「ファンタジーとリアリティーのバランスが悪い」DOGMAN ドッグマン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーとリアリティーのバランスが悪い
少年期に、父親によって犬小屋に閉じ込められた末に、体に障害を負った主人公には、確かに同情すべきところが多い。
ただ、彼が成長してからは、想いを寄せていた女性に振られたり、職を失ったりはするものの、それは誰もが経験し得ることであり、特に、差別されたり、迫害を受けたり、裏切られたりした訳ではない。
だから、人間不信に陥り、犬だけを愛する彼の心情には今一つ説得力が感じられないし、犬を使って窃盗を繰り返す彼の行動も、社会に対する復讐というよりは、私利私欲のためとしか思えない。
肝心の犬に関する描写にしても、主人公と犬は、まるでテレパシーで交信しているようだし、犬が自分で判断して、自らの意思で行動しているように見えるところもあり、随分とファンタジー色が強くなっている。
いくらトラップを仕掛けていたからといっても、足の不自由な主人公と犬達とで重武装のギャングを壊滅させてしまうという展開は、見せ場としては面白いものの、劇画的過ぎるようにも感じてしまう。
「虐待」とか「貧困」のリアリティーと、犬にまつわるファンタジーとのバランスが、どうにも悪いように思えるのである。
主人公は、警察に捕まってから、2回に分けて精神科医から尋問されるが、その割には、別れた夫に悩まされている精神科医のエピソードが活かされていないし、これだったら、尋問は、一晩の出来事として描いた方が良かったのではないかとも思う。
至るところで映し出されるキリスト教のイメージも、日本人としては分かりにくかった。
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