語に必要だったのかとも思ってしまいました。
関わる人物が多いせいか、一つ一つのシーンが作業的に進められており、テンポがいいと思うのとは裏腹に雑だなと思ってしまったのが惜しかったです。
市子の身勝手さ、ホラ吹きな感じは普通になりたいという願望から生まれたもう1人の自分だろうなと思いましたが、身勝手さが先行して感情移入できず、それでいて逆の意味で凄いと思えなかったのも残念だなと思いました。
杉咲花さんが今作では素晴らしい活躍をされていました。心ここに在らずな女性を見事に演じ切っていましたし、観客を見つめる黒目がこれはこれは大きくて吸い込まれてしまいました。
普通の人生を生きたい女性が、普通の人生を過ごす女性になり変わって過ごすというテーマ自体は良かったですし、杉咲さんの演技には惹き込まれましたが、映画として面白かったかと聞かれると微妙な作品だなと思いました。驚きのあった「ある男」とはまた違う切り口で終わらせるのかと思いきや、中盤で明らかになってしまって消化不良だったのも残念でした。
元々が舞台スタートな作品という事で、舞台版を観たら印象も変わるのかななんて考えたりしてしまいました。
エンドロールでの鼻歌、良い味を出していました。
鑑賞日 12/19
かわいそうだった
貧困かつ無戸籍で、ヤングケアラーでもあり、最終的には4人の死に関わっている市子、気の毒ではあるけど手を差し伸べるとしたら相当な覚悟が必要で、距離をおきたいタイプだ。しかし美人なので好きになってくれる男性には不自由しない。見てくれが悪かったらなお悲惨だ。
児童相談所や福祉のお世話になれるレベルではないだろうか。親切な共産党系の弁護士さんなら無料でケアしてくれることもある。
北くんが、ベランダから部屋をのぞく場面がすごく面白い。臨場感がすごいし、結果的にことが起こるまで何もしないのがリアルだ。
高校時代の彼が団地についてきてドン引きする。若いし、子どもだし、そりゃそうなるでしょうね。男気を見せられても嘘くさい。
市子が長谷川くんと暮らし始めてすごく幸せそうで、ケーキ屋でバイトしていた時も表情が明るい。新聞配達の時は暗い。風邪もひいていた。
2015年、関西のとある平凡な町に暮らす20代後半の女性、川辺市子...
2015年、関西のとある平凡な町に暮らす20代後半の女性、川辺市子(杉咲花)。
恋人・長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に突然失踪した。
長谷川とは、3年間一緒に暮らしてきた仲だった。
しばらく後、途方に暮れた長谷川のもとに後藤と名乗る刑事(宇野祥平)が現れた。
別の事件の関係者として市子を捜しているという。
質問する後藤に対して、長谷川は市子の過去はあまり知らないと答える。
過去についてはあまり語りたがらなかったからだ。
そんな長谷川に後藤は衝撃的な発言をする。
川辺市子なる女性は、どこにも存在していないのですよ・・・
といったところからはじまる物語は、過去の時間軸が交錯しながら、川辺市子と名乗る/名乗った女性の過去、アイデンティを探っていく。
ある時は月子と名乗っていた市子。
何人かの証言で、そこへ辿り着く。
その理由は・・・
と明らかになるところで終わるのが「普通のミステリ」なのだが、映画でその理由が明らかになるのは中盤。
いわゆる、謎解きのカタルシスを超えて映画は市子のアイデンティティに迫っていく。
何人かの証言、いくつもの事件・・・
それらを通して見えてくる/見えてこない市子のアイデンティティ。
世間の枠組み、社会のシステムからはみ出してしまった/しまわざるえなかった存在を救う網はなかった。
セーフティーネットはなかった。
だれかの好意、だれかの愛情は彼女を安全な場所には導かなかった。
社会上どこにも存在していない市子は、それでも生き続けて、存在し続ける。
市子=イチコ=一子=ひとりの人間として。
市子を演じる杉咲花は、一個の人間としての凄みを感じさせる演技。
そして、彼女を取り巻く青年/少年を演じる、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴の若手男優も素晴らしい。
刑事役の宇野祥平、母親役の中村ゆり、母の交際相手の渡辺大知ら、中堅俳優も素晴らしい。
存在しない
コロナからも、インフルからも1人逃げていた∧( 'Θ' )∧
可愛いのと(えw)身体が頑丈なのだけが取り柄な私が、肺炎で2週間ちんでいました:(´ཀ`)
これからは、可愛い(えw)病弱なキャラでいきますd( ̄  ̄)
はぁ〜しんどーー( ´Д`)
久々の映画は市子。
随分と古風な名前でございます。
花ちゃん(パパも♡)倉君♡♡
若葉君と大好きなキャストなのでウキウキですよ♪
無国籍問題ですね。。
以前、井戸まさえ先生の「無国籍の日本人」という本を読んだ事があります。
その中では、日本には戸籍のない人が1万人以上いると書いてありました。
しかし、きちんとした統計がないので、1万人というのは「最低限、確実に、その位はいる」という数字らしい。
驚愕通り越して、信じ難い話しでした。
無国籍になる理由は様々ですが、本作の場合は、いわゆる「民法772条」のケースでしょうか。
何も悪くない子が、無責任な親の元に生まれてしまったが為に、普通の権利を与えられず罪を犯す事になる。。
市子には同情出来るのだが。。
さて、どうしたもんか。。。
市子(花ちゃん)は殺害した妹月子になり代わり、その戸籍を利用し暮らしている。
そして自分に好意のある北(森永君)や長谷川(若葉君)の男心を利用し逃亡しているという事実。
月子の白骨化した遺体が発見された事で、妹と義父(大和君)を殺害した事を知っている北が邪魔になり、自殺志願者の女性と共に偽装自殺させる。
彼女の戸籍を手に入れた市子は、又、違う場所へと歩み出す。。
この物語を、どう捉えればいいのか。
自分が生きる為に人を殺し逃げ続ける市子。
本当に好きだった長谷川との幸せな暮らしを捨ててまでも生きようとする市子。
彼女は悪魔なんだろうか。
ただの殺人者だと思えばいいのだろうか。
市子の人生はスタートそのものが不憫ではある。
母親のせいで無国籍となり月子のフリをさせられた事で狂ってしまう。
市子も被害者なのだ。そうは感じる。責めきれない。犯した罪や逃亡の事実。
同情してしまう自分はいた。
しかし、上手く整理出来なくて混乱している。
凄いものを見せられている気もするし、でも考えると雑な箇所が多くて困っちゃうよ(°▽°)
長谷川は可哀想だったけど、コロされなかっただけマシ?とか、田中(倉君)はあの後少年院に入って「OUT」なのかな?とか、、
映画観るの久しぶりでテンションは高いんだけど、頭がちんでた('◉⌓◉’)
花ちゃん、倉君、若葉君のファンなので星は多めです♪
無題
鼻歌と静かに流す涙
私も終映後しばらく動けなかった
秘密を知るものだけが味わう苦痛
余韻に浸りたかった
市子の笑顔が可愛いだけに守ってあげたくなる
友達も良い子ばかりだった
きっと母親も綺麗なだけに色々苦労したんだろうな
あの時も母親は鼻歌を歌っていた
顔はあまり見えなかっただけに想像して自分が涙する
この親子はお互いにちゃんと愛情はある
表現が少し苦手なのかな
"法廷遊戯"では恐怖を感じましたが
こちらは静かに絶望感
3月公開の"52ヘルツのクジラたち"も楽しみです
杉咲花さんの演技に圧倒される秀作
失礼ながら、杉咲花さんは見た目も演技も子供みたいで、これまで全く魅力を感じませんでしたが、本作の彼女はすごいです
無戸籍児として自らのアイデンティティを否定され、不幸な家庭環境で絶望の淵で生き続ける主人公 川辺市子という到底 一般人には理解できない超難解な役を演じる杉咲さんの渾身の演技だけでも見る価値のある作品だと思いました
日本には市子のような無戸籍者が一万人ぐらいいるそうで、その人達が皆、このような辛い思いをしているかと思うと心が痛みます
それでも一生懸命生き続け、なんとか自分で幸せを見つけそっとしておいて欲しいのに、人の人生は残酷でとんでもない方向へ転がっていく、という顛末には驚愕を覚えました
市子はただただ幸せを願い、ようやく若葉竜也さん演じる長谷川くんと出逢いプロポーズまでされたのに、その辛すぎる出自と生い立ちはとんでもない”怪物”を生み出してしまったのか
と、観ていてめちゃくちゃ苦しいエンディングでした
時代が行ったり来たりしながら、市子を追う人々と一緒に彼女の人生を噛み締め、全貌が明らかになっていくストーリー展開が見事、グイグイ惹き込まれ、あっという間の126分でした
そしてそんなエモーショナルでスリリングな物語を彩る俳優陣も素晴らしかった
特に宇野祥平さん演じる後藤刑事が渋かったのと、中村ゆりさんが色っぽくてすごく綺麗でした
なかなか見応えのある良作でした
仕方なかったはありなのか
いくつかの問題を何層にも重ねて描かれている
フィクションとも思えない理不尽な状況に感情移入し、怒りと恐怖を感じ、市子の涙にこちらも涙した
ただし、不幸な境遇に翻弄された女の子をかわいそうだなと思う話しとするほど単純では無かった
市子とはどんな人間だったのか、観る人によってその人物像は様々であるように思う
個人的に、今年いちばん心をえぐられた
ちなみにわかり辛い時系列はパンフレットに年表が添えられている
原作は舞台作品であるという
この内容がどのように舞台上で演じられたのか非常に気になった
映画の興行が成功し、舞台の再上演など企画されたなら観に行ってみたい
正直いって本作は傑作だと思う
ぜひ映画館に観に行って、内容を人と論じて欲しい
以下、ネタバレ
エピソードは様々あるが、
わたしのレビューでは殺人についてのみ論じようと思う
作品の中で描かれた市子の3つの殺人
時系列で並べると、1.妹 2.義父?(修正:福祉課の小泉・パンフレットにて確認) 3.北と女の子
これらの殺人に重い軽いはあるのかが自分の中で引っ掛かった部分だった
状況が市子を殺人鬼にしたのか、元から市子にサイコキラーの素質があったのか
市子を演じる杉咲花がはかなげで、可愛いことがこの状況なら仕方ないよねと思う気持ちを助長したとも感じた
だが、3つ目の殺人で、市子が北もろともクルマを崖に落とす事を選択したことを知った時にハッとさせられ、市子の本性を見た思いがした
これらの殺人は3つとも全てが市子の人生を修正するために彼女にとって必要な殺人であったと思う
だが、限界を迎えていた精神状態での前2件は仕方なくて、3つめの殺人は利己的だと言えるのかは大きな問題点で、人を殺めても法の裁きを逃れ続けてきた人間の狡猾さが3件目の殺人で鮮明に現れたのでは無いだろうか
そんな気分でむかえた市子の鼻歌をバックに流れるエンドクレジットに空恐ろしいものを感じた
今後、市子は新たな名前と戸籍を手に入れてケーキ屋さんになるのだろうか
家族団欒を手にする日が来るのだろうか
そのとき、我々はそれをよかったねと笑顔を送ることが正解なのだろうか、、
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