劇場公開日 2024年3月29日

「描きたかったのは後半の聴聞会だったのかな?」オッペンハイマー カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5描きたかったのは後半の聴聞会だったのかな?

2024年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

物理の天才だが世の中のこと(政治、戦争、思想、女性、立ち回り方など)については一切興味がなく生き方が不器用な典型的な学者肌のおじさんが、自分でも明確に説明しづらく誤解を受けやすいような行動をとった代償として罪や進退を問われてしまう。

こういうことをしたらこの先どうなってしまうのだろうか?という事が全く考えられないため、その日に出会った女性と即関係を持ち、不倫相手の子供を作り、共産主義者達と公私で親密な関係を持ってしまうので、知らぬ間に敵もできてしまう。
原爆にしても当初起こる悲劇がイメージできず、後々になって大きく後悔する。
(原爆を使うのは学者ではないと自分で納得してたのにw)

トルーマンの「原爆投下で非難されるのはつくった者ではなく指示した者だ」という言葉は、自分自身が最も覚悟と責任を持っているため、お前なんかがウジウジしてるのはどうなのか?という厳しくも正しい言葉だったように思う。

オッペンハイマーとストローズを見ていると「アマデウス」のモーツァルトとサリエリの関係に似ていると思った。
奇しくも両方ともアカデミー作品賞、ストローズ役のロバート・ダウニーJr.は助演男優賞、サリエリ役のフランク・マーリー・エイブラハムも主演男優賞を受賞しているところも面白い。

原爆研究を一生後悔する人の話かと思ったが、この描き方だとオッペンハイマーの人生の出来事のうちの一部にしか見えず、やはりそんなもんかというガッカリ感?のようなものはどうしても拭えなかった。

後から擁護する証言者達が続々と現れるのが少しだけご都合主義を感じたが、聴聞会のシーンは本当に長く集中力維持が大変だった。

人間の愚かさが知るには一番良い作品。

カツベン二郎