「最後まで観たら、すごい傑作だった。」ほかげ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
最後まで観たら、すごい傑作だった。
映画で戦争を伝えたい、
そう話す塚本晋也監督。
鮮烈だった「野火」に続き大きな仕事を成し遂げた。
現在64歳の塚本晋也。
戦争体験は私たちと同じに、書籍、映画作品、ニュース画像などからの
疑似体験だと思われる。
なのに、なのに、このリアルな戦後直後の人間のリアル!!
なんなんだ!!凄過ぎる。
そこに復員兵の《森山未來》の飄々とした存在。
戦争孤児の《塚尾桜雅》(今9歳になったばかり、撮影時は8歳か!!)
《趣里》の役名は女。
趣里の作品に身を捧げる熱演も見事だった。
この3人を軸にストーリーは紡がれる。
やはり衝撃的なのは後半の片腕の復員兵のパートからの終盤。
眠気も吹っ飛んだ。
この映画の出演者は、女(趣里)
戦災孤児(塚尾桜雅)、テキ屋の男=森山未來(復員兵)
中年(利重剛)
優しそうな男(大森立嗣監督)
など固有名詞のない人間たちなのだ。
ところが片腕の復員兵は突然名を名乗る。
アキモトシュウジの名を出して、ある男を呼び出すのだ。
呼び出し役は戦災孤児の少年。
その前に伏線がある。
拳銃・・・戦争孤児が死体の側に転がっていたのを拾って
宝物にしていた。
復員兵はそれを目当てに孤児に近づき
ある目的を果たすのだ。
呼び出された男はアキモトの戦地での上官。
“おうアキモト、久しぶりだな“と上官。
“その節の、礼と詫びと償いに来ました“と復員兵。
そして4発の銃弾が上官の男に撃ち込まれる。
1発目は、
タナカ・ヒデキの分です。
2発目、
ニイジマ・タダノブの分です。
3発目、
ナカタ・シゲキノの分です。
ナカタは貴方の命令で俺が殺しました。
どうしても捕虜を銃剣で刺せなかったナカタ・シゲキを俺が
殺しました。1番の親友でした。
タナカもニイジマも貴方の命令で捕虜を刺殺し、女を犯し、
俺は何十人も、人を殺しました。
“うなされのたうち回りつつものうのうと生きています。“
4発の銃弾はわざと急所を外して撃たれる。
地獄の痛みを長く耐え、自分の罪と向き合えと言うことだ。
上官は“戦地のことではないか?“
そう言う。
(実際にそうかも知れない。忘れる者は忘れる、
(自分の中で折り合いを付けて
(涼しい顔で妻とちゃぶ台を囲み和やかに暮らしていた)
森山未來の変幻自在な演技は、片腕の復員兵に血を通わせ
時に軽妙、
時にユーモラス、
時に狂気を帯び、
この作品の音楽の石川忠もすごい仕事をした。
この音楽無くしてこの映画の魅力は半減したと思える。
時に不穏に、時に歪み、時に脅す。
塚本晋也監督は、
監督・脚本・撮影・編集の4役をこなしている。
いい作品には気合の入った役者の本気の演技が見れる。
肩に力の入った趣里に較べると、森山未來のチカラの抜き方が
絶妙で対照的。
やはりキャリアの違いを見せつけたが、
それにしても子役の塚尾桜雅。
9歳足らずでこの演技。末恐ろしい天才子役の出現か!!
テーマの「戦争と人間」そのものだ。
前半にもう少し引力が有れば、と悔やまれる。
森山未來からの後半の力強さ怒涛の展開。
前半は説明台詞が多く室内ばかりなので、
動きが少なく、暗く重い。
惜しいと言えば惜しい気がするが、文句なしの傑作。
コメントありがとうございます😊
北海道も暑いのですか。だいぶ温暖化が進んでいますね。
晴天なら2,3時間で乾きますよ。取り込むだけで汗💦何回も着替えます。『野火』どちらの作品も観るのに勇気いりそうです。『ビルマの竪琴』は怖くないと思いますが。観て来られた作品、上映館限られていますね。このサイトで作品紹介されていますか。
おはようございます😃
共感ありがとうございました😊
本作一回目途中で寝てしまい、
森山未來のシーンをやっと観て、
琥珀糖さんのタイトル納得。
戦死には病死や餓死もあり『野火』のようなのも本作のようなのも、つくづく兵士に行かれた方々
気の毒としか言いようないです。
どのようにして調べられたのでしょうね。
琥珀糖さん
お気遣い有難うございます。
やはりそうした方がいいのかも知れませんね。。
『 NETPAC賞受賞 🏆 』、本当だ 👀
知りませんでした。教えて頂き有難うございます。
琥珀糖さん
おはようございます (^^)
コメントを頂き有難うございます。
それが、戻った、訳ではないんです。
あなたのレビューにコメントがつきました‥ といったような感じのメッセージが届き、前のアカウントに頂いた幾つかのコメントに気付く、といった感じで‥。
お気遣い有難うございます。
『 宝物 』にしていた『 それ 』が、作品に怒りと悲しみを強烈に見せ付けるうねりとなっていましたね。
こんなにも激しい作品を撮られた塚本晋也監督ですが、優しげな表情で穏やかに語っていらっしゃるお姿が印象的な監督さんでした。
多くの若者に観て貰いたいですし、色んな国の人に観て頂きたい作品ですよね。