劇場公開日 2024年3月29日

「科学者同士のたたかいでした」オッペンハイマー かつのじょうさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0科学者同士のたたかいでした

2024年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アカデミー作品賞が決まる前から楽しみにしていて、やっと観に行けたという感じでした。

予告CM等でのイメージとしては、原子爆弾という大量殺戮兵器を生み出してしまった人物の罪悪感とか、アメリカの赤狩りの熾烈さを描いているのかなというものでしたが、実際にみてみると、科学者同士の競争と勢力争いの印象が強かったです。
裁判もどきの取り調べ会(?)と回想シーンが織り交ぜられての描写でしたが、ノーラン監督の他の作品のように、振動をともなう大音量の音響と音楽で緊張感をゴーゴー煽る演出で、地味なシーンも派手になり、3時間でも退屈することはありませんでした。
オッペンハイマーの個人的なショック以外はほとんど広島・長崎の描写がなかったのを不満とするご意見が多いようですが、そもそも科学者業界の人々の話であり、政治家や軍人も脇役だったような気がします。あれもこれもとゴチャゴチャ入れると視点がぼやけてしまったことでしょう。大統領の「恨まれるのは私だよ」的な台詞は強く印象に残っていますが…。

核兵器と戦争。誰が何をどう議論しても結論が出ることはないでしょう。立場(利害?)によって意見が異なるのは当たり前です。たしかに日本人としては同胞の犠牲者を思うと悲しみと怒りが前に出ますが、一方でいろんな立場の人々の感覚も想像できなければいけないと思うのです。この映画は、共感するかはさておき、原爆誕生の裏にこんなドラマもあったんだと、視野を広げてくれました。
山崎貴監督がアカデミー賞授賞式の際におっしゃったように、今度は日本人の立場から世界に向けてのメッセージとなる映画ができるのを楽しみにしています。

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かつのじょう