「原題:Bastarden=ろくでなし」愛を耕すひと toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
原題:Bastarden=ろくでなし
日本語題は誰が考えたのか知らないけれど、原題の方が作品の内容には
合っていると思った。
*追記*一度投稿してから、他のレビュアーさんが「私生児」の意味もあると
書いておられたのを読んだので拝借してここに追記します。
ろくでなしとは作品に登場するフレデリック・デ・シンケルを
指すのだろう。退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)
が荒野を開拓して農地にしようとするのを邪魔する極悪非道の男。
その地域を仕切っている有力者だけに質(たち)が悪い。権力を
持っていて周囲の人間は逆らえないから好き放題だ。
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(原題:Gladiator II)に登場する
双子の皇帝に匹敵する。
そんな奴の妨害に遭う一方で自然の脅威やら人的資源の問題やらが
障害となり心が休まる暇などなかったに違いない。だから「愛を耕すひと」
というロマンス的な雰囲気の題はちょっと合わないと思った。
誰かを愛するのは間違いないがそれだけがこの映画の主題ではないはずだ。
ケーレン大尉自身もただやられるだけではなく彼なりの方法で
解決しようとする。不利な状況を打破するには綺麗ごとでは済まない。
彼が取った行動もなかなかのものだった。
18世紀のデンマーク。アメリカの西部開拓時代のような、ならず者が
蔓延る世の中では自分の身は自分で守ることも必要だったに違いない。
ぶれない自分軸を持っていて信念を貫こうとする人はやっぱり強いし
必死の努力の先に得られるものは大きいと感じた。
史実に基づく歴史小説が原作。この映画では予備知識がなくても
時代背景や人物の成り立ちが分かりやすく描かれていて良かった。
小説用の創作や映画用の脚色は当然あっただろうが、とても
ドラマチックな内容だった。壮絶という言葉が本当にふさわしかった。
デンマーク・ドイツ・スウェーデン合作。デンマークが舞台の
デンマーク語の映画は普段観る機会があまりないから貴重だった。
おそらくデンマーク映画界の最高峰のスタッフ・キャストが集結して
製作されたと思われ、質の高い映画を観た充実感が得られた。
マッツ・ミケルセンの渾身の演技が良かったが他の出演者たちも
それぞれ印象に残った。
(余談)予告編を見た時、日本語字幕の「決して違う」という表現に
違和感を覚えた。「決してーーではない。」という使い方が普通では?
その部分は本編ではまともな翻訳になっていた。
まーさんはじめまして。邦題を考える人はおそらく良かれと思って具体的な言葉を入れるようにしていると思います。後は受け手の好みですが僕の場合はなるべく原題を尊重したものであってほしいです。