「14歳のプリシラの存在感、その後のエルヴィス風味を堪能するための映画」プリシラ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
14歳のプリシラの存在感、その後のエルヴィス風味を堪能するための映画
2024.4.16 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ&イタリア合作の映画
実在の人物エルヴィス・プレスリーとの結婚生活を妻プリシラ目線で描く伝記映画
監督&脚本はソフィア・コッポラ
物語の舞台は、1960年代の西ドイツ・バートナウハイムにて、アメリカ軍将校(アリ・コーエン)の娘プリシラ(ケイト・スピーニー)の日常が描かれてはじまる
父の赴任によって西ドイツに来たプリシラは、周囲と馴染めないまま、一人でイーグルクラブというカフェ&バーで勉強をしていた
ある日のこと、アメリカ兵のテリー・ウェスト(ルーク・ハンプレイ)から、「エルヴィス(ジェイコブ・エロルディ)が主催するパーティーに来ないか?」と誘いを受ける
当時のプリシラはまだ14歳の9年生で、パーティーに行くためには両親の許可がいる
そこでテリーはプリシラの父に直談判し、プリシラを妻キャロル(ディーナ・ジャーヴィス)とともに安全に守ると約束し、許可をもらうことになった
テリーの迎えでパーティーに向かったプリシラは、そこでエルヴィスと出会う
彼は同じ故郷の人と話したかったと言い、若者の間では何が流行っているのかと問いかけた
いくつかのアーティストを挙げたあと、エルヴィスと答えたプリシラ
二人きりで話をしたいというエルヴィスの誘いに乗って、彼女は彼の部屋へと向かった
その後、エルヴィスは決してプリシラには手を出さず、「その時が来るまで」と言い続ける
半ば公認の仲となった頃、エルヴィスは任務を終えてアメリカに帰ることになった
エルヴィスは「向こうに着いたら連絡する」というものの、数ヶ月経っても電話は来ない
新聞記事で彼の活躍を知り、女優たちとの関係を報じる記事を見るたびに心を痛め、両親は「早く忘れるように」とアドバイスをするものの、プリシラの心は頑なに彼を忘れようとはしないのである
物語は、プリシラ目線によるエルヴィスとの関係を描き、出会いから結婚生活、そして別離までを描いていく
エルヴィスの計らいでアメリカのカトリック学校に編入することになったプリシラは、父との約束をなんとか守って卒業し、ようやくエルヴィスと夫婦になる
エルヴィスの周りにはメンフィス・マフィアと呼ばれる人々が大勢いて、昼夜を問わずにパーティーなどが開かれていた
彼はプリシラの外見に意見を言い、髪を黒く染めさせたり、ファッションにもこだわりをぶつけていく
そんな彼をプリシラは懸命に支え、多忙の中にある休息を提供していく
どこまでが史実かはわからないものの、存命のプリシラ本人が映画に関わっているので、「彼女目線の本当の話」という感じになっている
エルヴィスファンが観たらどう思うのかはわからないが、知らない一面を見れたと思う人もいるし、イメージが崩れるから嫌だという人もいるだろう
伝記映画に残された家族が関わるパターンは多くあれど、本作もその修正がかかるパターンの映画になっていて、色々と疑問に思うところは多い
それでも、プリシラ役を演じたケイリー・スピーニーの存在感が凄まじく、14歳に見えるし、エルヴィス・メイクにておかしくなっていくところもとてもリアルに思えた
娘を出産した直後に離婚を切り出しているのだが、精神的に耐えられなくなったことと、自分の人生を歩む上で、エルヴィスとの関係を解消した方が良いと感じたのは、その後の活躍を見れば心に従ったと言えるのではないだろうか
いずれにせよ、プリシラの伝記映画としてはその後の活躍には一切ふれないし、エルヴィスの死の際にどのような状況だったかなどは描かれない
あくまでも、エルヴィスとプレスリーの恋愛&結婚生活だけを切り取っているので、伝記系ラブロマンスのようなテイストになっている
なので、映画からプリシラがどのような人物だったのかを読み取っても、それはわずかなかけらにしか過ぎないだろう
それゆえに、個人的には「せめてその後に関しては字幕で説明しようよ」と感じたし、単に過去の恋愛と結婚の美化で終わってしまっているのは残念だなあと思った