「綿密に計算され尽くした逸品と人間の二面性について」市子 アヤックスさんの映画レビュー(感想・評価)
綿密に計算され尽くした逸品と人間の二面性について
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脚本・演出を担当した舞台を自ら映画化しているためか、ストーリーの演出が非常に精巧にできており、タイトルその他細かな点も含めて伏線の出し方と回収の仕方が素晴らしいが、敢えて冒頭の海のシーンを男女「2人」の遺体で裏切らせるあたりはニクい。
杉咲花の演技力も相まって、過酷な生育環境から感情を失ったヒトの抜け殻から覗く、長谷川くんやキキちゃんのような本当は温かいものに飢えている面、北くんの前やラストで見せた生き延びるために極めて狡猾な手段を臆せず使えるサイコパスな面など人間二面・三面性の描出も素晴らしかった。黒いロングワンピースを着た市子はその人間性の象徴のようで、非常によく似合っている。
監督自身が小中学時代にあのような地区の人々と交流があるからか、単に汚いだけでなく、子供が親のスナックで飯を食うなど社会的常識や規範意識に乏しいあのような環境の描出もリアルだった。
話の本筋とはそれるが、人工呼吸器を外された月子を見た母親や「ありがとうな」というの、大きな声では言い辛いけどやっぱりそうだよなと。安楽死の法整備は必要だよな…
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