「渇愛」ナポレオン ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
渇愛
早朝からの仕事終わりでしたが、すこぶる元気だったので来週観る予定だった今作を鑑賞。ただ3時間近いと多少眠気が襲ってくる可能性があったので、ポップコーン片手に劇場へ。味はキャラメル一択です。
ここ最近のリドリー・スコット監督作品は合わないなと思ってましたし、予告込みで3時間近い上映時間がどうなるのかなと思ったら、やはり引っかかるところの多い作品になっていました。
ただ学生の頃に使っていた教科書をチラチラっと読んでぼんやりナポレオンの事を考えてから挑みました。
全体的に行間が無い映画だなと思いました。展開と展開の間が全く無く、次から次へとナポレオンや戦争の描写が挟まれるので、字幕で観たのも相まって混乱してしまいました。
ただ戦争での絵面の派手さや、ナポレオンの人となりを堪能できるという思っていたものとは違う楽しみ方ができたのは良い収穫でした。
序盤、かの有名なマリー・アントワネットのギロチン処刑から始まるというインパクト大なシーンから映画は始まります。小中高とこのギロチンについて授業で習っていたので、世界史で真っ先に思いつくのがこのギロチンという不謹慎さ笑。そのシーンが頭から来たのはちょっと懐かしい気持ちになれました。
ナポレオンという男の勇姿ではなく、ナポレオンという男の裏側を見せるというのは面白いと思ったんですが、ナポレオン実は面倒なやつだったんだなというのがシーンを追うごとに明らかになっていきます。
ジョセフィーヌという女性に一目惚れってやつで結婚までたどり着くというど根性っぷりまでは偉く熱い男なんだなと思いましたが、結婚生活が始まってからはひどいまでの嫉妬心剥き出しで生きており、浮気したジョセフィーヌが悪いとはいえこれでもかってくらい服従させようとしたら、急に幼児退行して甘えたかと思いきや再びのSっ気発動と、いわゆるヤンデレってやつだったというのは意外だなと思いました。
対するジョセフィーヌはどこか掴みどころのない人物のような描かれ方で、フワフワしているわけではないんですが、芯が通っているようには見えない、懺悔したかと思いきや、支配下に置こうとする強さを見せたりと、どこに感情を委ねればいいのか分からない女性になっていました。史実もこうだったのかは完璧には定かではないんですが、どこかミステリなところに惹かれてしまうというのは分かるなーと思いました。
歴史物ではあまり描かれない性行為のシーンもバッチリ収めており、直近の「首」や「レジェンド&バタフライ」もそのシーンがあったので、最近は人間らしさをより描くのがトレンドなのかなと思いました。
机の下からぬぼ〜っと襲ったり、ひたすら高速ピストンしたりとナポレオンの性事情が垣間見えてクスッと笑えました。
ただその登場人物の微妙なシーンをかき消すくらいには戦闘シーンは素晴らしかったです。
個々のぶつかり合いよりもド派手に砲弾をぶちかまして兵士たちに当たってはグチャグチャになり、氷の上が舞台になったらそこへ目掛けて撃っては崩れ落ちてそのまま溺れたり、馬好きとしては辛かったんですが、馬の胸部分が撃ち抜かれたりと、エンタメ性を持ち合わせつつも、人は簡単に死ぬというリアルな描写を含め見応え抜群でした。
軍隊を指揮する立場としては最高の振る舞いをするのに、いざ自身が突撃するとなるとモタモタしたり、剣を振り回すのにも一苦労、ナポレオン自身の戦闘能力はそこまで高くなかったという一面を観れたのは一つ勉強になりました。
ナポレオン自身の最後はなんとなく知っていたので、戦闘での流れも悪くなり、島流しされて、そのまま過去の栄光にしがみつき、ジョセフィーヌのことを口に出して倒れるという英雄と呼ばれた男の最後としては物悲しいものだったんだなと思いました。
尺の長さだったり、ダイジェストのような感じで物語が進んでいくのは残念でしたが、戦闘描写には文句なしですし、ナポレオンという人となりを体感できたのは良い経験でした。
この手の作品はドラマでやった方がいいと思ったりしますが、自分は映画の尺ですっかり慣れきっているので、ドラマのように合計で600分くらいあると考えると見る気が無くなっちゃうので、なんやかんや映画でやってくれて良かったなと思います。
鑑賞日 12/7
鑑賞時間 16:40〜19:30
座席 I-7