「この上無い描写力」オッペンハイマー taka2x2さんの映画レビュー(感想・評価)
この上無い描写力
原爆の父と評された物理学者オッペンハイマの苦悩の半生を描いた映画である。この上無い描写力はさすがはアカデミー賞作品賞を含む7部門を受賞しただけのことはある。特に映画館という大きな箱の中で視聴者の耳には主人公に差し迫る危機を掻き立てるような緊迫感が溢れる音が終始鳴り響いていた。それがオッペンハイマの世界観に導かれたままのあっという間に3時間が過ぎた。只、現代進行形シーンと懐古シーンが頻繁に入れ替わるのでとてもわかりにくかった。この映画はアメリカ人の視点で描かれており、会話としては出るが、広島。長崎での原爆投下のシーンは全く出てこない。もちろん被災国日本人の心情としては決して穏やかではない。今も原爆投下によって終戦が早まったと正当性を主張するアメリカ人は結構な数でいる。そんな中でよくここまで踏み込んだと思える内容だ。原発や原爆を恫喝に使う独裁者が出たり、今もガザでここまでやるのかと思うくらいの罪のない何万人の市民の悲惨な殺戮が繰り返されている。確かに重いテーマが背景にある。近年核なき世界がずいぶん遠のいたと感じている。本当にこのままで良いのか?この映画はそれを問い掛けているようにも思う。ぜひ観ていただきたい。
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