「ムロツヨシによるムロツヨシのための作品」身代わり忠臣蔵 callさんの映画レビュー(感想・評価)
ムロツヨシによるムロツヨシのための作品
まさか小学生の子供が見たがるとは思わなかった。たぶんムロツヨシのせい。
内容はムロツヨシでした。
忠臣蔵を子に教えるために役に立ったので個人的には良し。
ところでここのレビューではラグビーへの批判が多々ありますね。
さて、諸兄はラグビーの起源をご存じでしょうか。
イングランド人が敵の将軍の生首を蹴り合ったのが元々です(※諸説あり)
なので、首を奪い合うというこのシーンをラグビーでパロるのは
「元ネタを知っているよね?」という教養の期待だったのでしょう。
が、それを知らなかった人はもちろん知っている人でもちょっとこのシーンでこれは…と眉をしかめたと思います。
あのシーンは、ネタとして成立するかどうかと言えばネタとして成立するのですが、
それがウケるか、受け入れられるかという点から考察する必要があったのではないかと。
もちろん、そのクビは散々に悪役であることを印象付けられていましたし、その流れでは何されようとも自業自得に違いないのでしょう。
が、皮肉にも視聴者はあの首を「ムロツヨシ」と見てしまう可能性がありました。
前半はわがままながらも狂言回しで好感度を稼ぎ、後半に入っては聖人ムーブをかましまくって視聴者の心を掴んだムロツヨシです。
それまでのストーリーでは悪逆非道な兄の「身代わり」となり、
吉良上野介その人としてはそれまでの総スカンムーブを挽回して臣民から好かれるお殿様になっていたムロツヨシです。
当然、視聴者の好意はムロツヨシに向けられていたのですが、
ラグビーが始まったとたん(気づいている人は多々いたにしろ)その好感度あふれるムロツヨシの首をラグビーしはじめたのです。
これは素直に気分が悪い。
で、そうじゃないよってネタ晴らしをした後でもそのクビはムロツヨシなのです。形状的に。
そう簡単に切り替えられる人ばかりではないでしょう。
ものすごく皮肉な話です。
暗君描写されている吉良上野介の身代わりとして登場した好感度の高いムロツヨシは、
暗君に向けられた怨嗟の「おしおき」をも身代わりしてしまい、結果、映画の後味を悪くしてしまったのでしょう。
その一点のみ残念なところでした。
個人的に
「忠臣蔵でものすごい悪役とされている吉良上野介、地元では名君と言われた吉良上野介」の両方の噺を説明できるいい映画ストーリーだなと思いました。