市子のレビュー・感想・評価
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市子、今どこにいる?
絶対に知られたくない過去を持つ市子。放置子、ヤングケアラー、母の恋人からの性的虐待、そして誰もが当たり前のように持っている戸籍が彼女にはない。
常識でははかれない歪んだ世界ゆえに起きた2件の殺人事件。
必死に過去を隠して手にした幸せ。
しかしそれすらも手放さなければならなかった。
彼女の母親から過去の話を聞いて義則が泣いたこと、母親が船上の義則に頭を下げ、彼がそれに応えたこと。市子がそれを知っていたなら最後の悲劇は起きなかったかもしれない。
市子のヒーローでありたかった北は市子の最後の望み、戸籍を彼女にプレゼントするために自殺希望者とともに海に沈んだのだろうか。戸籍を手にした市子はどこに向かっているのだろう。
市子を追い続けている刑事がなんとか市子にたどり着き、そして再び義則と市子が対面できることを望んでやまない。
義則と暮らした頃の市子の笑顔がもう一度見たい。
きっと明日はいい天気、そうあって欲しい。
市子には癒されたけど、ストーリーは家庭環境が辛すぎて精神を抉られる
市子(杉咲花)のビジュアルと喋り方が好きで魅入ってしまった。おかっぱのような特徴的な髪型も似合って可愛いし、ふだんは無表情で淡々としたトーンで喋るのに時折見せる笑顔でギャップにノックアウト。関西弁も萌えポイント。
長谷川と北が惚れた理由が分かるなー。すげー美獣って訳でもなく、特にわたしのタイプではないのに何故か惹かれてしまった。この役は杉咲花にしか出来ないと思う。
市子には癒されたけど、ストーリーは家庭環境が辛すぎて精神を抉られっぱなし。とくに市子が月子を殺すシーンは印象的だ。
「市子ありがとな」月子を殺した市子に放った母の台詞が重くて突き刺さる。その後何事もなかったようにお茶を出して鼻歌歌うのが異常。月子の目をじっと見つめながら呼吸器を外す市子も怖い。このシーンで尋常ではない親子関係なのだと確信した。
もはや面影のない市子一家の幸せそうな家族写真を見るとギャップで切なくなる。何が家庭を崩壊させたんだろう...。
無戸籍
法律の改正かな。
やっと今年令和6年4月1日から施行。
離婚後10ヶ月以内に出生した子でも
再婚相手の子と見なされるようになった。
しかし、市子が生まれた時は、前夫の子となり
前夫が拒否したら戸籍が無いことになるのか。
あとにできた月子が難病になり障害児と認定され、
就学できない身体を利用して市子がなりすました。
福祉課の小泉を利用して上手くごまかして来た。
小泉は母なつみの男だった。
月子の世話は大変だったのだろう。
ある日、市子が呼吸器を外した。生駒山に埋めた。
なつみは母親なのにありがとう、と言い鼻歌歌ってた。
埋めるのに小泉も加担したのか、
罪の意識で自堕落になり
市子にまで手を出すようになった。
怒りのあまり市子が小泉を刺し殺した。
一部始終見ていた北に手伝ってもらい
線路に寝かし電車に轢かせた。
長谷川と出会い3年暮らしたが、
婚姻届を出すとなり姿を消した。
北の元に身を寄せていたが、
警察と長谷川が来たので逃げた。
サイトで自殺願望者を募り北の家に来させる。
市子のいるところに北と自殺願望の女を来させた。
市子何人殺した?
妹、小泉、北、自殺願望者。
『火車』を思い出した。
自殺願望者の戸籍を手に入れ生きていくのだ。
再鑑賞して、
月子をkillした頃ぐらいから月子と名乗らなくなったのか⁉️最悪遺体が見つかるまで月子でいけたのに市子に戻ったのは、良心の呵責からか❓
また疑問なのは、見つかった遺体を警察は月子と断定したというニュースが流れたが、月子と照合できるデータなんてあるのか⁉️
見落としていたが、月子の病名は、筋ジストロフィーだった。シンママのなつみが仕事に行くので、市子が世話をする。観たシーン、オムツ替えていた。14,5 の少女があまり年の変わらない妹の下の世話、キツいと思う。
この病気で呼吸器を使い身動きできないのは、だいぶ末期に来ていたのだろう。
最初から気づいていたが、森永クン、目がパッチリして少し痩せていた。若々しくなっていた。
ふたりに幸あれ
市子を近くで見てきた人たちの多角的視点から、市子という人物について解き明かされていくかんじが面白かった。人間の多面性がよくわかるおはなし。
長谷川演じる若葉さんは、「長谷川は市子の過去を無理に知ろうとしない優しい人物ではなく、ずるくて弱い人間」と言っていた。市子がなにかを抱えているのはわかっていたけどそれを知って自分に受け止めきれるのか怖いから逃げてた。やさしさという鎧で自分を守って。人と一緒にいることって相手のいいところも悪いところも全部知って丸ごと受け止めてあげることじゃないか。みたいな、とっても深いことを言っていた...
伏線がたくさん貼ってあってミステリー要素も満載で面白い。そして人間物語としても深く重くのしかかってくる。ふつうの人間なら戸籍を持っているのは当たり前。でも彼女には生まれてから戸籍がなく、自分は何者なのかわからず後ろめたさを感じながらずっともがいていたんだと思う。長谷川と出会ってからやっと自分という輪郭がはっきりしてきたというか、生きる意味を見つけたんだと。長谷川と一緒に過ごす市子は生き生きしていた。
そんな中で婚約届を突き出されてうれしいことなのに悲しくて、市子のすべてを知ったあとにそのシーンを見ると胸が打たれる。出会ったときに「浴衣可愛い」といった市子のために浴衣を拵えてくれた長谷川。もう通すことのないとわかっていてお礼をいう市子。嬉しそうにその姿を優しいまなざしでみつめる長谷川。なにもかもせつなすぎる.....
杉咲花と若葉竜也の素晴らしいお芝居でふたりだけにしか出せない世界観がそこに生身の人間として存在していた。本当に素晴らしい
一番好きなシーンは、市子と長谷川の出会いからふたりで過ごしてきた何気ない日々の回想。あたたかい長谷川と笑ったり、時には喧嘩をし、寝顔を眺めるだけで幸せを感じ、同棲もはじめた、幸せな時間。が、いままでの重いテーマを吹き飛ばしてくれるくらいには輝いて見えた。
あんな長谷川みたいな人と、市子の立場で出会ったら間違いなく惚れるし、(そうじゃなくても惚れる)優しく、温厚で、プライドも高くなさそうで、好きにならないわけがない。この映画をみてからしばらくは長谷川ロスになっていた()
最後、冬子の戸籍に上乗りし、希望が見えてきたことをうたう「虹」をうたいながら、長谷川のもとに帰っていく市子であってほしいと願ってならない。
無戸籍児の壮絶な人生
プロポーズをした翌日、失踪した市子を探すために恋人の長谷川が市子の過去を追っていく。
市子に関わった人々から徐々に明かされていく市子の過去。
その最中警察も市子を探していることを知る。
失踪届を提出した際に担当した警察官にも協力を仰ぎ、市子の過去を深掘りしていく。
離婚後300日問題(詳しい知識を得た方がこの映画をより理解しやすいと思う)の為、無戸籍で出生した市子。
常人では想像もできないほど壮絶な人生を歩んでいた。
市子は自分の人生を得るために様々な罪を犯していく。
客観的に見れば悪でしかないことが、市子の立場を考えると「なんでこの行動を選んでしまったのかわかる気がする…」と思えてしまう。
色々と考えさせられる映画だった。
川辺市子の幸せの為に
同棲中の恋人・長谷川からプロポーズされた市子。涙を流して喜ぶ。
が、その翌日、市子は突然姿を消し…。
プロポーズした翌日にあっさりフラれた残念な青年…と一見思うが、そうでない事はすぐ察しが付く。
TVからのニュース。生駒山で発見された白骨体…。
それと市子に何の関係が…?
この時の長谷川はまだ知る由もなかった…。
長谷川を訪ねてきた市子を探しているという刑事・後藤。
市子を探したいという一心で、知っている事や情報を聞き出す。後藤に協力と同行。
市子の小学や中学時代の友人。高校時代の恋人、同級生。そして母。
証言から浮かび上がってきたのは、壮絶な半生と衝撃の事実であった…。
小学時代の友人の証言では…
同級生からからかわれていた発育のいいその友人を庇うなど、強気で優しかった。ケーキが好き。
奇妙な事に、市子ではなく“月子”と名乗っていた。
別の証言では…
小学時代と中学時代では雰囲気が変わっていた。急に成長したような…。
高校時代の恋人の証言。
交際する中で、キスやセックスなど男女の間…殊に身体の関係に於いて時折嫌悪感を示す事も。
高校時代の同級生の証言。
何処かミステリアス。それが好意を抱いていた自分を含め人を惹き付け魅せると共に、儚さも…。
長谷川も気付いた事を思い出す。
どんなに高熱を出しても、嫌いだからと病院に行く事を拒んだ。
得た証言や情報、調べて分かった事を繋ぎ合わせて徐々に判明した事は…
戸籍が無い市子。
母親のふしだらさ故、戸籍上存在していない。
“月子”と名乗って小学や中学に通っていたのは、妹の名と戸籍で。
その妹は難病で寝たきり。寝たきりになる前の妹・月子を知る同級生が月子と名乗っている市子に違和感を感じたのも無理ない。
戸籍無し。生活は困窮。妹の看病。スナックで働く母は男に依存で子育て放棄。母の恋人はしょっちゅう入り浸り。
高校時代の同級生はある場面を見てしまう。知ってしまう。
母の恋人から身体を強要されていた事を…。
あまりにも悲惨で過酷な過去…。
それを知られたくなくて姿を消したのか…?
いや、それらを知っている関係者もいるので、それは考えられない。
それに、姿を消した要因となったあのニュースとどういう…?
さらに事情を知る同級生と居所を突き止めた母親の証言は、追い打ちをかけるものであった…。
肉体関係を迫られた時、母の恋人を殺してしまう…。
呼吸器必須の妹の呼吸器を外し、死に至らしめ…。
二人の遺体を生駒山に…。
戸籍無し、壮絶な過去、そして殺人…。
人が生きていく中での負の全てを抱えたような市子。
無論、どんな理由あろうとも罪は許されない。ましてや殺人、しかも肉親。
市子一人だけが全て悪いのか…?
嫌悪すべき母の恋人は勿論、元凶である母親。看病と困窮で、娘は私たちの為に…なんて言ってたが、アンタにそれを言う資格あるのか。
市子を取り囲む全ての悪循環、劣悪環境、不幸な生い立ち…それらが市子を追い詰めた。苦しめた。
実際に罪を犯してしまった者、追い詰めた者、気付き手を差し伸べられなかった者…。皆、罪深い。
母親は言う。平凡で幸せな時もあった。家族中睦まじく。そこからの転落。
同級生が見たある時の市子。突然の雷雨。その豪雨の中、「全て流れてしまえ!」と嬉々として叫ぶその姿…。
この世や自分の人生を無くしてしまいたい…。
そんな心の声…。人を惹き付け魅せつつ、今にも壊れてしまいそうな儚さや脆さはそれ故か…。
安藤サクラや有村架純など時々映画の女神様に微笑まれたかのように快進撃続く女優いるが、今みた微笑まれたのは杉咲花だろう。
一躍脚光浴びた『湯を沸かすほどの熱い愛』の時から存在感や演技力は同世代屈指で、作品選びも安定。去年から今年にかけて『法廷遊戯』『52ヘルツのクジラたち』『朽ちないサクラ』と良質作続く。
中でも本作は指折り。『湯を沸かすほどの熱い愛』と並ぶ自身の代表作と言ってもいいほど。
不幸な役柄は多いが、決して二番煎じにはならない。さらに研きがかかった演技力は唯一無二。
ミステリアスでアンニュイな雰囲気、儚さ、悲しみ、苦しみ、そんな中で一時見せる“陽”の感情と表情。
佇まいも魅力も存在感も演技も、今杉咲花が魅せる事が出来る全て。頼もしく、圧巻の一言。
昨年度の国内主演女優賞は各映画賞によってバラつきあったが、独占すべきだった。
杉咲花の熱演も周りの助力あって。
俊英・戸田彬弘の演出力と脚本。『ある男』を彷彿させる題材だが、本作は本作ならではのオリジナリティーあり、ヒューマン・ミステリーとしても非常に面白い。
うだるような夏の暑さが作品雰囲気に一役買っている。
市子に好意を寄せ“手助け”した森永悠希が滲ませる哀れさ、宇野祥平の好助演、中村ゆりの毒親っぷり…。
そんな中、恋人役・若葉竜也の一途さに救われる。物語上の存在に於いても。
壮絶な過去。誰が彼女をこんな目に…?
罪を犯した。過酷な運命に翻弄されて。
それは許されない。
だからこんな私が幸せになっちゃいけない。
願っちゃいけないのか…?
幸せになっちゃいけないのか…?
長谷川との出会い。一緒に過ごした日々。そしてプロポーズ。
こんな私でも権利はある。
幸せになりたい。
幸せになったっていい。
流した涙はその表れ。
罪を償い、全ての苦しみから解放されたその日には、幸せになっていいんだよ。
市子は今何処に…?
再びTVからのニュース。そうでない事を。
川辺市子の幸せの為に。
見たあと疲れが。思ったこと、感想。
市子を見ていて不遇で環境の悪さとかをなんか可哀想やつらいって思ってみていたけど、鼻歌を聞いていると全然彼女の気持ちがわからないなと思った。
最初と最後の鼻歌では印象が違った。同じ場面だが最初は悲しい感じだと思った。最後は気分がよくて鼻歌歌ってると思った。
もちろん複雑で陽気とは違うけど、リラックスして歩いてるような感じ。
しては行けないことを躾けられるほど大人にみられてない市子は生きるためにしたことと割り切ってると思った。
成長とともに自然と常識は身についていってる。
高校のとき線路に死体を一緒に運んだ男子は気が滅入っていたが市子は切り替えてた。
妹の介助疲れで妹を殺すときも生存本能で仕方なかったと。
高校のときの恋人や今の恋人には悪い面を全く見せてなくて、大切な人には見られたくない。
高校のときの市子のストーカー男子のことはどうでもよくて扱いが全然違う。自分は好きじゃないけど相手は好いてくれててただ利用する。市子はちゃんと突き放してて、それでも来る彼を結局は利用するかたち。
自殺願望のある女性は市子に少し似ていて、自殺願望のある人ならいいかとなるのか利用する。
市子は殺人鬼とか快楽でやるわけではなくて、生きていくために仕方がなくなれば殺すことができる。
人殺しは絶対ダメがない。食べ物に困ってるから万引きするのを皆んな理解できると思うけど、その感じで殺人があると思った。
市子の母の内縁の夫?や高校のときのストーカー男子が嫌味で「悪魔」って言うけど、性欲に支配されて、下心で行動してたやつが偉そうに言えることは何もないとむかついた。
市子と違ってそこから離れることができる他人の男たちは関係をやめればいいだけ、見捨てるのがつらいかもしれないがこの不幸を耐えられない奴が依存になってる。
市子の周りの女性は嫌いだと思ったら離れてそれきりだし、ケーキ屋のキキちゃんはいい子で気になってるけど執着はしてこない。
女性の不幸には性がつきまとう。うんざり。
助けてくれるのは下心のあるやつばかり。
キキちゃんといたときはいい方に向かいそうだった。
戸籍や身分証明書などの社会のルールのために、人を殺すというルールに反してることをする。皮肉。不完全な世の中を感じた。生きるために人を殺すって究極で仕方ないこともあるかもしれない。
でも、社会のルールから外れてて書類のために殺さないといけなくなるのはつらいと思った。
途中で戸籍取るのを助けてくれる団体が出てきてよかった。そこに行き着くまでに後ろ暗いところができてる人も多くいるんだろう。
どうしたらいいかわからないけど、未成年はもっと早い段階でそんなに難しくなく手続きできたらいいと思った。一緒に暮らしてない親や親戚には未成年とはいえ情報を明かさないのを必須にして。
障害のある妹の介助・介護もヤングケアラーになってて、戸籍がもしあっても市子が疲れて殺すのは変わらないから、支援が必要だった。そういう助けが不十分なことの積み重ねが彼女の立場をなくした。
男性陣の配役、俳優がよかった。
市子はこういう人だって知った気になれなくて、杉咲さんもよかった。
ケーキが好きで屋台の焼きそばが好きでよその家のみそ汁の匂いが羨ましくて普通に暮らしたいだけで、無戸籍が生まれてからずっと付きまとってくるせいで幸せになるのが難しいつらさを思う。でもいくつかは戸籍ではなく貧しさのせい。
いろんな問題が入ってる話し。
ただ生きようとしてるのが伝わってくる。
月子が死んでなりすますことになったけど、やっぱり市子として行きたいと思ったのに、また身分を手に入れるために自殺幇助をして誰かになる。
また市子じゃなくなるの悲しい。
それまでを捨てたんだな。仕方なく。
あの鼻歌、月子を殺した日に台所で母親が鼻歌してたもので最後の場面と状況が被る。
想像は超えてこない
まず最初の感想は、2023年の話はないんかい、というツッコミ。2015年から始まるので、最終的には2023年の市子が見られるのだろうとという期待と逆算の姿勢で見てたぶん、かなり肩透かしを食らった。
話としては市子の過去を追っていくという内容であるが、それぞれのエピソードも全て予想の範囲内。
役者陣の演技力のおかげで見られない作品ではないが、内容は平凡。
※細かいこと点をもう一つ。最序盤に出てくる白骨化遺体という言葉が気になったが、今では身元不明でも遺体という言葉を使うそう。でも、2015年時はどうだったんでしょうね?
障害者の月子と健常者の「月子」
<映画のことば>
それがどうも…。
存在せえへんのですよ。
月子を捨てて、本来の市子を、いわば「取り戻す」ためには、悪魔にでもなるということでしょうか。
要するに、本作の言わんとするところは。
生まれた時から「当たり前のように」戸籍があり、その戸籍を使って(少なくとも法律面では)「当たり前のように」自分というものの存在を同定できる立場にいる評論子らからしてみれば、その苦悩は、容易には推し量ることができないものがあるのかも知れません。
約一億人も住んでいで、そして、これほど完備された戸籍制度を持っている日本は、世界的には、稀有な国と聞いたことがあります。
(アメリカには、日本のように出生から死亡までを一貫して把握できる戸籍制度はなく、申告によって、出生証明書と死亡証明書が取れるだけで、両者の間には関連性(同一人性)が必ずしも担保されていないと聞いたことがあります。(それゆえ、他人への成り済ましが、日本よりは容易とか。)
プリントされてしまえばほんの数枚の紙切れなのですけれども。
しかし「人が無戸籍でいること」のその重さに、慄然とするとともに、本当に胸が痛みます。
そのことに改めて思いが至ったということでは、佳作と評価して良いのではないかと思います。
評論子は。
(追記)
市子の無戸籍も、言ってしまえば今の法律の結果と言うことなのですけれども。
そういう市子のような無戸籍児が出てくる原因は、まだ前婚が解消にならないうちから他と異性関係を結んだという結果にも他なりません。
その民法の嫡出推定規定「だけ」が果たして悪者なのか。
そのへんの議論をちゃんと突き詰めないと、いつまで経っても、法改正の動きは出てこない(出てきても、「子の身分関係の安定」とか「戸籍による身分関係の確実な公証」という建前に、結局は潰されてしまう)ように、評論子には思われてなりません。
(なお、この制度の合理性ということでは、最高裁が平成26年に判断し、科学的な父性の正確性よりも、子の身分関係の安定を優先しようとする制度で、不合理ではない、としていますが、3対2の、いわばギリギリ多数での判決(多数意見)で、誰かあと一人の裁判官が反対に回っていたら、結論が違っていたというケースでしたけれども。)
(追記)
本作の全編を通じて「罵(ののし)り合うシーン」「言い争うシーン」がやたらと多かったというのが、本作を観終わっての、実は第一印象でした。
(追記)
長谷川のプロポーズは、心底では嬉しかったのだと信じたいところではあります。
けれども、彼女の(突然の?)失踪は、彼のそのプロポーズが「ダメ押し」になったことも、また事実だろうとは思います。
評論子は。
ましてや生駒山中での白骨化遺体発見のニュースで、グイグイと背中を押されていた、正にその状況下で。
結局は、長谷川のプロポーズが嬉しければ嬉しいほど、市子には、その嬉しさが「重た過ぎた」ということでしょう。
そう思うと、胸の痛さということでは、本当にやりきれない思いも禁じ得ません。
(追記)
サイトの解説を読む限り、どうやら『名前』は、観たことがありそうなのですけれども(心許ないことで、ゴメンナサイ)。
その一方で、また他の作品を見比べてみたいと思える監督さんに出会えたことは、一映画ファンとしては、嬉しくも思います。
個人的には秀作と思われながら、傑作とは思えなかった理由とは
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
※重要作品なのにレビュー漏れしていて今更ですが‥
この映画『市子』は題材、内容、俳優陣からしても傑作になり得た作品だと思われていました。
しかしながら個人的には以下理由によって傑作には届いてない感想を持ちました。
それは、
A.市子とは何者なのか?という、長谷川義則(若葉竜也さん)の現在から過去にさかのぼる視点
B.市子がどんな人生を生きて来たのか?という、川辺市子(杉咲花さん)の過去から現在に向かう視点
がそれぞれ断片的構成で描かれていた所にあると思われました。
A.の市子とは何者か?の視点で描かれれば、ミステリー度合いが増します。
B.の市子の生い立ちを幼少期から見せて行けば、私小説度合いが増します。
それぞれの描き方は、それぞれで映画的な満足度が得られたと思われます。
しかし今作の映画『市子』は、A.のミステリー度、B.の私小説度、の両方を取ろうとして、個人的にはどちらも中途半端に切断される描かれ方になっていると思われました。
個人的には、最後の長谷川義則と市子の母・川辺なつみ(中村ゆりさん)との漁港での会話のシーンでそこまでの感銘はやって来ませんでした。
それは、長谷川義則が主体となって初めから最後まで市子の生涯をさかのぼって解明したわけでなく、一方で、私小説的な市子の生い立ちも長谷川義則の真相究明の場面によってぶつ切りになっていた、のが理由だと思われました。
ドラマ「アンメット」でも分かるように、杉咲花さん若葉竜也さんの演技の素晴らしさはこれまでのそれぞれの出演作品での演技を観ても、今さら言う必要はないと思われます。
また題材的にも今作の映画『市子』は傑作になり得る作品だったと思われます。
個人的には、もちろん多くの人が評価しているのは理解するのですが、今作はミステリーとしても私小説としても、欲張った構成によってそれぞれ中途半端となり、傑作になり得なかった作品だと僭越ながら思われました。
杉咲花さんは市子でしたね。
3年付き合った彼女にプロポーズをした翌日に主人公の市子が失踪する。すると刑事が市子の捜査をしていると、また市子と言う人物は存在し無い人物だと伝えられ恋人の長谷川は途方に暮れる。行方を追う長谷川は市子の壮絶な人生を知る事になる…
市子を演じた杉咲花さんは最高でした。
関西弁で『好き』とあの瞳で言われるとドキドキしますよねー。
衝撃と言うか市子のキャラクターを杉咲さんが演じる事で市子に同情するか、嫌悪感を抱くか?
別れるでしょうねー。
観ていて感情が揺さぶられ、面白かったです。
無戸籍であり、月子と名乗ったり市子と名乗ったりと市子に関わった人物が登場しストーリーが過去と現在が交差し徐々に市子の人物像が浮き彫りになっていきます。
市子は小学生の頃の頃から大人の目線と言うか、開き直った生意気な子供に見えます。
もし自分が同級生なら近づかないかなー!
でもきっと男性には惹かれる魅力があり、市子はその魅力を自分でも気付いていた?女を武器にする悪魔的な存在に見える。
全編通して見て、親の無責任が故に生まれた市子。
隠された存在にされる事で徐々に歪んで行ったのか?
寝たきりの月子は自分と母親に取って邪魔な存在?
もしくは月子を母親の為に消す行動に至ったのか?
もしくは母親への復讐心があっての行動か?
いや月子の事を思っての行動か?
その心理は分かりません。しかし市子よそれはダメなやつだとがっかりさせられる。
母親の『ありがとう』と言う言葉も、ゾッとするし壊れているとしか言いようが無い。
北君もとんでもない事に巻き込まれている。少し気持ち悪い存在で、ストーカー気質で心底市子に惚れていた。しかし市子にとっては一番の理解者で助けてくれる存在だがラストまで利用されてあーそうなるのーと言う結末にやっぱり邪魔な存在だったのかと思ってしまう。
ここまで来ると、確かに親の責任、無戸籍といろんな原因はあるが、市子の存在が完全なサイコパスにも写ってしまう。終盤になると背景にある問題が薄れてきてしまう。
逃げられない過去と現実に生きる市子は悪魔にも映るし、ただ純粋に普通に行きたかっただけと健気に映る杉咲花さんの演技は素晴らしかった。
本当に可哀想なのは巻き込まれた長谷川君で、もしかしたら市子に…と思ってしまう。
タイトルの意味
『市子』というタイトルは、彼女の周囲の人から、特に恋人の長谷川からの視点で、彼女に呼びかけ、彼女を呼び求めている「市子」なのだと途中までは思っていたけれど、
鑑賞後、これは彼女が、自分は「市子」なのだというアイデンティティ、「市子」であることを求めているという意味なのかなと考え直しました。
「市子」であるために彼女が必死にやってきたこと。そこにはどうしても罪がまとわりついてしまって。そのせいで、やっと手に入れた幸せすら自ら手放さないといけなくなって、さらに重ねられてしまう罪。
そんな虚しくやるせない感傷で、鑑賞後しばらくぼんやりしてしまいました。
心をえぐられました
下知識無し、杉咲花が影のある役をやるっぽいというだけで視聴。
心がえぐられました。
Eテレで無戸籍の人の話やってましたが、無戸籍というだけで人生超ハードモードになるのは想像に難くない。この映画は、さらにヤングケアラー、殺人事件が絡み、観ているだけで苦しくなりました。
こんな役、どうやって演じるのだろうと思いますが、杉咲花が見事に演じます。恐ろしい。かわいいはずの杉咲花が、時にかわいく、時に恐ろしい表情を見せつける。圧巻です。
色々と考えさせられますが、心が抉られたので☆マイナス1個です。
杉咲花の目が印象に残った
月子を殺めた後の市子の目が一番印象に残った映画。後先考えず市子産んで無戸籍にしたり、月子として学校に行かせたり、挙句の果ては市子が月子を殺めてしまったのを見て、ありがとう、ってどこまでも母親がクズすぎる。
気分の悪くなる内容だったけど、杉咲花も若葉竜也も演技が素晴らしく作品としてはよかった。
果たして彼女は救われたいのか。杉咲花さんのお芝居の凄み。
この作品は、戸籍がないことで様々な事に縛られながらもこの世を渡り歩かなければならない女性のお話です。そして結果的に彼女と関わった男性達は次々に市子という人間に翻弄されていきます。
辛い境遇にある彼女ですが、見方によってはサイコパスな作品とも言えるでしょう。
市子は男性達の人生を狂わせ、自分が不利な状況下に置かれると何事もなかったかのように去ってしまうのだから。
ただこの作品において市子という女性が、幼少期から長く続く辛い現状から救われたいという風には見えませんでした。
手を差し伸べてくれる男性達はたくさんいたけれど、決して誰かの手を取ることはなかったように思います。
ふらりと生きていけるというような彼女の気持ちが透けて見えるような感じがしました。
幸せって何なんでしょうね、って考えさせられる作品でした。
難病の子供について、ちゃんと取材してから作ってほしい
杉咲花さんの演技が上手で見入っておりましたら、月子さんの亡くなるシーンで猛烈に腹が立ちました。
介護疲れでお子さんを殺してしまう事件、今の日本に多いですか?
難病の子供や重症心身障害児など数は増えている(医学の進歩で当事者の死亡率は劇的に下がっています)のに、そんな話は聞かないでしょう?
日本では地域自治体の福祉課や保健所、病院、訪問看護ステーション、ヘルパーさん、ボランティアさんなどが皆で見守り、地域で暮らせるよう体制を整えています。今は医療的ケアがあっても特別支援学校へ通学できます。
お母さんがシングルマザーであれば各種手当も含めてちゃんと暮らしていける給付もあります。家庭内の介護が難しいなら優先的に施設へ入所させてもらえます。
そもそも人工呼吸器は裏でどうこうして手に入れらるものではありません。
たくさんの人達が苦労して難病の子供たちが家で暮らしていけるように政治に働きかけて少しずつ支援体制を作ってきたのです。
一生懸命生きている子供をみんなで支えています。医療看護行政の支援無しには難病の子は自宅で生きていくことはできません。「誰にも知られずに…」って無理です。
ご都合主義に使わないでいただきたい。
また、小学校入学時に年上の子が妹の名前で学校へ行く?
小学校低学年は一番成長する頃です。永久歯に生え変わるころで年齢詐称が一番難しいころです。ありえません。入学時検診で発覚するでしょう。
細かいことをぜんぶ大目に見たとしても、お母さんが妹を殺した姉に「ありがとうな」とは絶対に言いません。難病の子供の介護は大変だけど、とてつもなく可愛いそうです。
亡くなっていたら半狂乱になってしまうと思います。
劇場の芝居なら演劇好きな人だけが見に行って、それでいい。
「フィクションにそんな目くじら立てるな!」と自分でも思いますが、外国の映画祭にたくさん出品されているので、日本の医療福祉体制を誤解されては困ります。
切ない
まずは杉咲花の圧倒的演技力、存在感、大好き。
話は切なすぎる。
途中ちょっと間延びしすぎ。最初はすごく面白そう!と思ったけど。そしてあーこれこのままふんわり終わっちゃうやつやーで、本当に終わってしまった。わかるよ、そこで終わりたいのは。しかしスッキリはしない。
あの必死な彼氏と幸せに暮らしてほしかったが、そうはいかないな。
心中、あのストーカーがやったん?そこがよくわからなかった。あの子の戸籍をもらいたかったんだろうけど、そんなにうまくいくか??
うーん
演技はとても良かったです。
ただ、話の流れに無理があるかなーと。
警察はほぼ何もしていないし、
警察よりもただの一般人(市子の婚約者)が
情報も少ない中、関係者を先に見つけ出せるのか?
というところに疑問。
市子の都合のいいようにストーリーが進んでいって
リアリティがあまり感じられませんでした。
最後もここで終わるのかーと腑に落ちず
モヤモヤが残りました。
嘘っぽくてダメだった…。
蒸発癖のある女の物語かなと思って観ていました。
冒頭、女性の白骨死体の事件でニュースになっていた生駒山の麓で生まれ育った僕は、まさに実家での暮らしを思い巡らせながらこの作品を眺めていた。
(そういえば、行方不明になる女いたなぁ……)
と、恋愛して幸せそうになると、その幸せに耐えきれず夜逃げする女。
僕の母親の親友にそんな雰囲気のした女性がいた。彼女もその傾向が強く、よく家に来ていては母に恋愛の相談をしていた。その女性の情緒不安定さと似ているなぁと思い返す。
ちなみに僕の中学時代の初恋の女の子も、卒業したあとに失踪していた。噂では男と駆け落ちしたとか、バイト先のお金を盗んで逃走とか、いろいろ言われていたが……真相はいまだに不明である。
そういう失踪ばかりする女の話かと興味を持って観ることにした。
しかし見ているうちに、どうやら戸籍がなさそうというのが判明。
密入国? 移民?
そっち方面のダークな話になるのかと身を乗り出した。
さらに、どうやら人を殺していそう……。
いろいろハードな過去が揃ってきたところで、嘘くささが増してきた。
市子が都合よく生き抜けているのだ。
そんな簡単じゃないだろう。
一文無しで逃げられるわけがない。きっとホームレスに陥ってしまうだろう。たいがいドラマだと、そこでお節介な人間が出てきて、普通の暮らしに戻れちゃうんだけど……世の中、そんなにお節介な人とは簡単に出会わないよ。出会ってもコミュ障だと無視されるだけ。
だからこそ、そこをどう主人公は乗り切って、助けてもらえるようになるのか。
ここに現実感があると面白くなるのですよ。
リアリティを積み重ねていって、はじめて人は市子を実在している人のように受け止めて感情移入できるのだ。
有吉佐和子著の「悪女について」もこの映画と同じように、ひとりの女性の生き様について、いろんな人間が証言していくスタイルの小説だったが、悪女と呼ばれる主人公と証言者たちとの出会いや触れ合いのエピソードの数々にリアリティがあったので、徐々に主人公の謎めいた女性への興味は増し、感情移入の高まりもおぼえた快作だった。
僕としては、市子はコミュ障だけど、何とか人に助けて貰おう、寄生しようと消極的ながらアプローチしていく。だけどそれを気味悪がって逃げていく人もいる。そんな中で市子の張った蜘蛛の巣みたいな罠に引っかかって、お節介で市子を助ける人も出てくる。だけどお節介が過ぎて、それが苦痛になると市子は逃げ出す。それでもお節介な人間が追いかけてきて、市子を連れ戻そうとする。そこに支配される恐怖を感じて、その助けてくれた人を殺してしまうとか。
助けてくれる人を次々に乗り換えていく、ヤドカリのような生活……その助けてくれる人の捕まえ方、その人に感謝していたはずなのに反動で残酷になるサイコパス的な猟奇性と二面性。また市子を犯人として追っている警察の網からの逃れ方。そういうサスペンスを見たかった。
全体的に踏み込みが甘くて、物足りなさがあり、市子の凄味が弱く感じられた。
別に自分に恋した男たちを次々に殺していく話でもいいけど……現代のメルヘンみたいにね。
というわけで……何となく今回の映画は、観客である僕がほとんど傍観者のようにポカーンと最後まで眺めてしまい、登場人物の誰にも感情移入できなかったのが残念な出来映えでありました……。
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