「不遇な主人公に寄り添おうとすると裏切られ、暗澹たる気持ちになる」市子 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
不遇な主人公に寄り添おうとすると裏切られ、暗澹たる気持ちになる
過去に市子と関わってきた人々の一人ひとりに焦点を当てながら、「この世に存在しない」市子の人生を浮かび上がらせていく前半は、山中で発見された白骨死体とどう結び付くのかという興味とともに、グイグイと物語に引き込まれる。
ただし、中盤以降に、市子に戸籍がなく、発見された死体が彼女の難病の妹だということが判明し、市子の恋人が失踪した市子を捜す話が主体になってからも、現在と過去との行ったり来たりが続くため、話の分かりにくさと冗長さ、テンポの悪さが気になってしまった。
過去の話は、極力時系列に沿って描きながら、市子の正体等の真相の解明は、なるべくラストに持っていき、そこから、市子の恋人が彼女の母親に会うまでのクライマックスを一気に描くといったような構成にできなかったものかと、少し残念に思ってしまった。
市子が失踪した理由にしても、恋人にプロポーズされたからなのか、白骨死体が発見されたからなのかがよく分からない。
単純に考えれば、戸籍がないので婚姻届を提出することができないからだろうし、身元がバレて警察に捕まりたくないからかもしれない。
だが、もしプロポーズが原因ならば、「既に2人の人間を殺めている自分には、幸せになる権利はない」と、自責の念に駆られたからだと考えることも可能だろう。
もしそうならば、ようやく愛し合える人と出逢い、その人と一緒に暮らす幸せを手に入れたのだから、正直に罪を告白し、その罪を償った上で、また愛する人と暮らせばよいのではないだろうか?
ところが、終盤、市子が、新たに2人の人間を自殺に見せかけて殺害するに及んで、彼女に対するそうした同情や共感は、根底から崩れ去ることになる。
自らの殺人の証人を消すために更なる殺人を重ねる市子の姿は、単に警察に捕まらないよう逃れているだけの狡猾な連続殺人犯にしか見えないのである。
そのため、せっかく、不遇な生い立ちの主人公に寄り添い、彼女が幸せになるよう応援する気になっていたのに、なんだか裏切られたように感じてしまった。
結局、市子と恋人が再会することはなく、何の希望も見いだせないエンディングには、釈然としない後味の悪さが残った。
コメント、ありがとうございます。
登場人物のキャラクターについて、色々と考察できる映画ですが、市子がエゴイスティックに北を利用しようとしたのに対して、北の方は一途に市子のことを愛していたのは間違いないようですね。
市子は しょうがなく殺してるのがあの男と妹で 自殺志願者の人は協力しつつ戸籍をもらってこれからの逃亡生活の新しい名前を入手しつつ ストーカーの北君は居たら邪魔な厄介者だから自殺志願者と一緒にまとめて殺してますから結局はサイコパスの連続殺人犯ですよ。 その考え方であってますよ。