「期待した内容とは違ったが、迫力の合戦シーンは驚くべきクオリティ❗」ナポレオン kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
期待した内容とは違ったが、迫力の合戦シーンは驚くべきクオリティ❗
黒澤明が『影武者』『乱』で到達したような、巨匠といわれる大作家の中でも一部の巨人だけが登りつめる高みにリドリー・スコットは達しているのかもしれない。
そこは、“面白い映画を作る”のとは別次元の、だが、得体のしれない迫力をスクリーンに浮かび上がらせ、老いてなおアヴァンギャルドな世界を創造する孤高の領域なのだろう。
若き軍人ナポレオン・ボナパルトがマリー・アントワネットの処刑を離れて見つめている革命の日から、彼が軍事独裁政権を樹立して初代皇帝に登りつめ、浮き沈みの後に復活し、100日天下を終えて流刑地で没するまでの波乱の人生を追っている。
が、リドリー・スコットの興味は英雄譚にではなく、歴史のうねりを背景にした、天才軍人と妻ジョセフィーヌの一途で変質的な関係性に向いていた。
戦争で地位を築き、戦争で没落したナポレオン。
「トゥーロンの戦い」から「ワーテルローの戦い」まで、彼のターニングポイントとなった戦いがいくつか描かれる。
映像的には「ピラミッドの戦い」の大パノラマが壮観。
「アウステルリッツの戦い」の氷の湖は恐ろしいまでの迫力で、特殊撮影が凄まじい。
「ワーテルローの戦い」では連合軍のメカニカルな陣形の動きをユニークに描いている。
歩兵が鉄砲を撃ちながら行軍する様は『バリー・リンドン』(’75)を彷彿させる。
ナポレオンが侵略戦争に傾倒して多くの犠牲を払ったことは説明されるが、フランス国民のナポレオンへの評価の変化はほとんど説明されない。また、ナポレオン自身の野望の広がりと迷走に陥る人物描写も薄く、ジョセフィーヌとの不可思議な関係の描写に神経は集中している。
いわゆる史実は理解していることを前提としていて、その説明に尺を割くことはしないのだ。
この映画のPRにある「英雄か、悪魔か」というテーマではないように感じた。
それでも、皇帝の地位を追われたナポレオンが武装蜂起してフランスに乗り込む場面では、国軍兵士たちが皇帝として迎え入れる様子を劇的に描いている。
ロケーションでは、圧倒的なダイナミズム中で画面の隅々まで緊張感が行き届いており、さすがだ。
一方、屋内・野外での人物の近影では、シチュエーションごとの光を意識した繊細なカメラワークで、俳優たちのパフォーマンスを引き立てている。
ルネサンス絵画のごとき圧倒的な画作りと、凡人観客を置き去りにする悠々自適な巨匠ぶりを発揮した映画である。
本作観て来ましたが、レビュー書くには至らず、KAzzさんのレビューを拝読させていただいて数々の戦いがわかりました。
冒頭のギロチン、怖かったです。
西洋問わず昔は、処刑方法が、
同じく首を離しますね。確実かもしれませんが。🦁