「奥深いホラー」変な家 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
奥深いホラー
映画が始まる前のナレーションに「この映画は小説の第5章」とあり、不動産ミステリーと言っていたが、実際にはホラーだと思う。
俳優陣たちもホラー故の人選を感じる。
そこに忍ばせた石坂浩二さんの起用は、この作品にどうしても感じさせる金田一耕助の要素、つまり「謎解き」があるからだろう。
この物語は解決されない部分がいくつかあった。
しかし、登場人物たちの描き方に矛盾を感じることで、彼らの本当の人間性を表現していた。
ここが余韻でもありホラー特有の終わらない怖さを感じる。
また、
緊張感のある展開は素晴らしかったし、事件を追う3人の設定が面白い。
いまひとつ理解できなかったのは、父が事故死ではなかったことと父の本当の死因について語られなかったこと。
これについては小説では、父が左手供養の儀式のために人を殺して気が狂ったことになっている。
この物語を少し汲み取って見ると、片淵家の直系の子孫は父ではなく母だったのではないだろうか?
ここに斉藤由貴さん起用の理由があったように感じた。
つまりユズキの母は、左手供養を阻止しようとした父を殺した可能性がある。
ユズキが雨宮と栗原を連れて母の前に登場した時、彼女はホームレスのボランティアをしていた。
そして最後に姉が「もうすぐ左手供養の日ね」と呟き、母は「大丈夫、私が何とかしてあげる」と答える。
ここにホラーの真骨頂が垣間見えるが、母はホームレスを殺して左手を切り取っていたのだろう。
それに気づいたのが父だった可能性もある。
片淵家の思考というのか、強いカルト的概念が姉にも残っていることが伺える。
だから本家から逃げだす際にケイタを残す残酷さを持ち合わせていたのだろう。
高校時代にいじめられていたケイタを助けた転校生の姉アヤノ
そもそも彼女はケイタを「選んだ」のかもしれない。
その理由は「左手供養」の継続のため。
正常と異常の両面を持っているのがアヤノかもしれない。
アヤノは父の死によって、片淵家の計画が大きく変わってしまったことを母から知らされたのだろう。
左手供養が滞らないために、早く誰かと結婚してこの儀式を継続していかなければならないと母から言われたのだろうか?
この描かれない余白こそホラーの怖さ。
よくお笑い芸人の顔は怖いと言われる。
佐藤二郎さんの起用はその部分に理由があるのかもしれない。
彼の登場は最初に緊張感を削るが、彼の怖さをゆっくりと引き出していくように物語の恐ろしさが広がってゆく。
不動産 家の間取り 中古でも新築でも間取りを見ながら生活感を想像する。
このプロの視点と変な家の間取りを名探偵のように推理するのが彼の役割
探偵と旧家という構図はまさに金田一
さて、
霊媒師の言葉を忠実に実行する片淵家
「左手供養」という、10歳から13歳の間に人を殺し、その左手を仏壇に供えるという儀式
そのために育てられたトウヤ 生まれつき左手首がない 呪い
片淵家のどこかの家で生まれた。
彼の両親は物語に登場しないのは不気味さの演出だろうか?
アヤノ夫妻は彼を育てる条件として結婚を許されたものの、自分の子供として愛情をこめて育てたことが、ラストに繋がっていく。
同時に本当の息子ヒロトを実家に奪われたことで、彼ら夫婦が本家の命令に従わなければならなくなったという設定。
遺体が発見されていないケイタはどこへ行ったのだろうか?
アヤノは無事に帰ってくるのを待つと言っていた。
しかし、
片淵家本家当主の意思を継ぐものこそ「ケイタ」だったのかもしれない。
二人は薬で洗脳されたようだが、その洗脳はケイタの方がより強かったのではないだろうか?
アヤノは逃げる際にヒロトとトウヤだけを救出し、ケイタを置き去ったように見える。
伯父が猟銃でケイタと格闘後に、雨宮たちを襲う。
当然視聴者はケイタはやられたと思うが、実際に叔父は彼らが逃げた後、当主の命令ですぐに彼らを追いかけ、格闘していたように見せかけたケイタは身を隠したのかもしれない。
当主は叔父の裏切りを知り、頭を殴打して殺し、左手首を切り取った。
当主は最初から候補者を複数人選んでいたのだろう。
片淵家
ウシオの呪い
霊媒師の言葉
変な家は隔離とシェルターを兼ねていたこと。
物語は一件落着を見せるが、母と姉は次の左手供養の話をしている。
その話は聞こえない者の、二人のただならぬ表情を見て震えるユズキ
ユズキにはまだ謎は謎のままで、
父の死因
急に消息を絶ったアヤノ
そして結婚していた事実
母が見せた父の手帳には確かに気が狂ってしまったかのような落書きで満ちていた。
そして知らされた本家のこと
行方知れずの期間にアヤノに起きていた出来事は、考えられないほど異常だ。
そして本当のことを知ったことで異常者の雰囲気を感じることができるようになったのだろう。
母と姉
二人を見たユズキはそれを直感したのだろう。
そして最後の雨宮の部屋にあった隠された場所はオチなのだろう。
なかなか複雑だったが、金田一シリーズのようにすべてが解決するのではなく、表面上の出来事だけが描かれて、その背後に存在するであろう真実が「裏通路」のように隠していあるのがこの作品かもしれない。