「予習要の傑作」オッペンハイマー ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)
予習要の傑作
予習無しではさっぱり分からなかった。町山さんの解説を入れて再度観たらほぼクリアになった。ノーランらしい複数時間軸の話でもあり、初見で予備知識無しでは無理だよ…
最低でも以下の点は理解しておくべき。そうじゃないと理解できない。
1) カラーはオッペンハイマーの観点、モノクロはストロースの観点であること
2) オッペンハイマーの観点は54年のセキュリティクリアランス(公職に就けるかの審査つまり赤狩り)の聴聞会を軸に回想形式で綴られること
3) ストロースの観点は59年の商務長官指名を受けた際の公聴会 (承認されるかどうか) を中心に描かれること
それを理解して観たらまぁすべての演出がピタリピタリと填まっていて、傑作であることがよく分かった。
研究者と言うよりは超優秀なPMのような力を発揮する天才が原爆を開発するまでと、その使用をコントロール出来ないことから罪悪感に苛まれる様子が描かれる。
広島長崎の被爆の様子を描かないことから批判されたりもしていたが、それでもこれは紛う事なき反戦映画です。
科学がどのようにして政治にせき立てられて暴走するかを、力を持ってしまった政治はどうしてもそれを使わなくてはいられないのだという様子を、残酷なくらい赤裸々に描いている。
科学者たちがそれぞれの想いに基づいて推進したり反対したり、反対に鞍替えしたり。それに比べてストロースたちのやることなすことの小さいこと…
科学者たちは、それが開発できるものならば開発せずにはいられないのだ、ってのもあらためて問い直さないとねというのがノーランの思いなのかな…
役者陣は最高。キリアン・マーフィは今まで観た中で一番の芝居だったし、ロバート・ダウニー・ジュニアもエミリー・ブラントも凄かった…
予習は必要だけど、観ておくべき作品と思います。