「映画で被爆地の惨状を描かなかったのは、来日の際、オッペンハイマーが広島長崎の惨状を見ることが出来なかったことと同じで、彼の自責の念を描くためだったかもしれないと…」オッペンハイマー KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
映画で被爆地の惨状を描かなかったのは、来日の際、オッペンハイマーが広島長崎の惨状を見ることが出来なかったことと同じで、彼の自責の念を描くためだったかもしれないと…
オッペンハイマーについては、
幾つかのドキュメンタリー番組があり、
彼の科学者としてやユダヤ人としての想い、
そして、人間としての苦悩についての
予備情報を得ていたが、
アカデミー作品賞受賞作でもあるので、
それらを超えてエンターテイメント作品
として何を描こうとしているのかと
この作品を鑑賞してみた。
この映画、
たくさんの要素を叩き込むような編集で、
ともすると私は置いてけぼりになりかねない
作風だったが、好感を持てたのは、
出来事の内実や登場人物の思考は多面的で、
決して単純化して描写出来るものではなく、
オッペンハイマーの苦悩そのものも
長尺の上映時間をもって描いていたことだ。
ところで、この作品には広島長崎の惨禍が
描かれていないとの批判があるようだが、
邦画の「ひろしま」や「TOMORROW 明日」
とはスタンスは異なるので、
戦争祝賀会での演説の際に
オッペンハイマーが見る原爆被害者の幻視、
また、ラストシーンでは広島長崎を超えての
人類の滅亡までを匂わしているのだから、
私にはその指摘は当たらないように思えた。
ただ一つ、秘密聴聞会での
愛人との裸の妄想シーンの必要性については
全くの疑問で、演じた2人にも
同じ画面に登場している俳優たちにも
訊いてみたいような恥ずべき演出に感じた。
さて、クリストファー・ノーランは、
「メメント」では時間の逆行、
「ダンケルク」では
異なる時間幅での同時進行、
そしてこの作品では
小刻みなカットバックと、
時間の扱いに特異な手法を使う監督だが、
この作品では、一科学者の思考世界に
観客を引き込む映像手法として
一番成功しているのではないだろうか。
KENZO一級建築士事務所さん
以前見たNHKの「 映像の世紀バタフライエフェクト 」の、苦悩に満ちたオッペンハイマーの顔が今も鮮明に思い出されます。
或る一人の理論物理学者が、何故独り罪深い十字架を背負う事になってしまったのか、彼独り間違いを犯した訳ではない、そんなメッセージが込められているようにも感じました。
「リッチランド」へのコメント、ありがとうございました。
「オッペンハイマー」のレビューは、私にしては珍しく力を入れたレビューなので、縁があったらいつか読んでくださいね。作品の方から探した方が見つかりやすいかもしれません。
「明日」は見たことがありましたが、「ひろしま」は見たことがないので、ぜひ見てみたいと思います。
コメントありがとうございます😊
何とお返事すれば良いかわからないですが、
運命は運命でこうなっているのでしょうか。
おっしゃるようになっても惨め、
やはり戦争は駄目ですね。
ご丁寧にありがとうございました😊
こんばんは♪共感ありがとうございます😊KENZOさんの高尚なレビューにはちょっとついていけないのですが、先程
『はだしのゲン』を観まして、アニメながらあの惨状、後々まで続く被害者の苦悩を改めて目の当たりにしてしまいますと、
他の各地の大空襲とは別格であり、日本に住む者としては、いかなる理由あろうとも原爆を作り落としたことは、許す許さないというより、同じ人間としてすべきではなかった、と強く感じました。
核というモノが生物特に人間にいかなるダメージをもたらすか、ある程度迄わかっていた筈です。落としてはいけなかった。作ったら、オッペンハイマーたちの手を離れて政治家たちの手に委ねられる、となると作ったことも間違いになります。科学が進みいつかは作られてしまうかと思いますが、作ったのはオッペンハイマー、悔やんでも広島や長崎が拒否しても仕方ないです。戦争の武器として使われたことは日本にとって痛恨の極み。
原爆で亡くなった方を生き返らせてほしいとも思いました。アカデミー賞は、アメリカでの主催ですので賞をたくさんあげたのでしょう。
こんにちは
共感ありがとうございます。
そうですね、人間(オッペンハイマーや、ロバート・ダウニーJr.の
演じたストローズ、そして妻のエミリー・ブラントなどの、)
その人の怒りや嫉妬、苦悩がありありと描かれていましたものね。
そこが他の作品と違う気がしました。