「ついに観てきました」オッペンハイマー ノブさんの映画レビュー(感想・評価)
ついに観てきました
クリストファー・ノーラン監督による原爆を開発したオッペンハイマーの栄光と苦悩と没落を描いた作品。当初は日本公開が危ぶまれていましたが無事日本でも公開され、ようやく観ることができました。アカデミー作品賞受賞作。
公開して1ヶ月も経ってしまいましたが、3時間という長尺、また事前に私の友人から登場人物が多く少々わかりづらいという情報もあり、気合いを入れないと観れないなあと思い、後回しにしてきましたがついに鑑賞してきました。
確かに登場人物が多く、時間軸もシャッフルされ、情報量も多く、正直理解が追いつかない部分もあり難しかったです。
唯一の被爆国である日本に住む私たちから見れば、あの実験の描写(強烈な光と爆音)だけでは原爆の本当の恐ろしさが伝わってこないと感じるかもしれません。
しかしこの映画はあくまでもオッペンハイマーという人物にスポットを当てた映画であることを踏まえるとやむをえないのでしょう。
自分の開発した兵器によって大量の死傷者が出れば、怖くなってさらに強力な水爆の開発に反対の立場をとるのは人間の心をもっていれば当然といえば当然かもしれません。
そしてそうなれば国家からするともはや用済みの人間として扱われるのも頷けます。
赤狩りの名のもとにあらぬ疑いをかけられ、結局は一線から追放される彼は時代に翻弄されたある意味国家に都合よく利用されたに過ぎないのかもしれません。
ただ反戦映画かと問われるとそれも少し違うような気がしました。
核の恐怖を描くにしては放射線が人体に障害を及ぼす描写が皆無であるし、結局ノーラン監督はオッペンハイマーという天才物理学者の数奇な人生を見せて、あとは観る者の心に委ねたのでしょう。
火花が散るような核のイメージ映像と重低音が時折挿入され不安感をあおりますが、原爆の本当の恐ろしさは日本人にしか描けないような気がしました。
ストーリーと全然関係ありませんが、裸の愛人が突如オッペンハイマーの前に現れる幻想シーンに一番ノーラン監督らしさを感じてしまいました。