「英雄である前に、人であれ」ナポレオン 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)
英雄である前に、人であれ
自由、平等、博愛という名の暴力を駆使、大陸の覇者として、歴史に刻まれるナポレオン。その気になれば、完全無欠のヒーローにできたはず。でもそう描かなかったのは、リドスコおじさんの意地の悪さと云うか、優しさと云うか…。
私、良く知らないですけど、戦場の空気を読むのが、天才的なヒトだったようですね。歩がいくら取られても、飛車が使えるタイミングまで、平然と消耗させるあの冷静さは、凡人にはちょっと…。ただ歳を経るにつれ、自分の才能に過信するあまり…。
戦闘シーンは、圧巻の一言。でも、爽快感が何処にもない。むしろ悲壮感に覆い尽くされている。どう考えても、現在も続く、あの凍てつく大地を見ている気分に…。戦争に正義なんてない。あるのはただ、ヒトの死のみ。
エンディング、戦の天才として1人、ナポレオンが後世に名を遺す代償としてカウントされた、あの数字。あれこそ、私達が覚えておく数字。と云うか、あの数字こそ、リドスコおじさんが本当に見せたかったものなのかも。(そして、あの数字のカウントは、未だに止まらないという現実…。)
そんなボナパルトおじさん、奥さん大好き。奥さんには、頭が上がらない。奥さんの前では、単なる変態オヤジ。そういう二面性って、誰もがあるので、あ、この人も、実は変態なんだって分かると、ちょっとヒトらしさを感じて安心できますね。時の為政者の中には、笑って后を斬首した者もいるそうです。それを思えば、ボナパルトおじさんは、愛すべきスケベ親父ですよね。きっとリドスコおじさん、歴史上の偉いヒトも、実はスケベ親父…ではなくて、人間らしさがあるんだよって、伝えたかったのかな。
英雄である前に、人であれ。
追記
「あげまん」
リドスコおじさんの映画は、どんな苦境も、強靭な意志で立ち向かう女性がよく登場します。きっとリドスコおじさんの理想像なのでしょう。そんな、あげまんの嫁と離縁したとたん、さげちんになったボナパルトおじさん。
この映画観て、反省してね。