市子のレビュー・感想・評価
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「生きることをやめられない」という叫び
若葉竜也さんはこの役の話が来た時に「自分じゃなく他の人がこの長谷川という役をやっているのは想像したくない」と思ったそうです。
彼の演じる長谷川くんは、この重たい映画の中で一筋の希望のようでした。
だからこそ、市子が彼の前でだけ見せる幸せそうなかわいらしい笑顔が胸に詰まって苦しかった。
それまでの長い無表情が効いています。
市子は、その幸せを捨ててまで「私」として生きたかったのですね。
監督が映画の前に書いていた戯曲では、市子は「生きることをやめられない」と叫んだそうです。
自ら選んだのではなく、母親のせいで狂わされてしまった人生を決して諦めることなく、抗いながら生きていくことは、彼女が選んだもの。
人並みの人生を生きたいと望むがゆえに悲劇を繰り返してしまう彼女を、ただ責めるだけでいられるでしょうか。
いろんな想いが胸の中に渦巻いてしまいました。
長谷川くんと幸せになってほしかった…
でもこの物語は、そんなありきたりなハッピーエンドじゃないから面白いのですね。
杉咲花さん、若葉竜也さん、すごかった!
私が私として生きるために
夏の道を鼻歌を歌いながら気だるそうに歩く若い女。
そのシーンで始まり、そのシーンで終わる。
2度目にみたシーンから受ける印象は、1度目にみたシーンから受けるそれとは全く別物になっている・・・。
この作品のテーマは何なのだろう。
戸籍制度の穴に落ちて「私」を「私」として証明できなくなった女性の悲しい物語なのか。貧困やヤングケアラー、一度落ちた者を救済する制度の弱い社会の問題なのか。愛なのか。
それは観る人によって解釈がちがうものだから、正解はない。
ただ、この作品を観て感じたのは、静かな佇まいの中にも、心の奥底に確固としてある「私として生きたい」という主人公の強い意思だ。彼女の「強さ」は子供の頃の場面から感じられた。
その意思を、強い言葉や動きで表現しない演出。杉咲花という俳優の演技。
感情を表に出さなくても、表情の変化に乏しくても、内から滲み出てくる何か。
季節はほとんんど夏だったように思う。気だるい暑さの中で滲み出てくる汗が何度もアップで映る。この汗には、主人公市子の悲しみや怒りといった感情が全部溶け込んでいるように思えた。
長谷川(若葉竜也)の行動で徐々に明らかになっていく市子の正体。長谷川の視点に寄り添ってみていけば、市子は悲しい、かわいそうな女という印象になるかもしれない。
しかし、どうだろう。
彼女がとった「私」を取り戻すための行動は、(それがほとんど発作的で衝動的な行為であったとしても)周りの人間の人生を確実に狂わせていっているのだ。悲劇である。
そう考えると、市子はとても恐ろしい女に思えてくる。底知れぬ怖さを持った女だ。
ほとんんど「素」の無表情に近い顔と演技で主人公市子を演じる杉咲花からは、いわゆる俳優の「オーラ」とは違う、形容しがたい「何か」がじわじわと迫ってくるものを感じた。
ああ、そういえば、顔面アップのポスタービジュアルからは、こちらに向かって「何か」を訴える力を強烈に感じたなあ。
戯曲の映画化と知って、なるほどと思った。悲しみ、哀れみ、絶望、悪、善、愛。一人の女の半生を通じて見せる。他人語りで見せる。最初と最後は同じシーンで。彼女の秘密を知った観客が、同じシーンを最後に見て何を思うか。
それを問いかける。問いかけられる。残った余韻の中で考えさせられる。
そういう映画なのかもしれない。
杉咲花に底知れぬ何かを感じた。
杉咲花さんの実力が存分に
「市子、ありがとな」
妹の名前は普通「民子」だろ❤
岩井俊二監督や大林宣彦監督をリスペクトしたい気持ちは分かるが、同じ手法を使っても脚本がしっかりしてしないから、出鱈目な時間進行になってしまっている。
謎の女性との出合い。そして、やっと出会えた幸せ。でも、実らず破綻する不幸。って事でしょ。
内容は複雑極まりないが、カルメンとか悪女系の古典からの転用ですね。
ましてや、実際の難病の方に対しての偏見につながらないのか?
と思うが。
タイトルなし(ネタバレ)
最後には市子と義則が再会できるのでは?と淡い期待を抱いていたのだが、会えずに終了、、、
妹も義理の父も過去を知る同級生も自殺志願者も全て殺して義則と一緒になるのかな?と思ったのにー!
この時は結ばれなかったけれど、アンメットでは一緒になれて良かった。
エンドロールの1番幸せだった頃の話し声が胸を締め付けました。
タイトルなし(ネタバレ)
余白を味わう映画なので、人それぞれの解釈があり、結末を自殺願望者の女性とストーカーの北を市子がはめて車で海に転落させた。しかも、計画的にコントロールして。という解釈する人がほとんどでしたが、私は死んだ女性は市子だと思ってしまった派です。
最後の市子の語りが長谷川に対する遺言のように聞こえました。
止める北と一緒に自ら命を絶ったのかもしれないし、人格障害のストーカーの北に無理心中させられたのかもしれない。
いろんな解釈ができるけど、どういう結末だったとしても市子には人並みの幸せな生活が送れるようには思えなくて、そう考えると切なくて切なくて鑑賞者の精神的ダメージはすごい。
「にじ」の鼻歌が希望のようにも聞こえるし、手の届かない人並みの幸せな生活にも思える。
どちらにしても、市子は長谷川と普通の生活を送り幸せに生きられたらどれだけ良かったか。
ひたすら市子の気持ちを探って反芻しても余白が埋まらず、鑑賞後こんなにも辛い気持ちを引きづった映画は初めてです。
杉咲花によく合う作品
2023年公開。
【監督】:戸田彬弘
【脚本】:上村奈帆、戸田彬弘
【原作】:戸田彬弘(戯曲「川辺市子のために」)
主な配役
【失踪した川辺市子】:杉咲花
【市子の恋人・長谷川義則】:若葉竜也
【市子を慕う北秀和】:森永悠希
【母なつみの愛人・小泉雅雄】:渡辺大知
【刑事・後藤修治】:宇野祥平
【市子の母・川辺なつみ】:中村ゆり
杉咲花は本作で、日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞した。
1.良くできた脚本
時系列を前後させながら、観る側を飽きさせない構成になっている。
市子と月子、登場人物すべてに「仕掛け」があり、
面白い。
2.キャスティングが素晴らしい
悪く言えば、オーバーになりがちな杉咲花の演技だが、
本作では、市子のキャラクター設定と杉咲花の相性がよく、可愛さと怖さの同居した複雑な役柄を見事に演じた。
若葉竜也(市子を探す恋人)と中村ゆり(市子の母)の邂逅シーンも素晴らしかった。
3.ラストの解釈
どうだろう。
普通に考えれば、市子は別人になって生きていくのか。
森永悠希(市子を慕う高校の同級生)は、
自ら犠牲になったのか、どうなのか。
4.まとめ
◆無戸籍児と難病の子供を抱えた貧困家庭
まさに、社会の暗部をてんこ盛りにしたような川辺一家。
ラスト、エンドロールが流れる中、
ささやかや団欒を楽しむ川辺家の音声が流れる。
貧しい家は必ずある。
私も、そういう家で育った。
本作は、途中までは単なるエンターテイメントとして楽しめた。
ラストに近づくにつれ、
製作者の意図がよく分からなくなった。
一本の作品として、
「良い作品」だと思うが、
他の人に薦めたり、
「もう一度見たい作品」かといえば、
違う気がする。よって、☆は3.0
話はおもしろいのに
作りヘター。年月日とか名前とかチャプターの最初にわざわざ入れんの、現代日本映画ってこの時制が分かりづらいことを極度に恐れるよね。この程度の行き来が分からなくなるくらいの人は、事細かに説明されても面白さを理解できないと思うよ。そのそもそも顧客になり得ないお脳の足りない人たちのために結局ネタバレしちゃって、真っ当に映画見れる人たちの楽しみ奪っちゃってんだもん。後から頭の中でカチャカチャやって、あー!そうなのー!ってなるのが楽しいのにさ。後半も極度にテンポが悪くなって、まあご丁寧な説明なさって。万引き家族を思い出しましたよ、この後半のテンポの悪さとすべてを誰かの口からきちんと説明しないといられない謎の日本映画病。疫病ですね。ワクチンがあれば良いのだけど。
市子
市子、今どこにいる?
絶対に知られたくない過去を持つ市子。放置子、ヤングケアラー、母の恋人からの性的虐待、そして誰もが当たり前のように持っている戸籍が彼女にはない。
常識でははかれない歪んだ世界ゆえに起きた2件の殺人事件。
必死に過去を隠して手にした幸せ。
しかしそれすらも手放さなければならなかった。
彼女の母親から過去の話を聞いて義則が泣いたこと、母親が船上の義則に頭を下げ、彼がそれに応えたこと。市子がそれを知っていたなら最後の悲劇は起きなかったかもしれない。
市子のヒーローでありたかった北は市子の最後の望み、戸籍を彼女にプレゼントするために自殺希望者とともに海に沈んだのだろうか。戸籍を手にした市子はどこに向かっているのだろう。
市子を追い続けている刑事がなんとか市子にたどり着き、そして再び義則と市子が対面できることを望んでやまない。
義則と暮らした頃の市子の笑顔がもう一度見たい。
きっと明日はいい天気、そうあって欲しい。
市子
杉咲花ってやっぱ凄いな
戸籍を持たない子供。実際にある問題のようだが酷い話だよな。確かに生まれた時にどうにもならない理由があるのかもしれないが、その子にとったら一生の問題。そのままにしていいわけない。この母親は障害を持った娘もいて、いろいろ苦労も多くて大変だっただろうが、だからと言って許されることではない。
一緒に暮らしている彼からプロポーズされて嬉しくても、戸籍がないから婚姻届出せないし、打ち明けるにも、月子の事を話せないし、辛いけど姿を消すしかないよな、可哀想。
北くんはあの女性と一緒に海に落ちる計画だったのか?あの場でそうなったのか?どちらにしても高校生の時から市子に捧げた人生だったのか、彼も気の毒。
新たな人生を歩む市子もみてみたい。
市子には癒されたけど、ストーリーは家庭環境が辛すぎて精神を抉られる
市子(杉咲花)のビジュアルと喋り方が好きで魅入ってしまった。おかっぱのような特徴的な髪型も似合って可愛いし、ふだんは無表情で淡々としたトーンで喋るのに時折見せる笑顔でギャップにノックアウト。関西弁も萌えポイント。
長谷川と北が惚れた理由が分かるなー。すげー美獣って訳でもなく、特にわたしのタイプではないのに何故か惹かれてしまった。この役は杉咲花にしか出来ないと思う。
市子には癒されたけど、ストーリーは家庭環境が辛すぎて精神を抉られっぱなし。とくに市子が月子を殺すシーンは印象的だ。
「市子ありがとな」月子を殺した市子に放った母の台詞が重くて突き刺さる。その後何事もなかったようにお茶を出して鼻歌歌うのが異常。月子の目をじっと見つめながら呼吸器を外す市子も怖い。このシーンで尋常ではない親子関係なのだと確信した。
もはや面影のない市子一家の幸せそうな家族写真を見るとギャップで切なくなる。何が家庭を崩壊させたんだろう...。
悲しいドラマ
杉咲花の存在感がすごい。 関西弁も自然に感じる。 長谷川からプロポ...
無戸籍
法律の改正かな。
やっと今年令和6年4月1日から施行。
離婚後10ヶ月以内に出生した子でも
再婚相手の子と見なされるようになった。
しかし、市子が生まれた時は、前夫の子となり
前夫が拒否したら戸籍が無いことになるのか。
あとにできた月子が難病になり障害児と認定され、
就学できない身体を利用して市子がなりすました。
福祉課の小泉を利用して上手くごまかして来た。
小泉は母なつみの男だった。
月子の世話は大変だったのだろう。
ある日、市子が呼吸器を外した。生駒山に埋めた。
なつみは母親なのにありがとう、と言い鼻歌歌ってた。
埋めるのに小泉も加担したのか、
罪の意識で自堕落になり
市子にまで手を出すようになった。
怒りのあまり市子が小泉を刺し殺した。
一部始終見ていた北に手伝ってもらい
線路に寝かし電車に轢かせた。
長谷川と出会い3年暮らしたが、
婚姻届を出すとなり姿を消した。
北の元に身を寄せていたが、
警察と長谷川が来たので逃げた。
サイトで自殺願望者を募り北の家に来させる。
市子のいるところに北と自殺願望の女を来させた。
市子何人殺した?
妹、小泉、北、自殺願望者。
『火車』を思い出した。
家族のいない人の戸籍を手に入れ生きていくのだ。
再鑑賞して、
月子をkillした頃ぐらいから月子と名乗らなくなったのか⁉️最悪遺体が見つかるまで月子でいけたのに市子に戻ったのは、良心の呵責からか❓
また疑問なのは、見つかった遺体を警察は月子と断定したというニュースが流れたが、月子と照合できるデータなんてあるのか⁉️
見落としていたが、月子の病名は、筋ジストロフィーだった。シンママのなつみが仕事に行くので、市子が世話をする。観たシーン、オムツ替えていた。14,5 の少女があまり年の変わらない妹の下の世話、キツいと思う。
この病気で呼吸器を使い身動きできないのは、だいぶ末期に来ていたのだろう。
最初から気づいていたが、森永クン、目がパッチリして少し痩せていた。若々しくなっていた。
ひとつだけ疑問
皆さん、杉咲花さんを褒めると思います。確かに良かったと思います。が、若葉くんもとっても良かったと思います。前半(時系列での)の嬉しそうな顔、後半の厳しい顔、これまで今泉作品でしか記憶ないですが、もっと活躍を期待してます。
伏線もバッチリですし、重たい話にズドーンとしました。監督の作品は「名前」を観たことありました。
わたしの意見としては、杉咲さんは自首して、戸籍の件もしっかり説明して、懲役を終えて、若葉くんと結婚するべきです。彼は受け入れてくれます。
ひとつだけ疑問なのは、面白い展開なのに、映画としてとても映画長く感じました。何故ですかね?
テンポが悪い?、内容が盛りだくさんすぎる?ラストが最初にあるから? よくわかりませんが、ともかく長く感じました。
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