ヒンターラントのレビュー・感想・評価
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予想よりかなり良い。
背景が全編合成で歪んだ街がカリガリ博士的でいい感じだなと、あんまりストーリー期待せず美術目当てで見に来ましたが、フィンチャーの「SEVEN」系サイコスリラーで面白かった。ロカルノで観客賞取ってる見たいですね。
第一次対戦後、ソビエトに捕虜になってた敏腕警部がウィーンに戻って来た所から始まります。謎の猟奇連続殺人にまきこまれ、成り行きで古巣の警察と行動を共にし、、、自分の過去に向き合い悩むお話です。
最近は巨大LED背景のスタジオなんかもあり、もっとCGで動かしたり、リアルに見せて面白い事出来るんですが、敢えての静止画が、なんかマグリッドの絵の中の街に居るみたいな寂しさを舞台セット的に雰囲気盛り上げてくれます。暗いウエスアンダーソン、Sin Cityって感じかな。
お勧め出来る映画です。
ここは別世界
第一次世界大戦後、ロシアでの捕虜生活を終え帰国したペーターと戦友たち。しかし祖国で彼らを待ち受けていたのは歓迎の声ではなく…。次々と変死していく戦友達の真相を追い求める物語。
ブルーバック撮影(?)という手法で独特な世界観を醸し出すミステリー作品。
物語としても、戦争と捕虜生活を終えてなお、英雄扱いされるでもなく苦しい生活が始まっていく厳しさや、謎のキーワードや誰が犯人なのか…といった、ミステリーとしても良質な印象。
その他、最初はいがみ合う2人が徐々にバディに…という展開も好きだし、尺も丁度良い。ホント、ワタクシの好きが詰まったような作品。
奥さんはねぇ…。惚れない自信があったんだと思う、なんて言われてもねぇ。本筋じゃないがここらへんの気持ちは理解できませんな。
そしてペーター達や犯人の物語も。
過ちを犯したが…正しい方法なんてなかった。。う~ん、深い。
犯人の気持ちもわかるし、委員会の気持ちも。じゃあ本当に悪いのはロシア?いやでも、それを言ったら戦争が始まったきっかけは?…責任を追及していけばキリがない。
キャラクターとしては、相棒となるセヴェリンがお気に入り。
でも、ペーターがそれだってこと…教会で狙わてたのに、そこでやっと気づくの(笑)?
ちょっと抜けたところが良い味だった。
全体を通して、とても面白かったけど、ミステリー作品はどれだけ観ても素直に騙されるワタクシが、本作はその話が出た時から、実はコレコレこうで…ってな具合に犯人を当てちゃってある意味拍子抜け(笑)勿論マグレですが。
後は、ブルーバックの世界観も美しく濃い味付けにはなっているものの、切張りしたかのように安っぽく見えてしまう所もあったし、こういうのはファンタジー作品とかならハマりそうだけど。
シンプルにストーリーが良かったし、そもそもオーストリアの街並みってただでさえ美しいですからね。
そんなこんなで、色んな印象を受けましたが、ミステリー作品は好きだし、要所要所で深く考えさせられるセリフやシーン出てきてとても面白い作品だった。
テンポはあまり良くない
北欧のミステリー系ドラマの様な面白さはあるものの、3.7評価ほどの作品ではなかったように感じた。
ストーリーも山場はあるもののいたって普通でドキドキも感動も薄かった。
戦争がもたらす差別や貧困の描写はとても良かったと思う。
現実と夢の狭間の様な映像美
ブルーバックを使った映像って事で、ほぼ合成みたいですが、その合成映像が独特で、
現実と夢の狭間の世界の様な印象を与え、いい味だしてます。
高い美的センスを全体的に感じ、音楽も演出も雰囲気も『ベネシアフレニア』に似てます。
スタッフがカブってても何も驚かない。
主人公がヴィニー・ジョーンズに似てると思うけど『ミッドナイト・ミート・トレイン』っぽい感じや、
最後の方では『セブン』ぽさを感じたりしました。
ホラーっぽいスリラーで、ミステリーです。
顔と名前が似てて混乱、話も少し理解できぬまま進んでいって混乱、最後まで観たら概ね理解できました。
少し分かりずらかったけど良作です。
映画スコアは、70~75点ぐらい。
特に期待した訳でなかったからか(失礼!)、とても良かった これはミ...
特に期待した訳でなかったからか(失礼!)、とても良かった
これはミステリー?
殺人事件は出てくるけれど、私にとってはヒューマンドラマ
すっかり入り込んでしまい、2度ほど泣かされた
迷ってる友達がいたら、見るよう勧めたい
美術が独特だけど、お話は割と普通
前情報一切無しで観た
全編ブルーバックで撮ったって知らないと、何だこの安い背景は?!って思うだろう、、と言うか最初そう思ったけどw狙ってる感があったので、そう言うものかなと思って観た。
絵本の様な美術を目指してるのかな?って思って観るのが良いと思います。背景はデフォルメされてて明らかに人物は浮いてるので、ある意味で舞台ぽいです。好き嫌い分かれそうなのでダメな人は注意!
終始歪んだ建物、狂ったパース、平行なモノが一切無い、水平線もずっと傾いててまともなショットは僅かしかないので、疲れるっちゃー疲れるwでも雰囲気は良かったです。
黒の濃い画面やちょっと凝ったカットの繋ぎは、ガイリッチーやフィンチャーぽさがあって好きだった。その辺好きな人にはオススメできるかも!何なら音楽もホームズぽさを出してたかもw監督が好きなんかな?
お話としてはミステリーぽい部分もあるけど、最後は特に複雑怪奇に絡んでくるような話では無い。
でもまあ、それくらいで良かったかも。変に謎解きゴッコがメインになると帰還兵としての意味が分からなくなりそうだしね。
女医さんが美人過ぎwてちょっと話が嘘っぽく見えてしまった。けど可愛かったなぁ…ので許す。
後方から
オーストリア発ミステリー作品。
歪に描かれた背景は美しく禍々しい。(必見)
シナリオの方もよく出来ている。
ただ動機がわかってからのラストまでの展開は、ちょっと急ぎ過ぎた感はある。
主人公の葛藤みたいなものをもう少し見たかった。
最近のハリウッドでは見ない作風。
ドイツ表現主義へのオマージュも
第一次世界大戦直後のウィーンでの帰還兵連続殺人を描いた歴史ミステリー。
よくできてる。オーストリア=ハンガリー帝国の崩壊後のウィーンの風景がブルーバック撮影で、そしてドイツ表現主義の傑作「カリガリ博士」を想起させる歪んだセット美術で描かれていて、当時の不安定で混乱した雰囲気を増幅させている。犯人を捜すために、元敏腕刑事で帝政国家に忠実だった帰還兵と社会主義者の若手刑事が協力し合う展開も面白い。
第二次大戦後にソ連に抑留された捕虜たちの話はいろいろあっても、第一次大戦後の彼らについての話を読むことはほとんどなかっただけに興味深かった。革命干渉戦争もあっただけに今まで映画にするには余りにも複雑すぎる状況だったのかしらん。
主人公はトルコ人の両親のもとにウィーンで生まれた俳優。時代は変わっている。
ビジュアルは見応えがあるが、ミステリーとしては今一つ
何と言っても強く印象に残るのは、シュールで陰鬱な背景映像だろう。
壁やら柱やら窓やらの平行だったり直角だったりするべきところが変な角度に傾いていて、戦争ですべてを失った主人公の歪んだ心象風景が見事にビジュアル化されている。
ただ、そんな絵画的な凝った映像には目を奪われるものの、連続猟奇殺人事件を巡るストーリーについては、あまり手の込んだ作りにはなっていないように思える。
何よりも、主人公自身が事件の当事者で、たいした推理や謎解きもしないまま、被害者の顔ぶれだけで犯人の動機が分かってしまうというのは、ミステリーとして物足りないとしか言いようがない。
その動機にしても、復讐するべき相手はあくまでも酷い仕打ちをしたロシア人であるはずなのに、共に戦争を闘った同朋を逆恨みするというのは、どう考えても筋違いで腑に落ちない。
しかも、それは、多くの収容所の仲間を助けるために、やむにやまれずやったことであると、ちゃんと犯人も理解しているのである。
その犯人にしても、それまで見たことのない「誰だっけ?」という人物で、意外性も驚きも感じられないのだが、その後、主人公と同僚の警部との会話に出できた人物であるということが判明して、ようやく「そういうことだったのか!」と納得することになる。
ここら辺のくだりも、もう少しスッキリとスマートに描くことはできなかったものかと、残念に感じてしまった。
その一方で、ラストの農村の風景は、それまでのブルーバック合成ではないロケーション撮影になっていて、悪夢から醒めたような開放感が心地よかった。
23-108
辛く長かった捕虜生活、
大戦により変わってしまった人間関係、
家族、我が家、街の様子。
全てが歪んでしまった世界が、
本当に歪んだ視覚として描かれる。
狂気と混沌の中で、真実を見るのは難しい。
重いテーマとストーリー、歪んだ背景、
最後に救いは残されているのでしょうか❓
全編ブルーバックの撮影という事で…
戦争を生き延びた帰還兵の現実世界とのギャップなアンバランス感が深い…全ての背景が歪んだ世界も最高にマッチ。映像にばかり気を取られていたらしっかりミステリー展開な犯人探し。そしてラストは思いもよらぬ展開にちょっと感動。面白かった。
観たい度○鑑賞後の満足度◎ 【戦争という国家犯罪から生じた新たな犯罪。加害者も被害者も戦争の犠牲者というのがせつない。ミステリーの形を借りて描く戦争の酷さ】
①背景の歪んだ書き割り、斜めに傾かせたカメラワーク、極力色彩を抑えた陰鬱な画面、戦前のドイツ表現主義の様な映画世界のなかで繰り広げられる凄惨な連続殺人。
②ヨーロッパの人にとっては、第二次世界大戦より第一次世界大戦の方が色んな意味でより深刻な意味合いがある、と何かの本で読んだことがある。
確かに、第二次世界大戦は、ユーラシア大陸の反対側で日中戦争、日米の太平洋戦争があったので規模が大きくなったわけだし、開戦前は連合国側にもナチスに親近感を抱く国もあったという裏事情もあるが、
割と好き
「全編ブルーバック」という情報以外、何もない状態で観賞。
割と混んでる!大きなスクリーンで正解!
絵画のような背景、粗野な主人公。連続殺人事件…。
「●●映画祭 観客賞」て聞いても「ふ〜ん」だけど、今回は受賞に納得。
ちょっとウルっとくるシーンも用意しつつ。観客を惹きつけるストーリー展開。
主役の男がいい味出してる。
これが線の細いイケメンとかだったら台無しですね。
直前に見た「ドラキュラ」があまりに酷すぎたのもあり、点は甘めかも…。
『カリガリ博士』の舞台美術を現代に再現させた、こだわりいっぱいの連続殺人ミステリー
もうポスターを見ただけで、これは何が何でも観ないとって感じ。
はたして、すごく面白かった!!
とにかく「絵画的」な映画だ。
「映像のセンス」というより、「絵画のセンス」で徹頭徹尾つくりこまれている。
それもそのはず、なんと本作、全編がブルーバック撮影らしい。
すなわち背景は「すべてつくりもののCG絵」なのだ。
そりゃあ、感覚が絵画的にもなろうというもの。
元ネタは一見してわかるとおり、『カリガリ博士』(19)や『巨人ゴーレム』(20)、『吸血鬼ノスフェラトウ』(22)といった1920年代ドイツ表現主義映画における「ゆがんだ」背景美術だ。
心理的要因で「ゆがんだ」形でとらえられた「世界の姿」を、実際に「ゆがめて」描写することで、視覚的に顕在化してみせようとする、きわめて実験的で悪夢的な手法。
不自然なパースと、ねじれあがるような形状で再構成された「ゆがんだ」背景セット。
本作ではその「ゆがみ」を、「ウィーンの街並の描写」にそのまま援用している。
多視点をひとつの画面に併存させたうえ、恣意的にデフォルメされた奇怪きわまる「ゆがんだ」建築物群。絵画作品でいうと、表現主義の画家シャイム・スーティンの描くうねるような街並の絵や、日本が誇る幻想画家・遠藤彰子の奇妙な建築絵画群(複数視点を組み合わせた非現実的なエッシャー風世界に大量の登場人物が配される)を想起させる。ちょっと昔の映画だと、エンキ・ビラルの『バンカー・パレス・ホテル』(89)も似たようなテイストを志向していたのではなかったか。
そもそも、主人公が部屋の真ん中に座っている冒頭のシーンからして、青みがかった色彩設定がすでに「映画」のそれではない。完全に「絵画」の手彩色的な色使いだ。
シンメトリカルな構図感や、漂うニューロティックなとげとげしさは、まさにフランシス・ベーコンの描く人物像を想起させる。ついでに、OPクレジットで散りばめられる戯画的な絵柄もベーコンっぽい。
全体を通じて、ヴィーネ&ムルナウ的ないびつなデフォルメの感覚と、青ベースの絵画的な色彩設定へのこだわりは、とことん徹底し尽くされており、これだけ画面内の美意識が「徹頭徹尾統一されている」と、それだけでもう観ていて非常に心地がよい。
『未来世紀ブラジル』にせよ、『デリカテッセン』にせよ、作品世界の美意識の統一性というのは、映画にとって本当に重要なのだ。
しかもこの「20年代のドイツ表現主義映画の背景美術を模倣する」という猛烈に手間のかかる手法が、「作品の舞台としての1920年代」との「同時代性」を根拠に、不穏で、不安定で、神経症的な時代の空気感を表現し得る最も的確な手段として、きわめて戦略的に選択されているというのが、じつに素晴らしい。
もともと、ドイツ/オーストリアのミステリ小説には、第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期を舞台とした歴史ミステリーが意外に多い(女流作家アレックス・ベールのアウグスト・エメリッヒもの/未訳 など)。敗戦による価値観のゆらぎと、爛熟期に入ったウィーン文化、アメリカの「ジャズ・エイジ」の波及(本作でも描かれている)。
敗戦にうちのめされながらも、どこか高揚感のあった戦後すぐの不思議な時代を舞台に、捜査官のバディ二人組を投入して、戦争絡みの猟奇連続殺人を捜査させる。
まさに、ドンピシャの企画だといってよいだろう。
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僕が本作を高く評価するのは、単に美術的に高いレヴェルで絵画的な感性が透徹されているというだけでなく、純粋に本格ミステリとして面白かったからだ。
まず、猟奇殺人のテイストが好みだ。
ノリとしては、『薔薇の名前』(86)とか『セブン』(95)、『クリムゾン・リバー』(00)あたりと近いゴチック・テイストの人体損壊型だが、きちんと「見立て殺人」に狂人なりの意図とロジックがあって、わかる人間には間違いなくちゃんと伝わる「メッセージ」がしっかりこめられているっていうのが実に良い。
残念ながら、そのミッシングリンクは観客には看破できるようには作られていないし、探偵役が第三者として調査したうえで、ロジカルな推理によって真相にたどり着いているのではなく、探偵役自身が思い切り当事者というのも、少しずるい気がするけど。要するに、動機となっている事件の背景について探偵はアプリオリに知っているので、犯人のメッセージが誤解なくすんなり伝わってる、ともいえるわけだ。
ちなみに、「1本残してるのではなく、残り19本のほうが重要」というのは、いかにもチェスタトンっぽい「逆説」の発想で、おおおっと思った。あと氷柱ネタを見せられると、われわれ世代はどうしても江戸川乱歩の「氷柱の美女」を思い出しちゃう(笑)。
「帰還兵による、帰還兵の連続殺人」というテーマも面白い。
戦場&収容所という、殺人がいくらでも許容される異常なロジックで支配された場から、いきなり平和な街へと帰って来ても、なかなかそんなの順応できないよね、ということで。
(僕らの世代が、帰還兵の平和を享受できない苦しみと喪失感に創作物を通じて初めて向き合ったのは、ほかならぬ新谷かおるのコミック『エリア88』でした。結局、除隊してもみんな戻ってきちゃうんだよね、血塗られた戦場にw)
また、戦地もしくは収容所での許しがたい恨みを帰還後に平和な街で晴らすという趣向は、これまでにも何冊か海外翻訳で読んだことがあるが(そもそもホームズものの第二長篇『四つの署名』からしてそういう話だ)、今回のように被害者も被疑者も動機も実行手段も、すべてが「帰還兵」しばりというのはあんまりなさそうだ。
それから、真犯人の設定がふるっている。
へえ、そう来たかという感じ。
最初、なし崩しにこんな●●●●●する人物出してきてどうするんだろう??って思ったら、なるほど、そういう趣向だったのか。
意外と今回は油断していたので、ふつうにしてやられました。
また、こうやって事件の真相がはっきりすると、今まで見えていた事件の様相が根底から一変し、バディ役の若造警部が口にするとおりの「ペルク元刑事が黙してきたとある秘密」が浮き彫りになるという、アクロバティックな技をびしっと決めていて、そのへんも感心しきり。
やるじゃない、脚本家さん。
ただ、鐘楼にあがってからの流れは、犯人がペルクにやらせたいことにイマイチ無理があるし、ペルクが出がけに警察と情報を共有するだろうことは容易に想像がつくのに、犯人がわざわざ逃げ場のない塔のてっぺんに現れたうえ、退路すら確保できていないなど、ちょっとそこは無理やりな感じがしたかも。あとこういう時はいつも思うけど、犯人はべらべらしゃべってないでさっさと撃てよ、と(笑)。
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監督のステファン・ルツォヴィツキーは、パンフのコメントで「『ヒンターラント』はトキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ=「男はこうあるべき」)をテーマにした作品です」と述べている。
すなわち、意気揚々と男性性を誇示すべく戦場へと向かった兵士が、一敗地に塗れて収容所で尊厳のすべてをはぎとられ、アルファメイルとしてのプライドをへし折られたまま帰還して、帝国の権威も国家の威信も失墜したウィーンの街で、「男はかくあるべし」という伝統的な概念を前にもがき苦しむ話、ということだ。
とはいえ、そういうガッツあふれる闘争心だとか、マウント取りに行く根性だとか、いっそないほうがいいってわけにもなかなかいかないから、難しいところだよね。
本作に登場する元刑事のペルクにしても、結局のところは「難事件をみずからの手で解決し」「最後の修羅場をなんとか生き延びた」ことで、持ち前のプライドを回復したうえで、ひりついた生きている実感を味わえて、ようやく前に進む勇気を再び持てたのであって、みずからのトキシック・マスキュリニティを克服できたわけでは全くない。
かといって、こういう「男性かくあるべし」論がこじれた結果として、京アニ事件の青葉みたいな暴発も起こり得るわけで、いちばん最適なジェンダーのバランスというものを、われわれは常に考えていかないといけないのだろう。
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徹底的に作り込んだ背景描写によって、「仮想のウィーン」(存在しない異境としてのウィーン)を舞台としたある種の幻想譚として成立しているがゆえに、この映画にはいかにも奇矯な「作り込んだキャラクター」が良く似合う。
たとえば、クセの強い元同僚のレンナー警視や、猛烈に感じの悪い貴族の元上官などは、それこそテリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』にでも出てきそうな俗悪な存在だ。
とはいえ、レンナーには一種の友情めいた感情もたしかにあって(罪滅ぼしの部分もあるのか?)、作中ほとんどろくでもないことしかしないにもかかわらず、妙に僕は気に入ってしまった。そのどうしようもない俗物性に、なんとなく愛嬌があるとでもいうのか。
それから、ヒロインのケルナー博士。可憐な美女ながら、しきりにタバコをふかしてはあたりかまわずグリグリ押し付けて火を消してみせるその姿からは、戦争で男手が減ったせいでたまさか得た法医学者の地位を保つべく、必死で背伸びして「男性と比肩する存在として」振るまおうとしている様子がひしひしと伝わってくる。
ラストまぎわで見せるペルクとの●●●のやりとりは、まさに西部劇に出てくる「●の友情の儀式」に他ならない。
一方で、田舎にひっこんで夫の帰還を待っている妻と娘は、玄関先でくつろぐ姿に「聖母子」の図像をそのまま借用することで、ある種の「聖性」をもって描かれる。
とくに奥さんは同僚と寝たことがわかっているにもかかわらず、なお「待ち続ける妻」としての威厳を神々しく放っているがゆえに、自らが穢れ、壊れてしまったと自信を喪っているペルクは、気後れしてなかなか迎えにいけない。
若造の警部パウルは、前半はやたら高圧的で感情的だが、中盤からは「バディ」としての輝きを見せる。まさに「ベテランと若手」ものでは一つの類型といっていい展開だ。あと、ミステリ要素の部分で、彼があんなに重要な役割を果たすとは正直思ってもみませんでした。ラスト近くで、殴りかかるかと思いきや●●するシーンは、個人的にたいへん眼福。
その他、やたら慇懃だが言うことは言う三つ編みの密告系家政婦とか、さまざまな形態で紹介される「薄汚い帰還兵」たち、その中でもとくに悲惨な収容所生活で心の壊れてしまった連中、『地獄に堕ちた勇者ども』にでも出てきそうなゲイの画家(彼が描いている絵はカラヴァッジョ風だが、カラヴァッジョもそっちの人だったともっぱら言われている)などなど、クセものキャラが勢ぞろいで、観ていて楽しくなってくる。
凝りに凝ったビジュアル面の挑戦を観るだけでも本作にはじゅうぶんに足を運ぶ価値があるし、ミステリドラマとしても、戦争をめぐる人間ドラマとしても、満足のいく見ごたえ。
おすすめです。
箱は?
ww1後ロシアでの2年の抑留を経て帰還した敗戦国オーストリアの元警部が、帰還兵の拷問殺人事件を追うことになる話。
帰宅してみると妻と娘は家におらずという中で、一緒に帰宅した帰還兵が殺されて、持っていたチラシへの署名からいきなりしょっぴかれて…。
画角に凝ってるし背景描写が妙にキレイだしスタイリッシュ!と一瞬思ったけれど、教育番組の何とか講座もびっくりなまさかの合成バリバリですか!?まあカネカ掛るから仕方ないよね。
内容的には悪くないサスペンスではあるんだけれど、相方のポンコツが過ぎるし、色々すっ飛ばして早送りで見ちゃったような唐突さや呆気なさがあって勿体ない感じだった。
シュラーゲムジーク
銃火を共にくぐり抜けた戦友とは何物にも代え難い絆が生まれる一方、銃後の者には戦場の現実など到底理解できない。だから同情も批判も軽々しくすべきでないのだが、解らないと不安になるから勝手な解釈(多くは否定的な)で納得しようとして余計な亀裂ができる。最後に理解者だった筈の女医が「生き残るより殺すほうが簡単」とうそぶくのは、結局分かってないのね、という象徴的台詞のようにみえる。
帰還兵への酷い扱いは国体の崩壊と深く関わっているようで、復員軍人に対する日本の態度が基本的に御苦労様だったのと対照的だが、これは天皇制の存続と関係あるのだろうか?ならばかつての米国社会のベトナム復員兵に対する態度は?と、いろんな事を考えてしまった。
観て、見てそこに悪夢が。
主人公の見る景色に乗り物酔いの気分でも実際、精神的にやられると景色は歪むんですムンクの「叫び」(失恋の記憶が~汗)物語はミステリーとして一級品、惜しくはラストで急ぎ過ぎて理解が追いつくのが大変なところ特に主人公の奥さんが持つ爆弾どこに行ったの?いつの間にか消えてるし・・・クレームはこのくらいにして、この主人公の見る景色だけでも観る価値が有りました。
全40件中、21~40件目を表示