市子のレビュー・感想・評価
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えげつない
市子、えげつない。。。
環境が生み出したのか、それとも持って生まれたものなのか。
あるいはちょっとした要因であんな風になってしまう凶暴性を誰しも持っているのか。
杉咲花ちゃんの少女感と中身のえげつなさのギャップが怖さを倍増させてくる。
終始市子は驚くほど無邪気で利己的。もはやサイコパス。
バレたっていいから市子として生きていきたいと言っていたけど、結局逆戻りしてしまったのは長谷川君との生活が幸せすぎたから?
戸籍がなくて結婚できなかったから、やっぱり戸籍持って、次の人とはちゃんと幸せになりたいなということ??
そうだとしたら、サイコパス界の頂点かもしれない。。。
きっと明日はいい天気
関係者の証言からある人物の生涯を炙り出そうというのは「嫌われ松子の一生」、身分を偽っていたパートナーというのは「ある男」あるいは戸田監督自身の作品である「名前」。ミステリで言えば宮部みゆきの「火車」もそうだし、アイデンティティの揺らぎという意味では、安部公房やフィリップ・K・ディックの一連の著作もそうだ。つまり、既視感を覚えそうな要素満載なのである。しかし、観る者はそんなことは気にせずストーリーに引き込まれてしまう。これは無〇〇という重いテーマを扱っていることと、杉咲花の熱演に負うところが大きいだろう。
詳しく書くとネタバレになってしまうので、印象に残ったシーンのみ幾つか挙げてみる。
まず、友人に「花、好きなん?」と訊かれた市子の「水あげへんと枯れるから好き」という答え。人の手を借りなくては生きていけない花。市子は決して花が嫌いなわけではなかったのだ。その意味に気づくと胸が締めつけられそうになる。
もう一つは、フェリーで帰る長谷川に、市子の母親が深々とお辞儀をするシーン。長谷川は確かに市子のことを何も知らなかった。しかし、彼女の存在を認めてくれた。母親として、そのことに対する感謝の念なのだろう。
そして最も心に残ったのは、童謡の「にじ」。「きっと明日はいい天気」と歌詞にあるこの歌を、市子は冒頭と最後に鼻歌で歌う(母親も口ずさんでいたことが後でわかる)。高校時代の市子がずぶ濡れになるシーンがあるが、水が辛い過去を洗い流すメタファーだとすると、虹は未来への希望。ラストの海にかかる虹の暗示に救われるような思いがした。
確かに市子の行為は、倫理上正しいものではない。勝ち逃げのような狡い面もある。しかし彼女の出自や境遇を考えた時、誰が彼女を指弾できるのか。そして、誰のせいで彼女はこのような壮絶な人生を歩まなければならなかったのか。観終わった後、重い問いを突きつけられたような気になった。
何とも言えない
杉咲花の凶暴性
2021年公開の99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIEを鑑賞して以降、杉咲花の出演する作品をほとんど観ていない。
この作品での杉咲花は愛嬌のあるコメディリリーフとして抜群の存在感だった。
劇団チーズtheaterの舞台「川辺市子のために」を、主宰者の戸田彬弘自らが監督し、杉咲花を主演に迎えた本作「市子」。
たかだか2、3年の間に彼女は一体どんな経験を積んだのだろうか。
もはや何の参考にもならないが、外見こそ刑事専門弁護士の頃とちっとも変わっていないように見えるし、むしろ本作では女子高生時分をそのまま演じている。
誤解を恐れずに言うと、例えば松本まりかのような俳優が出演する作品がある場合、個人的にはその外見や年齢とのギャップがある種の起用のポイントであったり見どころでもあったりするのではないかと思うのだが、杉咲花の場合、登場した時点で可憐さはあっても妖艶さやそれに付随する凶暴性を感じ取ることはまず不可能なのではないかと思えてしまうのである。
ちひろさんや劇場版TOKYO MERの時にも触れたが、近年の若い俳優の、役に対する演技力の深みが素晴らしいのは言うまでもないが、さらにその役柄を本人の人柄とフラットに見せてしまうことが出来る技術は本当に凄いことだと思う。
杉咲花。
良い意味で恐ろしい凶暴性を秘めたトップクラスの俳優であることに間違いない。
ちなみに作品としては、2022年公開の「ある男」とセットで鑑賞すると、より同一線上の世界観が楽しめるのではないかと思う。
夏の果
大きな違和感がある
市子が筋ジストロフィーの妹の人工呼吸器を外すシーンがある。仕事から帰ってきた母親がそのことを知ったとき、なんと「市子、ありがとう」と言うのだ。後に母親の告白で「もう限界だった」とあるので、妹のためではなく、自分たちの介護疲れで殺したということになる。どんなに介護が大変でも母親はわが子に生きてもらいたいと考えるものだ。世の同じ境遇の母親たちが介護疲れで難病のわが子を殺したなんて聞いたことがない。この殺人と母親の「ありがとう」は、同じ境遇の人たちにあまりに無頓着で失礼だと思う。
そして、妹を殺しておいて(他に3人も殺している)良心の呵責も感じないで自分は幸せを求める市子を、戸籍もない過酷な環境で育った幸薄い女みたいに描いているのには大きな違和感がある。「人は殺しているけど、かわいそうな女なんだよ」とでも言いたいのだろうが、どれも情状酌量の殺人とは思えず(注)、第一、市子を見ていると同情も共感もできない。
(注)母親の男から罵声を浴びて殺すが、あの程度の罵声で人を殺すのは異常。
凄い映画。
ずしりと残る作品
採点4.2
プロポーズした翌日に失踪した恋人を探す、そんな闇を探るような作品。
まず主演の杉咲花がすごい存在感で、今までよりも確実に迫るような芝居が見られました。
もちろんそれは隣の若葉竜也があってこそとも思います。
二人の芝居は本当見応えがありました。
物語は謎を紐解くべく市子に関わりのあった人々達を訪ねるのですが、そのエピソードをその人物事に時系列を散らしたりと、じわじわと見えてくる演出がとてもうまかったです。
そういえば真逆のような物語ですが、同監督の「名前」に通ずるものもありましたね。
あと、すごく静かなのですが脚本がものすごいです。
心から嬉しかったプロポーズ、それは考えた事もない幸せの瞬間。
でもそれは、その幸せの終わりとなる現実。
冒頭に出てきた婚姻届とその笑顔が、後半でものすごい意味になって帰ってくるのがすごかったです。
そしてこれも冒頭から度々歌われていた「にじ」。
「おかいつ」や「おといつ」などで度々流れていて、家族で馴染みのある温かい歌。コンサートでも良く聴いたものです。
でもこれは、叶わぬ幸せをずっと願ってきた、市子の空虚さを物語っていました。
そんな歌のようにあるであろう明るい場所を、きっとまた探して彷徨っていくのでしょう。
苦しくもあるのですが、逆に当たり前の事が幸せであることを再確認できました。
この問題は今年4月に制度が変わったので、作品を通し少しでも理解が深まる事を願います。
ずしりと残る、とても深い作品でした。
ずっと夏
たくさんの蛾や虫が自然に集まってくる夏の明かりのように、市子は誰をも惹きつける。無口で殆ど笑わないし相手に何も聞かず自分のことも言わないのに。そんなに孤独で寂しく辛くて悲しいのに誰かに手を差し伸べる市子を杉咲花が素晴らしく怖ろしく演じていた。台詞も少ない、顔芸の芝居ではない、大袈裟に泣き叫ばない。とても難しい役だろうし、脚本と演出もいいのだと思った。時間軸があちこちに動くのは結構好きだが、市子はその時何歳かいちいち計算していたので計算苦手な自分を恨んだ。
日本の夏は能天気に過ごせない、悲しみの季節だと思う。そんな夏を杉咲花は、花火とか、浴衣とか、縁日の屋台とか、ガリガリくんアイスとか、麦茶とか、汗で表現した。それらは決して定番の夏・小道具ではない。全部、市子の中から出てくるものだった。
「市子」が一人居たら、実際はその何倍も何十倍も何百倍もの「市子」が日本に世界に居るんだと思った。映画「存在のない子供たち」を思い出した。
おまけ
「いだてん」(平均視聴率ワースト・ナンバーワンって信じられない。あんなに面白いのに。最初から最後まで見た最初で多分、最後の大河ドラマ)で杉咲花に初めて出会った、そこで彼女は二役演じた。まずは元気に走る女の子、「結婚なんかしなくていい~!」と女学生に叫ぶ体育の先生のシマ役として。シマは人見絹枝(ダンサーの菅原小春、素晴らしかった!)を見いだし力づけ勇気を与えた。そのシマに励まされた人見は日本で最初の女性オリンピック選手となりアムステルダムで銀メダルを獲得する!それ以前、シマは関東大震災で消息をたつが結婚していて娘も生まれていた。その娘のりく役で第二の杉咲花に出会うことができた。このドラマの鍵となる重要な役どころを杉咲花は可愛く健気に強く逞しく演じていた。
私はいったい何のレビューを書いているんだろう・・・
むずい
この人が悪い!と明確に決められるわけではなく、破綻した家族システムの中で起きてしまった悲劇だなあと思いました。
でも1番の被害者は月子ちゃんじゃないでしょうか。他の登場人物にはまだ選択肢がある中、体が不自由な月子ちゃんは選べない中で一方的に殺され、誰にも死を悲しまれない、、
かなりキツかったです。
市子も存在を否定されなかなか過酷な家族環境で育ち、被害者の1人ではありますが、
何人もの人を殺しておきながら自分は幸せになるぞーと考えていて、自責の念はないのかなとか殺人をして心のバランスを保てるものなのかなとか、ある意味精神面の強さを感じました。
展開が読めずおもしろかったです。
無戸籍というワードが特別感を演出している
アマプラで観ました。見返したりもしました。
時系列は飛びますが難なく理解できる範囲。上手く面白くしていると思います。とてもおもしろかった。
無戸籍では無いにしてもこういう女性のお話というのはあると思います。
私はジョゼを思い浮かべましたが、市子も最初の殺人の時から一人で生きる覚悟はあったはずです。人に頼ることが頭にないのです。北くんは勝手に覗き勝手に隠してヒーローになろうとした。北くんや殺されたオッサンは被害者かもしれないけど、仕方ないんじゃないかな。市子の前では。
長谷川も市子の人生経験の糧であり、作品上必要なキャラですね。
幼少期、うまくできなかった友達が社会に出てみるとできたり、結婚までのプロセスを学び、戸籍まで手に入れた市子。立派な犯罪者ですが、逆に存在しない人の犯罪ってどうなるのだろうか。
自分が長谷川の立場だったらしばらくは未練があると思いますがそのうち「いつかまた会えたら良いな」くらいになるだろうから、進んで口をわらないと思います。
自分的にはハッピーエンドでしたね。
最後のお祭りのシーンが回想ではなく、新しい名前を名乗ってやり直しとかだったら大興奮だったかもですが笑
誰より虐げられた被害者は市子と月子だから
また観たいと思わせる作品。
戸籍は手に入れたのだろう。
これから、保険証やケータイの心配はなくとも、また市子と名乗れない長い長い苦痛の日々が始まるのだろう。
それでも、長谷川くんと過ごした市子としての3年間は、これまでの人生にはなかった、小さくとも濃い光になるであろうことは、彼女にとっても観てる側にとっても救いだなぁと思った。
妹が死んだ後の母親の歌には、狂気の中にも呪縛からやっとの思いで逃れたという解放感があったのに、同じ歌を、シアワセから離れざるを得なかった市子が歌うシーンはすごくすごく切ない。
エンドロールが鼻歌なのもとても良かった。
欲を言うなら長谷川くんのバックボーンもちょびっと欲しかったかなぁ。
個人的な望みとしては長谷川くんが市子に逢えて欲しかったけど、逢わせないことで市子のこれからの人生の切なさがより浮き彫りになってすごく染みた。
悪が否か
悲しい
杉咲花さんの演技に脱帽。プロポーズされて涙する可愛らしい女性…からの失踪、存在しない事実、過酷な過去…。
始まりがもう自分ではどうしようもできないことだから…。なんであの時月子とツキコを入れ替え、月子と市子を入れ替えないとダメだったのか。なんで無戸籍なんかにしたんだ…とか、いろいろ考えた。
最後はショックでした。市子は、生きることを諦めなかったし、そのために人を殺すことをいとわなかった。あのストーカー男は、大人しく殺されたんだな…。なんか怖いし悲しい映画でした。
杉咲花 若葉竜也 森永悠希が良い
親ガチャとその後の人生
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