「Unstoppable」キリング・オブ・ケネス・チェンバレン ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Unstoppable
10年以上前に実際に起きた警官による銃撃での殺人事件をもとに作られた映画で、チェンバレンさんが警官に殺されるまでの90分を一言一句誤魔化さずにストレートに紡いだ作品です。
チェンバレンさんが誤って医療用通報装置を起さてしまい、警察官がやってくるけれど、実際は何も無いので帰って欲しいというのに警察官たちは一向に帰ろうとせず、それどころかドアをこじ開けようとする…といった感じはじまりで実話も進行していきます。
警察官・消防官のほとんどが性根が腐っています。特にリーダー格とガムばっか噛んでる1番のクソ野郎は時間が経過するごとにイライラ度は爆発していきます。
最初はなんでこの爺さん出てこないんだろう、仕事が進まないといったイラつきだけだったんでしょうけど、段々これだけドアを開けないのは人を隠してるのでは?薬を隠しているのでは?と妄想を働かせて、その上でドアを開けようとする行為に及んでいきます。
チェンバレンさんもケアセンターの人も帰ってくれと警察署に送ったと何度も何度も言っているのに、自分たちの正義という名の妄想で挙げ句の果てに殺そうとまでするもんですからグーの手が出そうになりました。
警察官の中では同じ黒人である方とロッシしか良心的存在がいません。
特にロッシは学校勤務から警察官になったばかりという事で勝手は分からないけれど、早朝にガンガンドアを叩いたりする行為を止めようとしますが、新人は黙ってろ的な事で止められたりしてアクションを起こせないもどかしさがひしひしと伝わってきましたし、なんとか説得を試みようと1人で屋上まで登ったのに消防隊か警察官のどちらかか分かりませんが急かしてきてチェンバレンさんに警戒されてしまい膠着状態になってしまったりと、一番チェンバレンさんを真摯に助けようとしたのに白人主義優先の奴らに阻まれまくっていて観ているこちらもヤキモキしていました。
ロッシさんが現在警察官として過ごしているのかは分かりませんが、こんな現場を体験したあとは嫌になって違う職に就いてるかもしれません。彼のような人こそ警察官であるべきなのに…。非常に悔しいです。
ドアをこじ開けるという前代未聞の行為に及んだ挙句、ガム男が黒人差別の言葉をガンガン発して(しかも実際に録音されていた)、ドアを強行突破して心臓病を抱えてるチェンバレンに何人も覆い被さり、それでいてガム男が銃で撃つ…。タイトルからチェンバレンさんが殺されるまでの時間を描く作品だとは分かっていましたが、ここまで酷い終わり方とは…。
ここ数年でも白人の警察官が取ってつけたような理由で黒人を捕まえ、逃げようとしたら殺すという事件をニュース越しとはいえ聞いた時はかなり衝撃的だったのですが、チェンバレンさんの事件があったにも関わらず、現代でも起きてしまうというのがどうにも信じられなかったです。言い方はアレですが、チェンバレンさんの犠牲を反面教師にして少しは学ぶと思うんですが、そんなことなく高圧的に接する警官がまだまだいるとは…多様性を謳っている割には根幹は何も変わってないのかなと悲しい気持ちになりました。
エンドロールに入る前に実際のチェンバレンさんの抵抗する音声が鮮明に残されており、警官の罵詈雑言までしっかり録音されているにも関わらず誰も罪に問われなかった事には怒りを通り越して呆れてしまいました。あれだけのことをしておいてのうのうと今も生活している、多分でしょうけど反省もしてないでしょうし、今作が公開された時は気が気じゃなかったでしょう。
今作公開後に裁判が再開されたという記事を見たので、今作の力が強く働いてくれたんだなというところは嬉しかったです。
人種差別という今も昔も変わらず残り続ける悪しき文化について映像を通してでも劇場でこそ体感すべき作品だなと思いました。
鑑賞日 10/3
鑑賞時間 10:00〜11:30
座席 H-2