「元ミスコン女王にモデルがいるのかは知らないが、テディベアと名付けたマダム隣のおっちゃんにはモデルがいる」サウンド・オブ・フリーダム Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
元ミスコン女王にモデルがいるのかは知らないが、テディベアと名付けたマダム隣のおっちゃんにはモデルがいる
2024.10.23 字幕 TOHOシネマズ二条
2023年のアメリカ映画(131分、G)
実在の捜査官のエピソードを基に描かれる児童人身売買の闇を描いたクライム映画
監督はアレハンドロ・モンテベルデ
脚本はロッド・パール&アレハンドロ・モンテベルデ
原題の『Sound of Freedom』は「自由の音」で劇中に登場するセリフのひとつ
物語の舞台は、ホンジュラスのテグシガルバ
元ミスコン女王のジゼル(Yessica Borroto Perryman)はある家を訪ねた
そこには少女ロシオ(クリスタル・アパリチ)と弟のミゲル(ルーカス・アヴィラ)がいて、ジゼルは彼女たちの父ロベルト(ホセ・ズニーガ)に「子どもをモデルにしませんか?」と勧誘を行った
ロベルトは了承し、二人を連れてオーディションが行われるホテルの一室へと向かった
オーディション用の写真を撮ることになり、約束の時間まで待つことになったロベルトだったが、戻ってみたら部屋には誰もおらず、そこにいた数十名の子どもたちも忽然と姿を消していた
一方その頃、カリフォルニアのカレキシコでは、国土安全保障省のエージェント・ティム(ジム・カヴィーゼル)が相棒のクリス(スコット・ヘイズ)とともにある男の家宅捜索を行なっていた
そこには小児性愛の容疑者オシンスキー(クリス・アヴェデイシアン)が住んでいて、彼を逮捕するに至った
だが、オシンスキーから有力な情報を得られなかったティムは、上司のジョン(カート・フラー)にある作戦を進言する
ティムは小児性愛(ペド)のふりをして彼の信用を得て、そして情報を掴み取ることに成功する
そして、彼から仲介人の情報を入手し、ドン・フエゴ(マニー・ペレズ)と一緒にいた少年ミゲルを確保するに至った
映画は、ミゲルから情報を聞き出すティムが描かれ、彼には行方不明のままの姉がいることを知らされる
そこで、コロンビアに乗り込んで、現地の警部ホルへ(ハビエル・コディーノ)に協力要請をする
ティムは、ホルへからバンビロ(ビル・キャンプ)という男を紹介される
彼は児童売買の組織から子どもを買っては解放するということをしていて、麻薬カルテルの元資金洗浄係をしていた
バンビロは、ジゼルと面識があり、彼女はナイトクラブの経営者カラカス(グスタボ・サンチェス・パーラ)などを通じて児童売買を斡旋していることがわかった
だが、ジゼルは知人や紹介なしでは合わない女と言われていて、そこでティムはある作戦を思いつく
それは、地元の富裕層のパブロ(エドゥアルド・ベラステーギ)の協力を取り付けて、会員制のサロンを展開しようというものだった
そして、そのサロンに必要な子どもをカラカスに集めさせ、そしてジゼルを誘き出すことに成功するのである
映画は、実話ベースということだが、どこまでが実話かはわからない感じになっていた
当初はオリジナル脚本として制作していたところにティムを嵌め込んだ形になっていて、児童売買組織の手口とか、その経路などはリアルなのだと思う
だが、姉弟の救出エピソードは盛った感が強くて、最後の反政府組織のアジトからの脱出は実話とは思えない
反政府組織のボスが小児性愛者で、そこに単独で乗り込んで、ボスを始末して脱出すると現実では何が起こるのか
おそらくは、手下どもがボスの仇を探さんとばかりに動き出し、伝導団も皆殺しにされる可能性はあるし、コロンビアの比較的平和な場所でも暴力行為が横行するだろう
そう言った影響とかを完全に無視してシナリオを作っているので、さすがに実話でしたを信じる人はほとんどいないように思えた
映画のエンドロールでは主演からのメッセージがあり、「QRコードをかざしてね」みたいなやり取りがあるのだが、制作サイドがそのメッセージを発信したら負けだと思う
語り手が語りたくなる映画を作るのが本懐であり、それを促すような発言をすると反発を喰らう
そこにモデルの人が登場しないところが色々とアレなのだが、そのあたりは英語版Wikiでもググってね、という感じになっている
5年公開が遅れたというものの、本当の理由はなんだったのかなあと思ってしまった
いずれにせよ、実話ベース云々を抜きにしても、風呂敷の畳み方が思った以上に雑のように思えた
現地の警察でも力が及ばないところに売られたという設定は映画的すぎて、本当の出来事だとしたら世界的なニュースになっていると思う
麻薬の密売の人員確保のために人身売買の被害者がいる、というところまではあり得ても、反政府組織のボスが小児性愛者で、さらにそれを助けにきた「アメリカの一般人」に殺されたとなれば組織も黙ってはいないだろう
下手をすればコロンビア政府と全面戦争に入ってしまう可能性もあったりするので、もう少し現実路線にシフトしたほうが良かったと思う
数年後に本当のところが判明する可能性も低いので、人身売買を身近に感じてもらおうとするならば、もっとリアル路線に寄せたほうが良かったのではないだろうか