「ずっと夏」市子 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
ずっと夏
たくさんの蛾や虫が自然に集まってくる夏の明かりのように、市子は誰をも惹きつける。無口で殆ど笑わないし相手に何も聞かず自分のことも言わないのに。そんなに孤独で寂しく辛くて悲しいのに誰かに手を差し伸べる市子を杉咲花が素晴らしく怖ろしく演じていた。台詞も少ない、顔芸の芝居ではない、大袈裟に泣き叫ばない。とても難しい役だろうし、脚本と演出もいいのだと思った。時間軸があちこちに動くのは結構好きだが、市子はその時何歳かいちいち計算していたので計算苦手な自分を恨んだ。
日本の夏は能天気に過ごせない、悲しみの季節だと思う。そんな夏を杉咲花は、花火とか、浴衣とか、縁日の屋台とか、ガリガリくんアイスとか、麦茶とか、汗で表現した。それらは決して定番の夏・小道具ではない。全部、市子の中から出てくるものだった。
「市子」が一人居たら、実際はその何倍も何十倍も何百倍もの「市子」が日本に世界に居るんだと思った。映画「存在のない子供たち」を思い出した。
おまけ
「いだてん」(平均視聴率ワースト・ナンバーワンって信じられない。あんなに面白いのに。最初から最後まで見た最初で多分、最後の大河ドラマ)で杉咲花に初めて出会った、そこで彼女は二役演じた。まずは元気に走る女の子、「結婚なんかしなくていい~!」と女学生に叫ぶ体育の先生のシマ役として。シマは人見絹枝(ダンサーの菅原小春、素晴らしかった!)を見いだし力づけ勇気を与えた。そのシマに励まされた人見は日本で最初の女性オリンピック選手となりアムステルダムで銀メダルを獲得する!それ以前、シマは関東大震災で消息をたつが結婚していて娘も生まれていた。その娘のりく役で第二の杉咲花に出会うことができた。このドラマの鍵となる重要な役どころを杉咲花は可愛く健気に強く逞しく演じていた。
私はいったい何のレビューを書いているんだろう・・・