市子のレビュー・感想・評価
全353件中、121~140件目を表示
相手を諦めないということ
上映最終日の滑り込み。
観てよかったと心から思う。
BGMもほとんどなく淡々と進んでいく時間。恐怖や哀傷、さまざまな痛い想いをする映画だった。
時系列をわかりやすくさせるためでもある日時について、迫真の演技力により私自身が何かの記録を再生しているようだった。夏のじめっとした空気がより一層生々しさを感じさせた。
私は、助ける・守るといった無責任なことを口に出せる人間ではない。立場が、生まれが、境遇が違うから、いろんな理由を探して踏み込むことをやめてしまう。
しかし、若葉さんを観て共に過ごした幸せの時間があるならば理由などどうだっていいのだと思えた。
演者は素晴らしいのだが・・・
願ったわけではない環境や背負わざるを得なかった
深い業がつくる闇に翻弄される人生が描かれる
わけですが・・・。
なんだろうな、全体的に
「こういう境遇だからこうなるよね」
「こういう背景があるからこうなっちゃうよね」
と少々乱暴な展開と描かれ方をしている気がしました。
夢見つけたり、小さな幸せを見つけそうになるのも
全て梯子を外すために用意したものなんじゃ?って
思っちゃいたくなります。
市子の気持ちをもっともっと丁寧に描いてほしかった。
彼女の葛藤、心の揺らぎはもっともっと表現できた
のでは?最後まで市子の気持ちに寄り添えなかった。
演出上の問題というか、僕の理解力が乏しく
わかることができなかったのが、市子の決定的な行動が
いつ行われたことなのか?がわからなかったのです。
演出上、時間軸や視点をころころ変えているのですが、
一番のキーポイントである市子の行動が何歳の時だったのか
がよくわからないので、物語のピースがばらけたままで
終わっちゃったんですよね。
演者さんたちが熱演されていたので非常に残念な
一作でした。
あと、答え合わせ的なエピローグはいらなかったなぁ。
市子という名の女の子は悪魔なのか?
この映画は、スタートシーンから最後に繋がっています。
彼女の鼻歌を歌いながらスキップするシーンが記憶に残ります。
彼女が生きて来た、人生は全くの悪なのか?彼女が魔性なのか?
それだけとは、思えませんでした。
どんどん、”市子”に吸い込まれそうになりました。
【”最高や‼全部流れてしまえ!と驟雨の中、彼女は叫んだ。どのような環境下でも自分の存在と向き合い続け、世間的、法的に存在を認められない女性のキツイ生き様を見事な構成で描いた作品。】
ー ご存じの通り、今作は戸田監督が率いる劇団が演じた「川辺市子のために」を底辺としている。-
■市子(杉咲花)は、3年間一緒に暮らして来た長谷川(若葉竜也)からポロポーズをされた翌日に失踪する。
長谷川は市子の事を何も知らなかった事に気付き、刑事の後藤(宇野祥平)を含め、市子を知る人達の証言を集める中で、彼女の壮絶な過去を知るのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・観ていて、キツイ映画である。楽しい気分にはならない。
・市子の失踪の理由はTVから流れた東大阪市生駒山で白骨化した遺体が見つかったというニュースである。
■市子は母なつみ(中村ゆり)となつみの恋人(渡辺大知)と妹で難病筋ジストロフィー症を患っている月子と徳島で幸せそうに住んでいた事が、市子が肌身離さずにいた写真を見れば分かる。
だが、時は残酷でなつみの恋人は市子に手を出す様になり、市子も月子の看病に疲れ月子を殺してしまう。(直接的な描写はない。)そして、月子を生駒山になつみの恋人と共に埋めるのである。(ここも、直接的な描写はない。)
・今作を見ると、300日問題により無戸籍児になった過程は、鑑賞側の推測に任されるが、市子が病気になっても”病気は嫌い。”と言い絶対に病院に行かないシーンや、市子のバックの中にあった時子の保険証を長谷川が見つけるシーンから容易に推測できる。
ー 故に、市子は友人のキキ(中田青渚)に”私は、夢を持っちゃいけないんだよ。”と言うのである。-
・市子が、時子に成りすまして生きて来た半生が明らかになる過程は、サスペンス要素もタップリである。
<それにしても、市子を演じた杉咲花の悪魔的と言っても良いほどの虚無感漂う姿は凄い。
こんな、杉咲花は見た事が無い。
市子は、自殺願望のある首筋に火傷の跡がある女(石川琉華)と、一時期はなつみの恋人に乱暴されそうになり、その男を刺した市子を匿ってくれた北(森永悠希)を自動車に乗せて断崖から突き落として殺すのである。
彼女の”自分の人生を歩みたい。”と言う思いがあのような行為をさせたのだろうか。
何とも、切ない作品である。>
<2024年2月18日 刈谷日劇にて鑑賞>
生きることへの渇望
市子は市子として生きたかったんだよね。
人は簡単には変われないとも思うし、二面性・三面性もあるとも思う(家族の前での自分、友達の前での自分、職場での自分…)。本当の「市子」はどの時だったのか?を考えてしまった。
幼き頃の家族写真に写る市子は間違いなく市子であった。そこから20年弱の時を経て、現在28歳の市子が市子として生きていけることを望みたかった。
しかし、物語終盤、彼女に想いを寄せ彼女を助けたかった高校の同級生と、自殺願望のある女性が乗った車が海に沈む。(何らかの方法で市子が車を沈めた、または死を仕向けたと思われる。)
誰かの死と引き換えにしなければ身分さえ手に入れられないという闇。でも、そこまでしても市子は生きたかったのだと。
独りよがりの生への渇望とも思えるが、オープニングとエンディングで市子が鼻歌で歌っていた童謡「にじ」。自ら殺めてしまった障がいをもつ妹の寝床の天井に描かれていたのも虹。それが繋がった瞬間、自分のためだけじゃない、死んだ妹の分も生きたいのではないかと思った。
市子の母親もにじを口ずさんでいた。徳島を訪れた長谷川とのシーンからも分かるように、愛する娘を殺したくなんてなかったはず。でも、介護に疲弊しきっていた。
月子が息を引き取ったあと、母親が市子に掛けた「ありがとう」が何とも重く切ない。母親のためというのもあったのだろうか。月子の呼吸器を外す前、月子の身体を拭いた後「暑いな」と声をかける市子の顔には滴るほどの汗。
劇中はどこをとっても夏のシーンなのだが、この汗が、生きることへの苦しみも表現しているように思えた。月子をこの苦しみから解放してあげたかったと同時に、自分への解放でもあったのだろうか。
同棲する長谷川の家で作ったクリームシチューを少しずつ頬張る市子。小学校の同級生梢の家で出されたショートケーキを上品に食べる市子。(大人になってから下宿先のキキがくれたケーキを食べる時もとても丁寧。)長谷川と初めて会った場面で、縁日の焼きそばを静かに口に運ぶ市子。
それとは対照的に、自分の弁当を溢され「夕飯どうしてくれんねん」と激昂する小学生の市子。涼しい顔して万引きをする市子。高校の時の恋人宗介との熱い口付け。夕立の雨に打たれながら「最高や」と叫ぶ市子(乾ききった市子への潤い)。
冒頭にも書いたが、どれが本当の市子なのだ?となる。観終わって思うのは、長谷川の前での彼女は取り繕った市子なのでは?ということ。それとも、本当の市子として生きられていると感じていた矢先、長谷川からのプロポーズによって自身の身分の闇に改めて触れてしまったのか。
母親が働くスナックで、市子ではなく月子と呼ばれているシーンで、市子は戸籍がないのでは?と推測し、婚姻届を拒んで失踪した理由とも繋がった。でもここではまだ月子との関係がわからない。
そして、刑事さんが長谷川の家を訪れたシーンで市子は87年生まれという情報が出てからは、自分より3歳年上ね、という視点で観ていた(私自身が90年生まれ)。しかし、高校生のシーンで記された西暦におや?と思う。ゆうに高校生である年齢を越えているはずでは…。一瞬、計算を間違えたかと思ったが、月子のことを含めて後にそういうことだったのか!という伏線回収に繋がった。構成が秀逸である。
現在も過去も、描かれているのは夏。その描写がじわじわと身体に入り込んでくるようで、観終わったあととても喉が渇いていた。乾くということは、潤いを求めて生きているということだ。
かわいければ何でもOKという者も一定数いるということ
メンヘラ女とそれを取り巻く者の話。サスペンス。
雰囲気表現のみで完結するため物足りなさが残る。
良い点
・演技
悪い点
・申し訳程度に年月が表示されるが、時系列が分かりにくい。
・髪がやや薄い
その他点
・その後法廷で遊ぶ
生い立ちが分かったあとの絶望が…
いわゆる失踪した人が正体不明の謎の人だったという展開。
映画ではままあるパターンではあるが、個人的には同様の映画の中で今作が一番好きかもしれない。正体を隠すならこれぐらい激重の人生じゃないとね…
市子の行動の謎が関係者を通じて、徐々に明らかになる展開がうまかった。
終盤、車から発見された二人の遺体とか、月子とのやり取りとか、その辺りはもっと見たかったな。
登場人物がリアルに描写されていて、特に北君の親切ウザい感じは秀逸だった。市子の北君へのあしらい方もリアル(笑)
最終的に明るい展望のないまま終わるのも、この作品に合っていると思う。
最後は市子ーーー!って叫びたい。
余韻が凄い。
「傑作の中の傑作」
今年15本目。
こう言う作品見ると本当に映画好きで良かったなあと。それと共に杉咲花、若葉竜也、森永悠希がこんな素晴らしい演技しているのだから自分も何かできないかなと。昨年12月の前澤友作さんの「僕が宇宙に行った理由」でもあったように身近な事から大切にしたい。
ゆっくり流れる作品がお気に入りでその2時間映画に没入しているのが心地いい。サスペンスタッチで謎解きの感じがいい。杉咲花さんは「メアリと魔女の花」の時からずっと好きで志尊淳さんとの新作も楽しみ。
高校の時に付き合ってた彼にも、長谷川くんにも、市子は自分の秘密をひ...
高校の時に付き合ってた彼にも、長谷川くんにも、市子は自分の秘密をひた隠しにする。
背負っているものを横に置いて、普通の、一人の女の子として、恋をしていたんだろうな。
鼻歌で歌われるのが印象的な『にじ』
きみのきみの気分も晴れて
…
きっと明日はいい天気
犯した罪(動機がだんだん軽薄になっている気がした)を抱えながら、それでも本当にいい天気の明日が市子にくることを、願ってやまない。
ファムファタール。
今年初の映画館での鑑賞作品。池袋で映画を見るのは恐らく50年ぶりか?映画館の入っているロサ会館という建物は建物全体が昭和でびっくりした。作品は兎に角悲しい。国籍の無い子供の話を何度かメディアで耳にしたことはあるが本作もそれがメインテーマ。僕は関西弁を話す女性と付き合ったことはないが、長谷川(市子のフィアンセ)に感情移入してしまった。彼の演技は実に良かった。可哀想な環境とはいえ実に逞しいファムファタールを完璧に演じている。北(高校の同級生)は幸せだったと思う、彼女のヒーローになるという目的を果たしたのだから。
散漫
予告編はかなり既視感のあるものだったが、
だからこそどう落とすのか気になって足を運んだ。
だが、早々にほぼ結論ありきでサスペンス性は乏しく、
想定を超えるような展開はほぼなかった。
また、各々のエピソードに深みがなく、
十分に咀嚼しないままで回収されずモヤモヤが残った。
ラストも然り、こういうのがゲージツなのだろうか。
さらには杉咲花の熱演には魅入られたが、
違和感や稚拙さを感じてしまう共演者も散見され、
映画に没入できない要因のひとつとなった。
これらが相俟って少々ウトウトしてしまう場面もあった。
映画とは関係ないが、
派手さのない作品のせいか観客がすべて中高年のお一人様だった。
整然と適度な間隔を空けて席を取り、
上映中はもちろんその前後もほぼ余計な物音はなく、
エンドロールが終わって明るくなるまで誰一人席を立たなかった。
実に理想的で快適な空間だった。
観賞者たるものかくありたいものよと映画より感銘を受けた。
怖くて不気味な映画
もっとハッピーな映画かと思ったけど
なんか次どうなるのか?どんなシーンがでるか、おそるおそる見た感じ。
杉咲花はいままで可愛らしいそんな役しか見てなかったので、ちょっと怖かった。
ただ、あっというまに、次どうなるかって見ているうちに終わってしまった。
最近ではないタイプの映画だった
昔のATGを好きだった人には嵌る作品
自主映画に近い制作スタイルなのが成功の要因。監督が脚本演出編集など全てをこなして作り上げた。まぁ〜誰もがこんな風に出来たら良いなぁ〜と思う映画作りですが、それを成功させる説得力のある映画は滅多にありません。
杉咲花の演技はATG映画「もう頬づえはつかない」の桃井かおりを彷彿させる演技でした。
元は2015年の演劇だと言うことで監督としての真っ直ぐな取り組みが成功させてるのでしょう。
市子が悲しくもたくましく、なんだか惹かれる存在で印象に残るキャラク...
市子が悲しくもたくましく、なんだか惹かれる存在で印象に残るキャラクターだったなと思う。ちょっと男目線でみると女々しい人達が多めで、もっと市子に負けない人も出てきて欲しかった。
ストーカーとは何か
2023年。戸田彬弘監督。結婚を決めた翌日に失踪した女性を巡り、婚約者の男がその行方を追いながら過去の事実に迫っていく、という話。離婚後300日問題(無戸籍児問題)と難病児介護問題を合わせた社会派ドラマで、「実は二人だった」型のミステリー仕立て。
気になったのは作中に出てくるストーカー。高校時代から女性を想い、殺人事件にまでかかわる男は「俺だけがお前を守れる」というあたりで支配的指向の持ち主であり、助けること=自分のものにすること、という思考で女性を執拗に追いかける。一方で、婚約者の男も警察と駆け引きまでして女性を追いかける。たしかに、支配的指向があるわけではなく、助けること=彼女に生きてほしい、という思考であるが、3年間一緒にいながら彼女のことを何も理解していなかった自分の過去に向き合うことである。ここにおいて彼女は彼の思考の手段であり、ネタである。こういう考えで追いかけることはストーカーとは言わないのだろうか、という疑問がふとわいた。
演者やそのパフォーマンスはいいけれど…
内容そのものが、ちょっと…ダメでした。時を交錯させて、ときに混乱させるような巧みな構成なんかも面白いなぁと思いましたが、味噌汁のにおい?とか、ガラケーの持ち方・・・とか、たばこ?とか、自殺志願?とか、スルーしてもいいような細かなところが気になってしまった気がします。結構些末な事柄でも気になるところが多ければ本筋にも大きく影響して来るものですよね。確かに背後についてある事柄は気になりましたが、物語の結果を求めたいような作品ではないと勝手に感じ取ってしまったので、流れを妨げるような気になる演出がまさに気になりました。
全353件中、121~140件目を表示