「映画作家ノーランのネクストレベル。」オッペンハイマー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
映画作家ノーランのネクストレベル。
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ちょっと偉そうな物言いになってしまうのだが、ノーラン、脚本の腕が上がったんじゃないか。いままではノーラン特有の理屈っぽさと、それを凌駕するロマンチスト気質がうまくブレンドされておらず、どこかチグハグな印象を受けることが多かった。しかしこの映画、相変わらず時系列は入り組んでいるものの、ひとつひとつのシーンに多層的なニュアンスがあって、次のシーンに繋がっていく推進力がある。3時間、初見ですべてを理解できなくとも、観客を否応なしに引き込む巧みさが備わっているのだ。
そして、原爆被害を直接見せなかったことに対してモヤモヤする気持ちはあるのだが、オッペンハイマーが原爆の衝撃を感覚的に理解してしまうシーン(ロスアラモスで科学者仲間を前にスピーチする場面)を、映像はもちろんだが音響の力を駆使して表現していて圧巻だった。確かにあの演出を成功させたら、それ以上の描写は説明のための説明になってしまうような気がする。IMAX云々よりも、音を浴びせられるような設備がある劇場で観るのが一番なんじゃないだろうか。
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まろに~さんのコメント
2024年4月30日
私も、あの原爆のシーンは印象に残りました。
自分で手掛けたものだからこそ、そんな威力があるのか、どれほどの犠牲者が出たのかが想像できたのでしょう。
会場から出ていくときにすれ違う人々の様子にも、寓意を感じました。
あのシーンを描ける監督が、今の世界にどれほどいるでしょう。
スピルバーグやキューブリックに並ぶ巨匠の域に達してきたのかなと感じました。
カンタベリーさんのコメント
2024年4月1日
あの場面があれば、広島長崎の直接描写は必要ないですね。
むしろ、帰結を想像できるか否かが観客に直接問われているわけで、関心領域と通底している問題意識だと思う思います