「包丁のような身近な狂気」Chime 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
包丁のような身近な狂気
料理教室で講師の仕事をしている松岡。
その料理教室には1人変わった生徒がいた。
彼の名は田代。田代は松岡に「チャイムのような音が聞こえる」と何度も訴えるが松岡は特に相手にしない。
すると……。
全然意味わかんねぇけど最高に不気味で恐ろしくて面白い!
うん、大好きです黒沢清。
私が求めている恐怖ってまさにこういう恐怖。
不快すぎて鑑賞中に今すぐにでも劇場を抜け出して早く帰りたいと思える作品は、大体帰り道にまた観たい欲を掻き立てられる良作だと勝手に思ってる。
短編だからこそ、鑑賞後に大満足なようなまだ少し足りないような、そんな感じも最高だった。
繰り返しになるが、終始意味不明である。
何もないところにも何かがあるし、平凡な人かと思えば突然突飛な行動を取りだす。
狂気に溢れた日常は「おかしいのはあなただよ」と言わんばかりに平然と私たちに歩み寄ってくる。
画面外で繰り広げられる怪異と画面内に溢れかえった人間の恐ろしさで我々は逃げ場を失い、気づけば恐怖の中に立ち尽くしているのだ。
そして、これの何が怖いって、限りなく不自然なのに自然なところ。
狂人だけの特別な狂気ではなく、誰しもがどこかに持っている狂気。
もしかしたら自分も何かの拍子にフッとこういうことやってしまうかも知れないと思ったら、自分さえも恐ろしくなってくる。
皆さんも、理性というストッパーが外れたら……って思いません?
まあ、ヤバいかもって自覚あるだけいいのかな……?
これから何が起こるのか分からない期待感と不安感。
感情のない殺意が1番怖い。
あの人がいきなり…なシーンで前の方のお客さん声出てたw
黒沢清、よくもやってくれたなと終映後ニヤニヤが止まらなかった。
光と音の演出も素晴らしかった。
これは『Cloud』の期待が高まる!