「Struggle」オッペンハイマー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Struggle
向こうでのゴタゴタがあって公開がかなり遅れてしまった今作。無事に公開されてホッとしています。
ノーラン作品とはいえ、今までの作品の方向性(変幻世界やスパイ風味だったり)とはガラッと変わった作品なので、そこがどう出るか期待して観に行きました。
原爆で受けた被害を鮮明に描くというよりかは、原爆を作ったオッペンハイマーという人物に強くスポットライトを当てていたなと思いました。
オッペンハイマーが生徒として、教授として、原爆の開発者として、それぞれの視点で描かれる周りの人との関わりや戦争を終わらせるための原爆の作成だったりと、原爆が落とされる前までを明確に描いていて、日本での被害だったりは描かれませんが、前後の区別をしっかりしていて芯が通っていました。
原爆を落とすのに京都はターゲットとして外したのは歴史的文化財があるからという理由。そういうところ気にするんだなぁとフフッとなったと思いきや、「何月に落とすか?8月か?6日か?」という会話があの日に結びついてゾッとなりました。まだ落ちる前だから何気ない会話だけれど、後世に生きてその歴史を知っているものからすると恐ろしいものです。
原爆が実験として爆発するシーンは本当に凄まじく、激しい光から遅れてやってくる音の轟音っぷりときたらヤバかったです。カウントダウンのシーンは緊張しっぱなしでした。
性行為シーンはそこまで必要なかったなと思いましたが、そのシーンの撮影中にカメラが壊れて気まずい瞬間になったエピソードはめっちゃ面白かったです笑
原爆を落とした後の演説で、ジョークを飛ばす軽快さを見せていたかと思いきや、当人の頭の中はぐわんぐわん、視界もぐっちゃぐちゃ、どんなプレッシャーに襲われながら精神をやられていたのか、キリアン・マーフィの好演も相まって素晴らしいものになっていました。
ノーランのど迫力な映像がIMAXなどの特別形式で楽しめるかどうかと聞かれるとNOと答えると思います。
もちろん原爆が実験とはいえ爆発するシーンの光や音や衝撃なんかは劇場だからこそ体験できるものですし、実際の原爆はこんなもん比にならないくらいのものが襲ってくると思うとゾッとしました。
でも正直言うと映像が映えるシーンはそれくらいで、他は淡々と会話劇、複雑な時系列を集中して観るので、あまり画面の縦長や光の派手さは関係なかったなぁと思いました。通常形式で観ましたが十分映画として満足できたのでその点は安心して観に行って良いと思います。
原爆を作った張本人ですら長い間悩まされる。アメリカという国を勝利に導いたにも関わらず苦しんでしまう。
オッペンハイマーという1人の人生の追体験映画としてとても良かったと思います。彼の人生についても詳しく調べていこうと思いました。2回目観たいけど3時間か…ギョエ〜。
鑑賞日 3/29
鑑賞時間 13:10〜16:25
座席 Q-14
芹沢さんは一人で抱え込んでしまえば良かったんですが、この“仕事”には多数の人間が絡んでいたのでああなって行った経緯も納得出来ました。ロバートが闘う気力を見せなかったのもこの辺が理由じゃなかったんでしょうか、自分一人で引っ被れる責任じゃないんですがね。