「プロメテウスの狂気」オッペンハイマー 椎名モモコさんの映画レビュー(感想・評価)
プロメテウスの狂気
アカデミー賞が多様性を重視するのは理解しますが
やはり超長尺の大作白人映画これぞ作品賞の直球ど真ん中作品が受賞したことに
何やら胸のつかえがとれた気がします
長尺作品ですが他国との原爆開発競争で終始貫く緊張感・疾走感により
ノンストップ怒涛の物語が展開していきます
演者のセリフと演技だけで構成され
アクションも無ければ綺麗なロケーションも無い
何ともソリッドな作品ですが正に対峙のし甲斐がある作品です
原爆については一部にユダヤ人の憎しみをナチスにぶつけるために造られたが
ドイツ降伏により日本に振り向けられたような話を聞きましたが
実際には全然そんなことは無く必然的に日本に投下されたが正しいようです
(対ナチスは連合軍として戦ったがあくまでヨーロッパの話
太平洋戦争こそが血で血を洗う殺し合いを演じたのでそりゃそうだ)
劇中のセリフは一つ一つ心に刺さるものがありどんどん引き込まれていきます
やがて彼は科学者ではなく軍人であり政治家となっていたことが象徴的に表現されますが
軍人でもなく政治家でもないことがハリー・トルーマンによって突き付けられます
そして彼のある種思い上がりだったかもしれない所業に気づき我に返ります
プロメテウスは人類に火をもたらすべきだったのか
もたらさなくても誰かが火を生み出したのかはわかりません
しかし彼は世界から戦争が無くなることを願い原爆を作ったが
それは新たな開発競争を生んだだけであることもまた認めざるを得なかったのです
ウィンストン・チャーチルのゲイリー・オールドマンが
ハリー・トルーマンを演じていて思わず吹きました
是非一人二役の作品も作ってもらいたものです
ほぼゲスト出演でしたが狡猾でいやらしいオールドマン節が炸裂していました
まず日本人には好まれない作品ですが是非劇場で挑戦対峙してみてください
重厚で得るものの多い素晴らしい作品です