「ナポレオンとジョゼフィーヌのレジェバタ」ナポレオン ぎんぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
ナポレオンとジョゼフィーヌのレジェバタ
エイリアン、ブレードランナー、グラディエイター、オデッセイ・・・巨匠リドリー・スコット(85歳)の描く「ナポレオン」さすがの大傑作でした!
(ちなみに「翔んで埼玉2」のポスターで白馬に乗ったGACTの元ネタがナポレオンの肖像画です)
この映画は「我が輩の辞書に不可能という文字はない」のナポレオンではなく、妻ジョゼフィーヌとの愛の葛藤に悩むナポレオンを描いています。
マリー・アントワネットのギロチンから始まるこの映画。「首」を見た後だったので、うわっまた首かよと思いましたが💦
「英雄か悪魔か」ナポレオンが率いた戦争での死者は300万人。まさに死神と言ってもいいでしょう。戦闘シーンのスケールと迫力はまさにケタ違い!そして徹底的に無慈悲で冷徹。
特にエグいのが「アウステルリッツの戦い」敵を誘い出すように兵を動かして湖の真ん中に出てきたところで砲弾を打ち込み敵をまとめて凍った湖の中に叩き落とす。なんてヒドいことを!
草原の真ん中に巨大な穴を掘って湖を作り出して撮影したそうなんだがそこまでする?そんなことが許される監督もそうそういないでしょうね。
「本能寺の変」とか「関ヶ原」とか日本人ならあぁアレねとわかるけど外国人にはさっぱりなのと同じように「・・・の戦い」と言われても良く知らないんだけどきっと向こうでは誰でも知ってることなんでしょう。
同じようにナポレオンとジョゼフィーヌの逸話もフランス人なら誰でも知ってる話なのかもしれませんが、僕が知ってるのはなんか悪妻で有名らしいというくらいです。
6歳年上で2児の子持ちだったジョゼフィーヌに一目惚れして結婚したナポレオン。
いや、どんだけジョゼフィーヌのこと好きだったんですか?遠征先のエジプトの戦場から毎日手紙を書いていたそうで、きっと今だったら10分おきにLINEしてたことでしょう。
対するジョゼフィーヌはナポレオンがいないのをいいことに若い将校と不倫。浪費癖もすごい典型的な悪妻。そして妻の浮気を知ったナポレオンは戦争をほっぽらかしてエジプトから帰ってくる始末。
ちなみにエジプトでピラミッドに砲撃するシーンがありますがアレは都市伝説です。ナポレオンはピラミッド撃ってません。
あと、マリーアントワネットの処刑時の髪は短かったとか、ナポレオンはその時他の戦場にいて処刑は見てないとか色々あるみたいですが、当然ナポレオン研究の第一人者や歴史学者の監修を受けているわけで、史実と違うとのイチャモンはわかってる上での映画上の創作なのでしょう。監督曰く「お前その場にいて見てたわけでもないのに黙ってろ」です。
「私がいなければ自分には何もないと言え!」「私がいなければあなたは何者でもないと言いなさい!」とお互いに言い合う歪んだ愛は続き、ナポレオンはかなり嫉妬深い偏執的な男だったようですがまぁ愛の形は人それぞれ。「正欲」のように人から見て普通ではなくてもそれはそれでアリですからね。
とにもかくにもジョゼフィーヌの存在がナポレオンの原動力になっていたのは間違いない。彼女がいなかったらナポレオンは普通の将校で終わったかもしれませんね。
皇帝になった後のナポレオン。
ジョゼフィーヌも心を入れ替えて良き妻、皇后としてナポレオンに尽くすのですが、不妊を理由に離婚することになってしまいます。跡継ぎができないというのは国家にとっても一大事だったのでしょう。
そう考えると日本の大奥というのは良くできたシステムで(跡継ぎは本妻の子でなくても構わないのでとりあえず作っとく)これがあったらナポレオンも大好きなジョゼフィーヌと別れなくてもよかったのにね。とは言え離婚後もジョゼフィーヌがちゃんと何一つ不自由なく暮らせるようにして時々訪ねていったりしていてほんと好きだったんですね。
その後の戦いでロシアの裏切りにあい多くの戦死者を出した責任を取らされて島流しの刑にされるのですが、なんとこの間に裏切った張本人のロシアの将校がジョゼフィーヌを口説きにジョゼフィーヌの家へ。て、なんなんコイツ!それを知って激怒したナポレオンは島流し先で強引に船を手配して勝手にフランスへ戻ってくるという…。
戻ってきた後のナポレオンは再び権力者として戦いに身を投ずるのですがその間にジョゼフィーヌが病死。
ジョゼフィーヌ亡き後のナポレオンは何かが抜け落ちてしまったのかのように、敵に「彼はまともに戦えていない」とまで言われ、ワーテルローの戦いで大敗を喫し再び島流しに。そして流刑の地で生涯を終えます。最後の言葉は「ジョゼフィーヌ・・・」だったそうです。(そこは映画にはないけど)
まさに「私がいなければあなたは何者でもない」になってしまったわけです。