「ナポレオンの半生をサラッとなぞった映画」ナポレオン 臥龍さんの映画レビュー(感想・評価)
ナポレオンの半生をサラッとなぞった映画
フランス革命から人生の幕を閉じるまでの長く濃密なナポレオンの半生をサラッと掻い摘んで描いたような映画です。
全体的な構成としては【ジョゼフィーヌとの結婚生活】【砲兵を駆使した優れた戦術家としての側面】【皇帝にのし上がり、没落して生涯を閉じるまでの軌跡】の3つが物語の中心となっています。
ただし、全体的にざっくりとした印象は拭えないので、ナポレオンについてなんの予備知識もなしに映画館へ行くと、流れを掴めず迷子になる可能性があります。自分は世界史に疎いので、ウィキペディアでナポレオンの生涯を予習してから映画館へ行ったのですが、流れを把握するうえではすごく役に立ちました。
特に分かりにくいのはフランスと周辺国との関係性で、フランスはイギリスやオーストリア、ロシア、プロイセンといった国々と戦争や同盟を繰り返すのですが、大まかにでも流れを知っておけば迷子になりにくいと思います。
【ジョゼフィーヌとの結婚生活】については、出会いから懇意になり結婚、妊活、離婚、死別まで時間を割いてかなり丁寧に描かれています。本作はジョゼフィーヌという妻の存在がナポレオンにとっていかに大きなものであったかを訴えたかったのかもしれません。
実際ナポレオンが最期に発した言葉は『フランス!軍隊!軍隊のかしらに…ジョゼフィーヌ!』でしたので、やはりその存在は大きかったのでしょう。本作の主人公はナポレオンとジョゼフィーヌといっても過言ではないくらい結構な尺が取られていましたし、存在感がありました。
【砲兵を駆使した優れた戦術家としての側面】については、数多くの戦争を指揮したナポレオンですが、この映画ではトゥーロン攻囲戦、アウステルリッツの戦い、ロシア遠征、ワーテルローの戦いが取り上げられています(エジプト遠征もありますが、戦闘シーンの描写はほぼない)。
トゥーロンとアウステルリッツは、ナポレオンの戦上手な戦術家としての側面を垣間見ることのできる象徴的な戦争で、ロシア遠征とワーテルローはナポレオンにとって人生の分岐点となった重要な意味を持つ戦争です。
ただし、ワーテルローの戦いなどはそれ自体を題材とした映画があるくらいですので、2時間50分の尺に4つの戦いを収めた本作に関しては、戦争の描写に物足りなさを感じる方もいるかもしれません(特に予告編はほとんど戦争シーンでしたので)。
ただ、個人的には砲兵を駆使したナポレオンの戦術、ナポレオンが得意とした奇襲戦術は、映像の迫力も相まってすごく見応えがありましたし、この映画で最も楽しめたシーンでした。
【皇帝にのし上がり、没落して生涯を閉じるまでの軌跡】についてはざっくり言えば、連戦連勝でとんとん拍子に出世したけれど、ロシア遠征とワーテルローで歴史的な大敗を喫すると、みんな掌返してナポレオンを追い詰めたという感じ。だいぶざっくりした取り上げ方で、少々分かりにくい部分でしたが、映画としてそこまで尺を割いて取り上げる部分でもないのでしょうね。
映画全体としては戦争シーンは見応えがあるが、全体的には物足りなさもあり、可もなく不可もなくといった感じですね。